代役アンドロイド 水本爽涼
(第232回)
「アンドロイド的行動はやってないだろうな。飽くまでも普通に、だぜ」
『それがさ、少しやり過ぎたみたい。やばそう』
「おいおい!」
保は急に心配になりだした。放っておかれたパソコン画面は、いつの間にかスクリーンセーバーの図柄へと変化していた。
『でも、もう大丈夫。行かないから』
「あっ、そうか。なら、いいけどな…」
保はふたたびパソコン椅子へ座りマウスを弄(いじく)った。沙耶は冷蔵庫からミックスジュースのボトルを出し、コップへ注ぐと氷を数片入れながら保のところへ急いだ。
「…有難う」
「これで教授もOKじゃない?」
「そうだな…。このキャドならご満悦だろう」
世界では未だ開発されていないエアカー構想だった。しかも、正確な理論展開をデータ化しているのだから完璧だった。以前、不発に終わった自動補足機の比ではなく、保は、かなり手応えを感じていた。
長左衛門はその頃、開墾されなくなった休耕地で三井の最終走行に望んでいた。新機能を付加し、これが上手くいけば、保がいる東京へ乗り込もうという腹積もりだった。
『三井よ! ここまで全力疾走せい!!』
長左衛門の口には拡声器が、手にはストップウオッチが握られていた。
『はい、先生!』
三井は約100mの距離を一瞬にして完走し、長左衛門の前に立った。もちろん、寸分の乱れもなかった。