幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第二十五回
「いや、そりゃそうじゃ。私が悪かった。どうも最近、気短になってな。いかん、いかん…」
滑川(なめかわ)教授は自問自答した。上山は教授の言葉に敢(あ)えて返さなかった。
「マヨネーズの成分と同じ、ってところを、もう少し詳しくお願いします。ここに平林君もいますので…」
「なに?! 死んだ平林とかいうのも、おるのか?」
「はい、少し前に現れたとこです。すぐ傍(そば)に浮いております」
「浮いておるのだな? ふーむ…、私には見えんが、ちょうど好都合だ。その平林とかにも聞いてもらってくれ」
「はい…」
『もう、聞いてますよ』
「マヨネーズが乳化製品だということは君も知っとるだろ?」
「ええ、まあ…」
『そりゃ、フツー、誰だって知ってますよ』
「油と卵とその他の物質を攪拌(かくはん)することで出来た乳化製品だ」
「その成分と舞台寺(ぶだいじ)の土骨粉の成分が同じだなんて、とても信じられません」
「そら、そうだろう。私だって俄かには信じられんかったよ。だが、どういう経緯があったかは不明だが、これは紛(まぎ)れもない事実なんだよ、上山君!」
滑川教授は切々と話した。
「あの…、すみません。平林が両腕組んで考え込んでますので、もう少し具体的にお願いします」
「ああ、幽霊の部下か…。分かった! もう少し簡単に云おう。要は、生命の原点っちゅうやつだ。分かるか?!」
「いえ、…まったく分かりません」
「だから、生と死は、云わば表裏一体ということだよ、君!」
「はあ…、なんか哲学的というか、抽象的というか、さっぱり分かりませんが…」
「まあ、分からんでもいい…。同じ細粒物質が分かった、ということだ」
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