水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第三章 (第二十回)

2012年01月29日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第三章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
    
第二十回
「なんだ、君。現れていたのか…」
 上山が帰宅して玄関へ入ったとき、幽霊平林も偶然、スゥ~っと玄関を漂っていた。
『なんだ君、とは随分、ご挨拶ですね、課長』
 幽霊平林は冗談っぽく笑った。
「いや、すまん。実は滑川(なめかわ)教授に電話をしなくちゃならんのさ。まっ! 急ぎの用でもないらしいんだけどな」
『滑川教授ですか…。懐かしい名ですね』
「そうそう。しばらく私達から離れた存在の人だったからね」
『で、その教授がなんと?』
「これから教授のところへ電話するから、それを聞きゃ分かるさ」
 そう云いながら玄関を上がると、上山は着替えもせず近くの電話の受話器を手にした。
「あっ! 教授ですか。今、よろしいでしょうか?」
「おお、上山君か…。構わんよ。というか、儂(わし)から、かけようと思っとったんだよ」
「そうでしたか。それじゃ、さっそくなんですが、昼の続きです。ゴーステンでしたか?」
「なに云ってるんだ、君。マヨネーズの話だよ、中位相処理された」
「あっ! そうでしたか、すいません。マヨネーズ効果はあったんですが、他の人が消えてしまいまして…」
「えっ? どういうことかね、君」
「ですから、マヨネーズ効果は、かなりありまして、私がアチラへ近づいているようで、デンジャラスな結果でした」
「そうか…。元へ戻ればよかったのにのう」
「はあ…、まあ、そうなんですが。そうなれば、なったで、平林君と別れることになりますのでねえ」
「なんだ。だったら今のままで、いいじゃないか」
「なんか、どうでもよくなりまして。今は、正義の味方です、ははは…」
 上山は思わず、自分自身が変人に思えて笑ってしまった。


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