あんたはすごい! 水本爽涼
第百九十九回
「今日は何曜日だった?」
「えっとねぇ~…。バーゲンだから土曜」
「そっか…土曜か」
やはり、みかんでも時空は十日先にあった。煮付(につけ)先輩が来社したのが火曜、私が禿山(はげやま)さんと早朝に話し、部長席で記憶をなくしたのが翌日の水曜だから、私と同じ時空なら水曜の筈であった。ママは沼澤さんが寄られるから…とメールしてきたからのだから、火曜か土曜なのだ。それを見逃していた。もちろん、沼澤さんがみかんへ寄るのは火、土曜日に限ったことではないだろう。しかし、私が知る限りのデータによれば、眠気(ねむけ)会館の教室を終えてみかんへ寄るというのが沼澤さんがとる、いつものパターンだった。ということは、ママのメールを受けたとき、水曜だから沼澤さんが寄るというのは妙だ…と、まず気づくべきだったのだ。お告げにより、私だけが十日間、過去の時空にとり残されたんだ…と知ったが、やはり、みかんも十日先の時空に存在していた。
「なに考えてるの?」
「えっ? …いやあ、なんでもないさ」
早希ちゃんがコップに水を入れてカウンターへ置いた。水を置いてくれるようになったのは嬉しかったが、消えた十日間というのが、どうも私の心に蟠(わだかま)っていた。

第百九十九回
「今日は何曜日だった?」
「えっとねぇ~…。バーゲンだから土曜」
「そっか…土曜か」
やはり、みかんでも時空は十日先にあった。煮付(につけ)先輩が来社したのが火曜、私が禿山(はげやま)さんと早朝に話し、部長席で記憶をなくしたのが翌日の水曜だから、私と同じ時空なら水曜の筈であった。ママは沼澤さんが寄られるから…とメールしてきたからのだから、火曜か土曜なのだ。それを見逃していた。もちろん、沼澤さんがみかんへ寄るのは火、土曜日に限ったことではないだろう。しかし、私が知る限りのデータによれば、眠気(ねむけ)会館の教室を終えてみかんへ寄るというのが沼澤さんがとる、いつものパターンだった。ということは、ママのメールを受けたとき、水曜だから沼澤さんが寄るというのは妙だ…と、まず気づくべきだったのだ。お告げにより、私だけが十日間、過去の時空にとり残されたんだ…と知ったが、やはり、みかんも十日先の時空に存在していた。
「なに考えてるの?」
「えっ? …いやあ、なんでもないさ」
早希ちゃんがコップに水を入れてカウンターへ置いた。水を置いてくれるようになったのは嬉しかったが、消えた十日間というのが、どうも私の心に蟠(わだかま)っていた。