福島第一原発事故以来、2022年までに原発廃止の目標を掲げるドイツ。2012年の発電総量に占める再生可能エネルギーの割合は23.4%と、脱原発の「優等生国」だ。
その反面、再生可能エネルギーの導入による電気代の値上がりの影響で、産業の空洞化が深刻化しつつある。
27日付英フィナンシャル・タイムズでは、ドイツでの産業空洞化の実態が紹介された。それによると、ドイツ国内の高い電気料金を理由に、製紙、化学工業、製薬系の産業の海外進出が増加しているようだ。結果としてドイツは、国内の産業競争力の維持のために、再生可能エネルギー導入のスピードを緩めるなどの政策の見直しに迫られているという。
ドイツは2000年から、再生可能エネルギーの普及のために「固定価格買取制度」を導入。政府は各電力会社に、再生可能エネルギーで発電された電力をすべて、通常より高い固定価格で買い取るように義務付けた。
だが、太陽光発電を初めとする再生可能エネルギーは、天候で発電量が大きく作用されるため、悪天候の場合に備えて、火力発電をこれまで通り稼働せねばならない。また、電力需要が少ない夜間に発電した分も固定価格買取制度の対象なので、無駄な買い取りが行われてしまう。
こうした買取制度のしわ寄せは、そのまま消費者の電気代に転嫁されるため、この制度を導入してから、電気料金の負担が増大した。導入当初は1世帯当たり、日本円にして月額100円程度であったが、再生可能エネルギーの導入が進むにつれて高額になり、2013年には1世帯当たり月額1620円、電気代の18%を占めるまでになった。
このような負担増により、特に大量の電力を使う製造業などからは、疲弊の色が見え始めている。
日本のエネルギー事情を見るに、再生可能エネルギーは原発の代替をいまだできず、早期再稼働を進める必要がある。ただ、補助的な電源としてではあるが、再生可能エネルギーの導入は今後進められていくだろう。日本はドイツからどのような “教訓"を学ぶべきか。
1つには、拙速な導入計画を立てないことだ。2月末にまとめられた基本計画の中で、日本政府は、「2013年から3年程度、再生可能エネルギーの導入を最大限加速する」としているが、拙速な目標は、買取価格などで事業者を優遇する一方、消費者の負担を増加させ、国内産業の競争力を蝕んでしまう。
もう1つは、「電力を安定供給できる」再生可能エネルギーの開発を目標とすべきだ。地熱発電のようなベース電源は有力だ。現状では、ドイツでも日本でも、投資をしやすい太陽光発電が、再生可能エネルギーの新規導入の大半を占める。しかし、電力供給は産業の要であるから、国策としては、安定供給できる電力源を追求していくべきだろう。(HS政経塾 森國英和)
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