水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第231回

2013年06月14日 00時00分00秒 | #小説

 代役アンドロイド  水本爽涼
    (第231回)
 すでに暑い夏がやってきていた。この前、メンテナンスをしたときは梅雨だったが…と、保は、ふと思った。夏休みに入れば子分の里彩を連れ、怪獣長左衛門が上陸することが予想されたが、エアカーのキャド(コンピュータ設計支援ツール)に忙殺され、保はすっかりそのことを忘れていた。さらに子分は増え、三井も加わっていることも…。
 沙耶が簡単にプログラムを組んでいく。背景の黒いPC(パソコン)スクリーン画面には白い英文字や英数字が並んでいき、保が呆気にとられているうちにエンターキーが叩かれてアスキーファイルが立ち上がった。エアカーの骨格を現す三次元の具体設計画面がCG(コンピューター・グラフィクス)でリアルに浮かび上がり保の目を釘づけにした。
『これでいいかしら…。あっ! 冷やしたミックスジュース持ってくるね…』
「ああ…。沙耶、これさ、どこで習ったんだ?」
『それ? …この前、プログラミングの本を読んでたから』
 沙耶が読めば、すべてを記憶データとして蓄積し、応用可能に出来ることを、ついうっかり保は忘れていた。沙耶と人との根本的な違いだった。
「そうだったな…」
『えっ?』
「いや、なに…。沙耶は超人だったからな」
『そう。私はアンドロイドだからね。作った保が忘れてるのも、どうかと思うけど』
「ああ、済まない。で、茨城の方はどうなんだ?」
『お蔭さまで、あと少しで私の出番は終わり。余り長居すると地元の人に怪しまれるし…』


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