水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第三章 (第十三回)

2012年01月22日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第三章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      
    
第十三回
『はい。じゃあ一端、戻って出直します。次はリストのメモを持ってきます』
「ああ、そうしてくれ。君ばかり活動させて申し訳ないが…」
『いえ、僕は幽霊ですから、その特性を大いに活用して下さって結構です』
 そう云うと、幽霊平林はニヤリと陰気な笑みを浮かべた。上山も思わず、「特性か…」と、ニヤけた。
 幽霊平林は一端、霊界へ戻り、上山が出社して時は流れた。霊界の幽霊平林は、霊界万(よろず)集で調べた独裁国家と、その首脳リストを見返していた。
『ヨーロッパでは、ベラルーシのルカシェンコ大統領、南米ではベネズエラのチャベス大統領、アフリカは、ジンバブエのムガベ大統領、スーダンのバシール大統領など、アジアでは、シリアのアサド大統領、イエメンのハーディー大統領、ミャンマーのセイン大統領、北コリアの金正恩氏など…か。北コリアは金正日総書記が死去したしなあ。いろいろ、世界はややこしい…』
 幽霊平林はブツクサと独り言を吐いていた。そして、メモ書きした霊紙(れいし)のリストと霊界万集の記載内容を突合(とつごう)した。
『まあ、間違いないようだな…。これから八時間ほどすれば、この霊紙を持って課長の家へ行けばいいんだな。どれ、それまで、ひと止まりするか』
 幽霊平林は、そう独りごちるとスゥ~っと住処(すみか)の端上へ移動した。ひと止まりとは、云うまでもなく、人間界で云うひと休みである。とはいえ、心を安息させるだけで、人間のように眠る訳ではないから、睡眠とは一線を画すのだ。むろん、止まる前に瓶に流れる霊水のセッティングは抜かりがない。この霊水の水時計システムを忘れれば、八時間待つという感覚は、さすがに把握出来ないのだ。そんなことで、幽霊平林は、安心して止まると、両眼を閉じて安息状態へ移行した。
 一方、人間界の上山は、のんびりと仕事を熟(こな)していた。そこへ突然、社長の田丸が入ってきた。田丸が自(みずか)ら業務第二課へ顔を見せるなどということは、めったになかったから、課内は緊張感に包まれたはい。じゃあ一端、戻って出直します。次はリストのメモを持ってきます』
「ああ、そうしてくれ。君ばかり活動させて申し訳ないが…」
『いえ、僕は幽霊ですから、その特性を大いに活用して下さって結構です』
 そう云うと、幽霊平林はニヤリと陰気な笑みを浮かべた。上山も思わず、「特性か…」と、ニヤけた。
 幽霊平林は一端、霊界へ戻り、上山が出社して時は流れた。霊界の幽霊平林は、霊界万(よろず)集で調べた独裁国家と、その首脳リストを見返していた。
 一方、人間界の上山は、のんびりと仕事を熟(こな)していた。そこへ突然、社長の田丸が入ってきた。田丸が自(みずか)ら業務第二課へ顔を見せるなどということは、めったになかったから、課内は緊張感に包まれた。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする