幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第六十二回
『恐れ入ります…』
『で、何用じゃ?』
『はい、実は人間界におります私の上司のことにつきまして…』
『おお、いつぞや申しておった者のことか。その方の姿が見えるという者のことじゃな?』
『はい、左様(さよう)で…』
『その者が、いかが致した?』
『はい。その上司に訊(たず)ねてくれ、と頼まれたことがございまして…』
『ほう、何をじゃ?』
『はい。二人で正義の味方を、いえ…、世の社会悪を滅せよ、とのことでございましたが…』
『ふむ、確かにそう申したな。それが?』
『僕、いえ、私めは、よろしいのですが、上司は人間界の者でございますので、会社の勤めもあるようでして…』
『なるほど…。その者の今後の生活か?』
『はい、左様で…』
『そのようなことか。ははは…、好きにするがよかろう、と申せばよい』
『と、申しますと?』
『勤めが負担とならば、やめればよかろう。勤まるようならば、そのままでのう…』
『あのう…随分、ファジーでございますが…』
『ははは…、ファジーとのう。まあ、そんなもんじゃ、すべてが』
霊界番人は幽霊平林の言葉を一笑に付(ふ)した。
『では、上司にはそのように伝えます』
『おお、そう致せ。自分が思うままに、とのう』
『あのう…』
『なんじゃ? まだ何かあるのか?』
『この私めは、まず何をしたらよいのやら、見当もつかないのでございますが…』
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