『人材派遣に何か意味があるんじゃないかと…』
「いやぁ~、それはどうですかね。世間には五万とありますよ、この業種は」
戸倉には今一、それが異常事態の原因だとは思えなかった。
『いやあ、私の憶測ですから…。ただ、私の店の店員がすべてコチラへ来ている、という点が引っかかるんですよ』
「異次元からコチラへ来る、何かの共通点があなたの店にあるのかも知れないですよ」
『はあ…。それじゃ、引き続き探ってみましょう』
「そうして下さい。こちらも、それなりに調べますから。…ところで、そちらの店は繁盛してますか? うちの方はご覧のように、なかとか食い繋(つな)いでいる有様なんですが」
『はあ。私の方はまあ、なんとか。それなれに稼がせてもらってます・・。なにせ、店員に給料を月々、支払わないといけませんから、相応の収入は不可欠でして…』
「それはそうでしょう。うちとは状況が違うんですから。…あのう、お店の屋号は人材屋ですか?」
『いいえ。戸倉人材派遣店です』
「そうなんだ…。会社ではないんですね?」
『ははは…。そこはそれ、異次元ですが、あなたと私は同じ存在ですから、当然、同じ発想です。小規模経営なんですから、損勘定の入る会社組織にはしませんよ』
「ああ、その辺りは、同じなんですね」
戸倉は少しずつ異次元の状況が分かりつつあった。こちらの世界よりはワンランク上で、人も出来がよい。それはいつかこの男がこちらがB級グルメでアチラがA級もしくは超A級グルメだと例えたように、程度の違いなんだと。