幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第八回
墓が並ぶ墓地を歩く二人は無言である。上山は、さすがに気味悪く思え、なにかを話したいのだが、住職は寡黙(かもく)とみえて一切、語りかける気配がない。ただ、ひたすらにスタスタ雪駄の音をさせて歩くのみだった。
右に折れ、左に曲がって墓地を進む住職は、やがてピタッ! と停まった。
「ああ、ここですね…」
住職が指さした場所は、墓石と墓石の間に挟まれた空き地で、スペースとしては、一坪はあろうか…と思える広さだった。
「ほう…、かなり広いんですねえ」
「ええ、かつては無縁仏さまの小さな納骨塚・・と云えばなんなんですが、そのようなものがありましたですよ、ははは…」
笑うところではないのだが、住職は愛想笑いを浮かべて、そう云った。それが妙に上山の心を重くした。なんといっても、辺りはすでに漆黒の闇である。住職にこんな場所で愛想笑いされて、心が軽くなる訳がない。妙に不気味さが増すのである。ただ、恐怖とまでいかないのは、すぐ傍(そば)でプカリプカリと浮かんでいる幽霊平林がいるからだった。
最新の画像[もっと見る]