幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第七回
「ああ…。まあ、死んでる君が悪く云われることはないだろうし、私にしても、まさかそんな夢のような力があるとは思われないだろうからな」
『そうでしたね。そんな心配より、念じる内容を考えましょうか?』
「いや、その前に、君にひと働きしてもらおう」
『働くって、なにをするんです?』
「この辺りで君の方の霊界司さん、いや、霊界番人さんに訊ねてみちゃどうだろう」
『あっ! なるほど。元々、僕と課長に命じたのは、あの方達ですから』
「そういうことだ。ちょうど、この辺で経過報告をせにゃならんだろうし、ついでに訊(き)いてさ、さらに、そのついでに、な」
『そりゃいいアイデアです。分からなければ、専門家に訊きゃいいんですよね』
「ははは…専門家はいい! 上手い例(たと)えだ」
『いやあ~、冗談は抜きにして、そうしましょう』
幽霊平林は決まりポーズを崩して、片手でボリボリと頭を掻いた。その姿を見て、上山は様にならない幽霊姿だ…と、笑いを堪(こら)えて思った。
「それじゃさっそく、アチラへ戻って訊いてくれ」
『分かりました。それじゃ…』
「あっ! 今度は、いつ現れてくれてもいいぞ。…とはいえ、熟睡中の真夜中は困るがな」
上山は消えようとする幽霊平林を呼び止めて云った。
『はい。なるべく、ご帰宅されてからにします。霊界にいても、ある程度、こちらの時間が分かる工夫をしましたから…』
「ほう…。やはり田丸工業の元キャリア組だけのことはあるな!」
『いやあ…』
照れを隠すように幽霊平林は、はにかみながら、格好よく消え失せた。