幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第九十四回
「問題は、君の昇華に影響が出る懸念(けねん)だ。出なきゃ、それでいいんだが…」
『僕は構いません。このままで昇華して生まれ変わるというのも、なんですし…。まあ、なるようになれ! の気分ですよ』
「ははは…、偉く呑気だな。そうか、人間界と違い、霊界に恐怖感はなかったんだった」
『ええ、そうです。それに昇華できなきゃ、課長と、このままお付き合い出来るんですから…』
「いや、まあ、それはそうだが…。私も君と別れるのは少し寂しいと思っていたところだ」
『じゃあ、やってみますか?』
「ああ、…どちらにしろ、私には出来んことだ。今、私が云った内容で念じてみちゃ、どうだ?」
『はい、そうします。では、さっそく!』
そう云うと、霊魂平林は念じ始めた。ただ、幽霊のときとは違い如意の筆を手に出来ないから、その念じ方は、ただ目を閉ざして念じるというだけのものだった。そして、霊魂平林が両瞼(まぶた)を開けた途端、霊魂の中の如意の筆がピカリッ! と光った。
「終わりました」
「そう…。結果は、いつ頃?」
『いえ、僕にも分かりません。まあ、結果がどうであれ、僕としては、もう思い残すことはありませんから、いいんですが…』
「シックリした君は、そうだろうけどさ。人間界の私を含む人々にとっちゃ、死活問題なんだからさ。そういう云い方は、ないと思うんだが…」
『すみません、つい…。すぐか迄は分かりませんが、そうは、かからないように思います』
霊魂平林は、ユラユラと霊尾(れいび)を振りながら謝った。
「いや、それはいいんだけどさあ…」
『地球語の効果…ってゆうか、成果が出始めたのは一週間後でしたから、恐らくそれくらいで…』
「と、いうことは、この先、一週間が君の身にとっても勝負ってことだな」
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