「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

「Jerry'sギター」代表&編集長「MASH & ハードパンチ編集部」が贈る毎日更新の「痛快!WEB誌」

『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,7) Cliff Richard『Cliff』(1st Album)

2024-12-28 10:41:28 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

クリフ・リチャードは60年以上のキャリアを誇り、84歳の今でもバリバリ現役で活動を続けるイギリスの大御所シンガーです。そんな彼の伝説の始まりとも言える1stアルバム「Cliff」をご紹介しましょう。

無地の背景にリーゼントヘアで決めたクリフ・リチャードが写った非常にシンプルなジャケット。コレが登場した1959年というと、まだまだエルヴィスエディ・コクランと言った50年代ロックンロールの影響が強い時期!ジャケットからもそれをヒシヒシと感じますよね。先の通り1959年「クリフ・リチャード&ザ・ドリフターズ」名義でリリースされた本作。「えっドリフターズ?」と、ついつい違うグループを思い浮かべてしまう方もおられると思いますが、実はこちら、後に「シャドウズ」と改名され、クリフのバックバンドとしてはもちろん、後に単独でもヒットさせる名うてのインストバンドなのです。

前置きはコレくらいにして、さあ針を落としてみましょう!最初に聞こえてくるのは歓声。そう!この「Cliff」はデビュー作にして、いきなりのライヴレコーディング!レコード会社の力の入れようを強く感じますね!シャドウズの抑えられた演奏のイントロから若きクリフの、少々荒々しくも勢いのあるボーカルが飛び出して来ます。曲自体は、エルヴィスやリトル・リチャード、ジェリー・リー・ルイス等の定番曲のカバー曲ばかりですので、初めて聞く方でも馴染みのある曲が多く楽しめるはず。そこに、1958年にリリースされたクリフの1stシングルであり、恐らくイギリス初のオリジナル・ロックンロール・ソング「Move it」そして、シャドウズによるインストが2曲収録されており、アルバムに変化を付けています。

驚かされるのは、とにかく僕が持つこのUKオリジナル盤(マザー1、スタンパー両面1桁盤!)「音が良い!」。録音はもちろん、バンドの各楽器の音が、65年前とは思えない程クリアですぐそこで演奏している様な身近さに感じられます。特にハンク・マーヴィンのリードギターはどうでしょう!エフェクターを使わないクリーンな音の美しさはもちろん、曲の合間で飛び出すジャックナイフのような切れ味は、クリフのヴォーカルと並び、このアルバムのもう一つの主役と言っても良いでしょう!もちろんベースやドラムも一味違います。

一見、アメリカのロックンロールをそのままコピーしているのかと思いきや、ベースは時々ルート音から外れた異なるフレーズを奏でていますし、ドラムのフィルインなんて、ロックンロールと言うよりはジャズの影響を強く感じます。様々な音楽の素養が彼らの中で上手くミックスされており、アメリカのロックンロールから逸脱したサウンドに目を見張ります。図式としては、「19歳のクリフ・リチャードを支えるベテランバンド・シャドウズ」かと思いきや、改めて調べてみたらみんな同年代という事実・・・19~20歳ぐらいの当時のイギリスの若者が、ここまで完成された独自の演奏をするとは・・・・頭を抱えざるを得ない僕であります。

ちなみに本アルバムはイギリスのチャートで2位まで上昇していますし、その後も同じ名義で数枚のベスト10ヒットを放っています。ビートルズを始めとする後のデビュー組も、当時彼らの演奏を相当参考にしたことでしょう。正直なところ、クリフのヴォーカルは、19歳という若さもあり、後のような深い表現力は見られず「エルヴィスの影響を受けたちょっと歌の上手い若者」といった感じです。ライヴ・レコーディングなので、より声の細さが際立ちますが、それでも「自分の好きな音楽を思いっきり歌う」という勢いや、音楽としての純度の高さは猛烈に感じさせます。

彼のキャリアの前半は「シャドウズ」に支えられている部分が大きく、シャドウズに関してはエリック・クラプトンジョン・レノンも影響を口にしているように、イギリス初の本格的ロック・バンドとして高い評価を得ています。しかし、この盤の主役である「クリフ・リチャード」の名がロック史で語られる事はほとんどありません。それは、彼が純粋なシンガーであり、ほとんど作曲をしない事(ライヴではギターは弾きます)、後の音楽性がロックからポップス寄りになった事、アメリカで全くと言って良いほどヒット曲が出なかった事・・・などが挙げられます。

とは言え1958年に、アメリカのカバーではない純粋なイギリス人によるオリジナル・ロックンロールソング「Move it」を歌い、シャドウズと共にブリティッシュ・ビートの礎を気付いた功績はあまりにも大きい!と僕は考えます。そして「もっと評価されても良いのにな~」と、もどかしさを感じつつも「だからこそ今!」という熱い思いでいっぱいです。「さあ、今こそこのクリフ・リチャードを聴いておくんなましぃ!」

と少々取り乱した僕ですが、本紙連載では来年もクリフ特集を大いに続けさせて頂きます。実は昔から彼の事が大好きで、長いキャリアの彼だけにアルバムの数も膨大。その音楽も幅広くバラエティ豊かなのですが、まずはロックな連載だからこそ初期盤に焦点を絞り、順を追いながらレビューして行こうと思います。英国ロック創世記にはクリフがいた!皆様もこの1stアルバムからどうぞ!勿論CDも出ていますが余裕のある方は「UKオリジナル盤」をぜひ!

と言うことで、僕の原稿も今日で本年度はラストとなります!ご愛読に感謝の上、良いお年をお迎え下さいませ。そして、次回からも何卒お楽しみになさって下さい!

《Starman★アルチ筆》

ご意見・ご感想・記事投稿・編集長の執筆、演奏、講演依頼『スターマンへの演奏依頼』などは『コメント欄』か『ハードパンチ編集部』までどうぞ!
https://hardp.crayonsite.com

編集長『MASH』が経営するギター専門店『Jerry's Guitar』公式サイトはコチラ

https://jgmp.crayonsite.com/