水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第235回

2013年06月18日 00時00分00秒 | #小説

 代役アンドロイド  水本爽涼
    (第235回)
「おお…済まぬのう」
『軽い夕食をオーダーしておきましたので、間もなくボーイが参ると存じます。明朝は七時に起動し、ノックをさせて戴きます』
「ほっほっほっ…、モーニングコールが省けるわ」
「ごくろうさま…」
 三井は里彩に労を労(ねぎら)われ、ペコリと頭を下げた。そして部屋を退去しようとしたが、ふたたび長左衛門にも深く一礼して部屋を出ていった。
「堅ぐるしい奴じゃのう…」
 長左衛門は、ふたたび顎鬚を撫でつけながら小さく呟いた。
「おじいちゃま、おじちゃんのところは?」
「それよ…。今、ここまで出てきておることを保に知らせておらぬからのう。まあ、里彩も夏休みじゃて、そう焦ることもなかろう。それに、保のマンションへ出向く前に三井に話さんとのう。奴(やつ)が今度(こたび)の総責任者じゃからのう。作戦もあろうし…」
「作戦? 三井と沙耶さん…どちらも侮(あなど)れないわね」
「ほっほっほっ…、いい勝負じゃて。三井も性能を高めたからのう」
 そのときドアがノックされた。
「ルームサービスでございます」
「おお! 開いておりますぞ。お入り召されい!」
 長左衛門が古風な言い回しで了解すると、凛とした制服のホテルマンが数人、ワゴン車に乗せた料理を運び入れた。


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