幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第六十四回
「と、いうことは?」
『ええ、取り敢(あ)えずはそのまま会社に勤めて様子を見ろ、ということでしょ』
「人ごとだからな、分かりやすいご挨拶だ」
上山は苦笑した。
『仕方ありませんよ、相手が相手ですから…』
「そうだな。社長に云われているのとは訳が違うしな」
上山は幽霊平林言葉に頷(うなず)くしかなかった。
『で、僕と課長が正義の味方になれるか? ってことです』
「ああ…、問題は、それだな。正義のヒーローって、テレビや映画、舞台などで観る分にゃ格好いいが、現実はそうスンナリとはいかないからな。そこが問題だ」
『課長、その心配はありません。これがあります!』
幽霊平林は徐(おもむろ)に胸元に挟んだ如意の筆を上山に示した。
「ああ、これなあ…。この効力って凄いのか? いやあ、私は人間だから俄(にわ)かには信じられんのだが…」
『元人間の僕が云ってるんですから信じて下さいよ』
「そうだな。ポカは、やったが、元キャリア組の君が云うんだから、まったくの眉唾(まゆつば)でもあるまい」
『そりゃ、そうですよ』
幽霊平林は陰気に笑いながら胸を張った。
「まあ、とにかくやってみるか。んっ? …で、何をやるんだ?」
『そうですよね。コレッ! っていう社会悪なんか、大手を振って歩いてませんよ。そういうのって、闇に、蔓延(はびこ)るんでしょ?』
「世間じゃ、そう云うな。私なんかの小者にゃ関係ない世界だ」
『だったら、やりようがないですよね』
「ああ…、弱ったな。そこんとこが分からんと…。何か、いい手立てはないか、君」
最新の画像[もっと見る]