読者諸賢、ご機嫌よう!ハウリンメガネである。
毎回毎回ギターの話ばかりで恐縮である。
「毎日毎日ギターばっかり弾いてて飽きないかね?」という方もおられようが、いうて私は「ギター馬鹿人生の本紙編集長」とは異なり会社員。毎日弾いても時間としてはたかが知れているし、ギターというのは毎日弾いた程度で飽きるほどつまらないオモチャではない(それに加えて生来物覚えも大して良くないので、毎日弾かないとすぐ覚えたことを忘れてしまうのでこうするほかないのである(なお弾いてても忘れるのは歳のせいということで誤魔化させてもらおう))。
そんな人間なのでライヴやなんやでギタリストと会うと「ついついギター談義」に花が咲くのだけど、ギタリスト、特にストラト弾きの間で時おり持ち上がるのが「センターピックアップって使う?」という話。
センターピックアップ。それはストラト弾き特有の悩み。
エレキ弾きの方ならお分かりだろうが、ストラトと並ぶ王道エレキであるテレキャスター、レスポールになく、ストラトにだけあるのがセンターピックアップなのである(なお「レスポールも3ピックアップのカスタムがあるでしょ!」とか、「テレもセンターありのモデルあるでしょ」というツッコみは話が煩雑になるのでナシでお願いしたい所存)。
先述の通り、「使う?」という問いが出てくる時点でもう分かってしまうだろうが、フロントともリアともつかない中途半端なポジションとしてセンターピックアップは邪険にされることが多い(人によってはピッキングの邪魔、といってピックガードとツライチになるまで下げられていたり。リッチー・ブラックモア御大とかイングヴェイ先生とか)。
前出の編集長も「ストラトのセンター?使うか?フロントだけありゃいいよ!俺、リアもベタなロックの音が要る時以外使わねぇもん!あぁ、その意味でもミュージックマスターはいいよねぇ。フロント一発!必要にして十分!見た目もキュート!」と、センターどころかリア不要論を唱える人なので、「いやまあ確かにそれはその通りそうなんスけど……」となんとか反論を試みようとするも、私自身ワンマイク(=ピックアップ)モデルの良さが分かるだけに否定材料がなく、いつも「う~ん、確かに……」とモヤッとしたオチで終わりがち(まあ、両論並び立つ話なので白黒つける必要もないのだけど)。
実際の話として、ワンマイクのモデル、例えばフロント一発のミュージックマスターでもトレブリーな音が出したければブリッジ近くで弾けばよいし、リア一発のレスポールjr.だってトーンを絞ってネック近くでソフトに弾けば甘い音も出る(P90の特性もあるけど)。
ワンマイクでも弾き手によって多くの音色を引き出せるのだから、レスポールやテレキャスのようにフロントとリアのツーマイクあれば十分、ストラトもフロントとリアだけあれば十分……という人がいるのも頷ける話なのである。
では本当にセンターピックアップは要らないのかと問われると私は明確にノーと答える。
何故ならセンターピックアップこそがストラトをストラト足らしめる重要なポイントだからだ。
まずストラト弾きが好んで使うハーフトーン(フロントとセンター、リアとセンターのミックス)。
これはもうセンターピックアップが無いと回路的に成立しない。ストラトのグラッシーな音を出す為に絶対に外せないのがセンターである、というのが、まず一つ。
次に……見た目!
ストラトという楽器はセンターピックアップが無いだけで途端に間抜けに見える(実際笑い事ではなく、ストラトのデザインというのはあのスリーマイクを含めて成立しているのだと常々思う。たまにセンターなしのストラトも見るが、どうにも違和感が拭えない(逆にリアなしのストラトはあまり違和感がないから不思議。あ、センターなしでもエディ・ヴァン・ヘイレンのフランケンストラトはカッコいいなぁ、リアハム一発なのに)。
そして最後。これが個人的に一番重要。
よくフロントの音は太く、リアはトレブリー、ということが言われるが、それと同時にゲイン感が異なることにお気づきだろうか。試しにエレキを持っている方、ストラトじゃなくていいので、まずリアピックアップをチョイスして、軽く歪む程度にアンプをセットして欲しい。その状態でフロントに切り替えてみると歪みが減ったように、クリーンに聴こえないだろうか。
そう、フロントとリアでは歪み方が変わるのである(これはピックアップの出力云々以前の話で、フロントの方がリアよりトレブルが減る為、人間の耳には歪みが減って聴こえるのだと思われる)。
つまり、私が思うにストラトのピックアップポジションはある種のプリセットEQ&ゲインなのである。
アンプをナチュラルクランチにしてリアをセレクトすればトレブリーなドライヴサウンド。フロントをセレクトすれば太いクリーン。そしてその中間が欲しい時に……ほら!ここがセンターの使いどころだ!
そう、中途半端なポジションと呼ばれがちなセンターマイクは中途半端だからこそ必要なのだ。
ソロを弾く時にフロントだと甘すぎるがリアほどトレブリーにしたくない、でも手元のトーンを回すよりパッと切り換えたい……そんな時、センター。シャキッとしたカッティングがしたいけどリアだとジャキジャキしすぎるし、ハーフトーンだとチャキチャキすぎる……そんな時センター。ほら!使い所がちゃんとあるのである!
だいぶ以前、最近よく読まれているというスティーヴィー・レイ・ヴォーンのライヴブート記事に書いたのと同様
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ストラト弾きはピックアップセレクトをコロコロ変える(ジミヘン然りクラプトン然りジェフ・ベック然りロリー・ギャラガー然り)。これは何故彼らがストラトをメインギターにチョイスしたのか、という根本的な問いにも通ずるが、ストラトというのはギター単独でのサウンドバリエーションが誠に幅広い。そしてそれを可能にしているのがセンターピックアップの存在なのである。
編集長のように「フロントの柔らかい音があればそれでOK!」という人は氏が愛用するミュージックマスターでいいだろうし、「リアのドライヴ感がとにかく好きなんだ!」という人はレスポールjr.を持てばいい(ただし前述の通りワンマイクでも弾き手が上手ければサウンドバリエーションはきちんとつけられる)。
だが、「柔らかい音もエッジーな音もその間の音も全部使いたい!」というワガママ欲張りギタリストにはやはりストラト!そしてセンターピックアップなのである!
いかがだろうか?編集長の言う「フロント以外不要!」という論に一応の反証ができた(できたか?)ところで今回はここまで!
また次回!お楽しみに!
<ハウリンメガネ筆>
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