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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -95-

2015年10月30日 00時00分00秒 | #小説

[それは、なぜだ?]
━ お前が我々と同じ異星人だからだ ━
 理解した城水は軽く頷(うなず)いた。城水の脳内数値も正解の青文字で示した。地球外物質は、お馬鹿な城水とこれ以上話すのが嫌になったのか、緑光を消し、沈黙した。
 UFO騒ぎからひと月が経ち、何事もなかったかのように城水家の日常生活が続いていた。よく考えれば、騒ぎとはいえ、城水以外に騒ぎと感じた者は、ほとんどなく、唯一、息子の雄静(ゆうせい)と受け持ち生徒の到真(とうま)がUFOを見た程度なのである。それも、らしきモノを見た・・というのが本人達の弁で、半分方は自分自身でも信じていないのだから、城水としてはひと安心だった。地球外物質も、あれ以降、鳴りを潜(ひそ)めて光らなくなっていた。ただ、城水が着る背広の外ポケットには相変わらず入っていた。そして、城水は? といえば、クローン状態で放置されたままUFOと別れ、テレパシーが使えるのは、地球外物質だけという状態だった。
「あなた…これ何?」
 ある日曜の朝、里子が背広をクリーニングに出すというので、なにげなくクローゼットに吊(つ)られた背広を取り出して言った。城水はその声に促(うなが)され、里子を見た。里子の手には、地球外物質が握られていた。城水は一瞬、ギクリ! とした。
[いや、なに…その、なんだ。この前、拾ったただの石さ。ちょっと変わってたから、持って帰ったんだ]
 平静を装い、城水はゆったりと里子に言った。真逆に、城水の脳内数値は、里子の言葉にWARNINGの赤点滅をし始めた。


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