里子に起こされ城水が目覚めたのは、いつもより遅かった。
「遅刻するわよ!」
やや強めに促(うなが)され、城水はベッド脇の目覚ましをチラ見した。大聖小学校までは、どう急いでも約1時間は見なければならない。いけない! と、城水の脳内を数値が駆け巡り、WARNINGの警告文字を赤く点滅させた。城水は慌(あわ)ててベッドから飛び出した。
「ゆうちゃんは、もう出たわよ…」
キッチンから里子の無愛想な声がした。城水の脳内数値は、里子の感情起伏度を20mmHg高い数値で示した。
ここはUFO内である。指令とクローン[1]が回収した地球物質の分析結果について話し合っていた。
[…回収物は多岐に渡るが、個人差はあるな]
[はい。人間の個体差と思われます]
[そこが我々とは違うようだな…]
[この個体差も各種、採取されますか? 指令]
[現在までに集積されたデータはどうなっている]
[かなりの量を示しています]
[その、かなりの量とは?]
[ムニャムニャです]
[ふむ…ムニャムニャか。まだ3分の1ほどあるな]
[はい。全地球物質の3分の1は…]
[あと10日余りですべてを回収し終え、分析結果によって私は最終判断を下さねばならない]
[はあ…]
クローン[1]は溜め息混じりの声を出した。クローン[1]にすれば、早く解放されたかったのである。