goo blog サービス終了のお知らせ 

水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -91-

2015年10月26日 00時00分00秒 | #小説

 ふと、足元に目を向けた城水は、UFO指令がマジックのように消えて以降、一歩も動いていないことに気づいた。そのときだった。急に上空から眩(まばゆ)い光がマンホールの蓋を目指して差し込み、蓋はふたたびスゥ~っと音もなく上昇し、浮かび上がったのである。そして、ふたたび指令がマンホールの下から宙に浮かび出た。
[フフフ…不測の事態は、どんなときでも起こり得るな。我々はまた、人間の予期せぬ一面を見たぞ。これは±(プラスマイナス)のどちらへも評価できる新発見である]
[そうなんです、人間には予期せぬ能力があります。それは無限の可能性でもあります]
[うむ、どうもそりようだな。だが、それは地球を破滅させる可能性でもあるのだ]
[はあ、それはまあ、そうですが…]
 気分はまだ、人間を弁護したかったが、指令に本筋を言われ、城水は引いた。
[与えた3年の猶予は、そうした人間観察期間でもある。我々は地球物質のみに拘(こだわ)り過ぎていたのだ。見落とした人間の本質は3年の猶予期間で分析され、解き明かされるはずだ]
[その結果によって…]
[お前が考えている通りだ。人間はほんの一部を除き消滅するか、あるいは今のまま生き続けるか、が定まる。では、さらばだ…]
[あっ! 指令!]
 城水がテレパシーを返したとき、すでに指令の姿は跡片もなく消え失せ、暗闇だけが城水の周りにはあった。もちろん、マンホールの蓋も元の状態で閉ざされていた。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする