水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第242回

2013年06月25日 00時00分00秒 | #小説

 代役アンドロイド  水本爽涼
    (第242回)
『すべては、私の言うとおりにして下されば、それで結構です。お任せ下さいますように』
「分かった。よきに諮(はか)らえ…」
 長左衛門は古めかしい武家言葉でそう言うと、顎鬚(あごひげ)を撫でつけた。三人? は、しばらく通路を歩き、研究室前で立ち止まった。
「では、入るぞ!」
 長左衛門は敵陣に斬り込むような凛とした声で叫ぶように言った。
「はいっ!」
 三井と里彩は釣られて返事した。長左衛門はドアを数度、ノックした。
「はい! とうぞ…。誰でしょうね?」
 但馬はそう言いながら教授の顔を窺うように見た。
「はて?」
 教授は顔を傾(かし)げた。ドアがゆっくりと開き、長左衛門が入り、後ろに里彩と三井が続いた。
「なんだ! じいちゃんか…。どうしたの? おっ! 里彩ちゃんも…」
「おお保! 元気そうで、なによりじゃ!」
「驚いたよ、急に。連絡してくれりゃいいのに」
「ああ、そうじゃのう」
『先生は所用で上京されたのです。少し時間が出来たもので、お寄りになったのですよ』
「そう言う君は誰だったかな?」
 但馬が唐突に口走った。
『私(わたくし)は、先生の書生兼秘書を務めております三井でございます』
「そうそう、そうだったね。…って、今日が初対面だったかな? まあ、どっちでも、いいけどさ」
『初対面でございます』


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