水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第232回

2013年06月15日 00時00分00秒 | #小説

 代役アンドロイド  水本爽涼
    (第232回)
「アンドロイド的行動はやってないだろうな。飽くまでも普通に、だぜ」
『それがさ、少しやり過ぎたみたい。やばそう』
「おいおい!」
 保は急に心配になりだした。放っておかれたパソコン画面は、いつの間にかスクリーンセーバーの図柄へと変化していた。
『でも、もう大丈夫。行かないから』
「あっ、そうか。なら、いいけどな…」
 保はふたたびパソコン椅子へ座りマウスを弄(いじく)った。沙耶は冷蔵庫からミックスジュースのボトルを出し、コップへ注ぐと氷を数片入れながら保のところへ急いだ。
「…有難う」
「これで教授もOKじゃない?」
「そうだな…。このキャドならご満悦だろう」
 世界では未だ開発されていないエアカー構想だった。しかも、正確な理論展開をデータ化しているのだから完璧だった。以前、不発に終わった自動補足機の比ではなく、保は、かなり手応えを感じていた。
 長左衛門はその頃、開墾されなくなった休耕地で三井の最終走行に望んでいた。新機能を付加し、これが上手くいけば、保がいる東京へ乗り込もうという腹積もりだった。
『三井よ! ここまで全力疾走せい!!』
 長左衛門の口には拡声器が、手にはストップウオッチが握られていた。
『はい、先生!』
 三井は約100mの距離を一瞬にして完走し、長左衛門の前に立った。もちろん、寸分の乱れもなかった。


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