何度も書いているが、中島敦のアンビバレント(二律背反、相反)な感情に対する表現の豊かさに、舌を巻いている。
いちばん有名なのは、高校教科書に必ず載っている『山月記』の
「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」
「この対句は、その影響力とカッコよさにおいて、日本近代文学史上屈指の名フレーズだ」って言っている人がいる。
完全に同意だ。
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もう一つ出会った。中島敦の「アンビバレント」名句。
私が毎日、ほんとうに文字通り毎日Audibleで聴いている『李陵』に、李陵が蘇武を評する形容として
崇高なる訓戒でもあり、いらだたしい悪夢でもあった
とある。
今まで何百回と聴いていて、素通りしてきたが、今朝、「あ、これ憚りながら私にもあてはまるかも」って思った。
私が毎朝早くからワーカホリックに働いているのは、後輩のアソシエイト弁護士には「崇高な訓戒」でもあり、「いらだたしい悪夢」なんですね。
別に週末はガッツリ休んでいただいていいんですが、「中山先生ほど働けません」って言って辞めていく若手弁護士がいますから、、
崇高なる訓戒は、いらだたしい悪夢にもなる。
崇高なる訓戒は、向上心のない者には、いらだたしい悪夢として映る。
(たいして参考にもなりませんが、このフレーズを取り上げた唯一のブログ)
家庭連合の「純潔」なんかも、崇高なる訓戒ですから、スケベな大半の人間には「いらだたしい悪夢」なのかもしれません。
『李陵』全文はこちら