水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -94-

2015年10月29日 00時00分00秒 | #小説

━ 簡単な話だ。3年後、地球が動・植物園化されたときの運搬、移動に使われるのだ。いわば、お前達が使っているインターネットのようなものといっていい ━
[それは、最終決定がされたときの話だろうが。もし、人間の価値が見直され、計画が白紙に戻されたときはどうするのだ?]
━ ははは…そのような人間志向の心配は無用だ。何もなかったことに復帰するだけだ ━
[言うことが理解できない]
━ 理解できないのは当然だろう。お前の脳内数値が詳しい解答を導くだろう。結論だけ言えば、何も起こっていなかった時空に戻(もど)るということだ ━
[私と家族はどうなる?]
━ 世話のかかるやつだ。何も起こらなかった過去へ戻ると言っただろうが… ━
 呆(あき)れたように地球外物質は突然、緑色の光を消し、城水へのテレパシーを停止した。脳内で響くテレパシーが消えた瞬間、城水は良出を抱え、考え込んだ。何も起こらなかった過去に戻るとは? と、城水が考え始めたとき、脳内数値が動き始めた。その動きは、いつもの動きではなく、映像入りでスローだった。それは恰(あたか)も、城水に解き教えるかのようだった。
[過去に戻るのか?]
━ ああ、今までの我々に関係した出来事は、すべて消え去るのだ ━
[私はどうなる?]
━ まったく、出来が悪い奴だ。過去に戻る以上、お前はクローン化していなかった以前に戻ることになる。ただ、お前だけは今までの記憶が消去されない ━
 地球外物質は機械的な声のテレパシーで城水を窘(たしな)めた。


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