幽霊パッション 水本爽涼
第十七回
どこまで読んだかな? …と、上山は『霊視体験』のぺージを捲(めく)っていった。体験談が一問一答形式で語られていたこの辺りか…と、上山は捲るのをやめた。じっと目を凝らし、そうそう、この辺りだった…と、少し重複したが戻って読み始めた。
答 いいえ、他人には何も聞こえません。聞こえれば、これはも
うパニックになりますよ。
問 そりゃ、そうですね…。失礼しました。では、どういった時に、
その現象が現われるのでしょうか?
答 これは私に限ったことですから単に聞いて下さればいいん
ですが、その友人の好きだった曲を流すと、ヒョイ! と現わ
れます。これはもう、ほんとに唐突にです。まるでアニメで
すよ、ははは…。いや、失礼しました。笑い話ではないので
すが、事実なんです。
問 そうですか…。どうも、ありがとうございました。
その体験談は、ここで終わっていた。好きな音楽でヒョイ! か…、こんな人もいるのかと上山は思った。自分が死んだ平林を見ている以上、この本の内容は真実に違いない…と確信できた。しかし、自分の場合には、そういった規則性はない。幽霊平林は上山の前に、いつ、どこへは関係なく現われるのだ。この本の体験談だと、死んだ友人は好きな友人になんらかの未練を残していたと考えられる。それで体験者が、その曲をかけるとヒョイ! と現われる…ようだ。ところが上山の場合は、それがない。規則性はなく、幽霊平林の意志次第で、現れたり消えたりするのだから、同じとは考えられない。