城水は、ゆっくりと歩き始めた。妙なもので、クローン化して以降の城水の足は、音をたてず歩くことが出来るようになっていた。しかも、懐中電灯がなくても暗闇を昼間と同じように観ることが出来るセンサー透視機能も備わっていた。その理由は城水自身にも分からなかったが、思考方法が脳内数値により正確に判断できるようになったことを考え合わせれば得心がいった。指定された待ち合わせのマンホールが次第に近づいてきた。交番の若芽(わかめ)巡査への注意を喚起するWARNIG赤色灯は、相変わらず城水の脳内で点灯したままだった。
外気温、湿度、湧雲率、生体移動感知率・・などの数値が、城水の脳内で変わらず駆け巡り、あらゆる不測の事態に備えていた。城水は交番内を透視した。若芽巡査は、帳簿に目を通しながら、ウトウト・・と首を縦に振っている。この国は平和だな…と、城水は脳内数値とは別の感情で一瞬、思った。
マンホールのすぐ横へ城水が立ったときである。マンホールの蓋(ふた)が音もなく開き、眩(まばゆ)い光が真下から上を目ざして輝いた。そして、中からはUFO指令がエレベータを昇るようにフワァ~っと空中に浮かび上がった。指令は、ちょうど城水と同じ高さで停止した。
[待たせたようだな…]
[いえ、それほどは…]
[フフフ…、嘘を言っちゃいかん。9:00過ぎに家を出たろうが]
城水は、すべての行動は察知されているのか…と、改めてUFO群の高度な文明に驚かされた。