代役アンドロイド 水本爽涼
(第240回)
「…確かに、よう出来てると思いますな。問題は飛ぶか、ですわな」
後藤が駄目出しした。保は、お前には言われたくない・・と、少し気分を害した。
「そりゃ、そうだが。まあ、飛ばしてみんとな…」
その後藤に但馬が返した。久しぶりに室内に笑声が溢れた。
時を同じくして、長左衛門達を乗せたタクシーは、保がいる大学前で停車した。三井は一万円札を運転手に手渡した。
「お客さん、生憎(あいにく)、細かいのを切らしちまって…」
「いいから、取っておきなさい」
「こんなにもらって、いいんですか?」
「わしがいいと言ったら、いいんだ!」
運転手に長左衛門が威厳のある声で返した。
「そうですか? じゃあ遠慮なく…」
三人がタクシーから降りると、運転手は愛想のいい笑顔で何度もお辞儀をし、車を発進させた。
「ここは来たことがあるから、ある程度は分かるぞ」
長左衛門は大学院新館を見上げ。誰に言うでもなく呟(つぶや)いた。
『私(わたくし)は一度も来ておりませんが、綿密に調べてございます。中へ入れば、向かって左側に警備室があり、矢車という老ガードマンが一人、いますね』
「おお! よう調べたのう。上出来上出来!」
「凄いわね! 三井」
『有難うございます。お二人にそう言われますと、少し面映(おもはゆ)く感じます』