写真を投稿した者の名前は匿名(とくめい)で伏せられていたが、記事内容はその写真の真実性を疑わせるもので、面白おかしく書かれていたのが、城水のせめてもの救いだった。
[いったい、誰が撮ったんだ…]
城水はコラムを読み漁(あさ)った。城水の疑問はすぐ判明した。そこには遭難事故になりそうな男の体験談が書き加えられていた。その男は、城水の近くにある山に登り、帰り路を見失った。夜は更け、辺りに暗闇が覆う頃になると、さすがに男も焦(あせ)ったようだ。山の樹木や雑草を掻き分け、しゃにむに下山した。途中、その男は異様な光を放つ円盤状のUFOに遭遇したのだ。それも、あちこちに数多く散在し、編隊のように見えるUFO群を…。男は手に持つカメラのシャッターを思わず押していたのである。そして、男は、かろうじて沢づたいに下り、民家へ辿(たど)りついた。男は、現像した写真を撮影状況を書いた手紙とともに新聞社へ送った。新聞に載っていたのは、そのときの写真だった。
新聞社が、まともにその男の話を信じなかったのは、勿怪(もっけ)の幸(さいわ)いだった。コラム記事は笑い話として扱われていた。最後尾に、見事なまでのミニチュアによる偽装写真とて高く評価したい・・と科学者の意見も添えられていた。まあ、冷静に考えれば、今の世の中でUFOなど存在する訳がないと受け取るのが正常な人間思考だ…と城水の脳内数値は解答を出していた。城水の頭脳は、このことを一応、指令に伝えておく必要があるだろう…と所見を付け加えた。城水は、その所見に従うことにした。