日本人は外国人に比べ、休日の過ごし方が下手(へた)、いや、それは少し言い過ぎだろうが、十分に謳歌(おうか)していないと言われる。誰に言われるかって? それは、もちろん外国の人々に、である。外国では休日の過ごし方が小粋(こいき)で垢(あか)抜けているのだ。それは、楽しい気分を味わうためには余り他人の目を気にしない・・という社会的に自由な風土によるもののようである。そこへいくと日本人はギシギシとした慣習的な社会常識に左右され、楽しい気分を味わえないお馬鹿さんなのかも知れない。^^
大型連休の、とある会員制・高級レストランの出口である。食事を終えた満足そうな老紳士が駐車場の車へ向かおうとしている。むろん、お抱え運転手は車中で待機中だ。そのとき、車から降り立ったもう一人の老紳士がレストランへ入ろうとした。二人は擦(す)れ違いざま、立ち止まった。
「ああ! 霜柱乳業の会長! 先月のゴルフ以来ですなっ!」
「おお! これはこれは、月進食品の会長! 奇遇ですなっ! これからお食事ですかな?」
「ええ、まあ…。この年になりますと、連休で外国ってのも億劫(おっくう)になりましてな」
「いや、それは、私(わたくし)も同様(どうよう)です。この年になり、楽しい! と思える休日の過ごし方をようやく学ばせていただきましたよ、ははは…」
「休日の楽しい過ごし方・・そういや、外国の方はお上手(じょうず)ですな」
「確かに…」
「これから、どちらへ?」
「楽しみにしております狂言を…」
「さよですか。楽しいのが何よりです。私も食事の後(あと)、歌舞伎を予約しております」
「ほう! 歌舞伎をっ! 歌舞伎もいいですなっ!」
「また、ご一緒に…」
「楽しみにしております。では…」
そう言うと軽く一礼し、霜柱乳業の会長は待たせた車へと向かった。月進食品の会長も軽く一礼し、レストランへ姿を消す。
まあ、プロセスタントな庶民には縁遠(えんどお)い、ブルジョア層の楽しい休日の過ごし方ではある。^^
完
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