夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

ロシアの侵略「自分は死なない高見から、ウクライナを軍事支援する西側」

2022-09-30 08:14:33 | 政治
 
 
 もし、自分も死ぬ可能性が高くとも、ロシア軍をウクライナ全土から排撃するために、戦争を継続しろと西側の人びとは言うだろうか? 
 プーチンの予備役招集命令で、ロシア人男性の国外脱出が続いている。そこには、軍事侵攻そのもののに反対だからという人もいれば、そんなことより、自分が死ぬ(または刑務所に行く)のは、とにかく嫌だ、という人もいるだろう。しかし、西側政府も主要メディアもあまり伝えたがらないが、ウクライナでは、18歳以上の男性の出国は禁止されている。勿論、ロシアとの戦争のためである。ロシア人男性は、国外に逃亡できるが、ウクライナ人男性はできないのである。そのような自由は、ウクライナ人男性にはないのである。ゼレンシキー政権の命令があれば、「お国」のために、ロシア・親ロ派連合軍との戦争に行き、かなり高い確率で死ぬのである。そこには、男女平等などという思想の入る余地はない。
 ロシア支配地域との前線でウクライナ軍が使用している多くの兵器はアメリカ製である。アメリカの最新鋭の兵器と、アメリカの世界一の軍事情報収集システムのおかげで、ウクライナ軍は、アメリカ兵器と比べれば格段に性能に劣る兵器しか持たないロシア・親ロ派連合軍を、一部とは言え、排撃できているのである。それが、この戦争が米ロの代理戦争という性格も持つ理由である。アメリカ国民は、個人的にウクライナ軍に参入している人や秘密裏に潜入しているアメリカ特殊部隊員を除き、どんなに武器を送ろうと死ぬことはない。
 もし、「アメリカ人男性も、率先してウクライナ国籍を取得し、義勇兵として戦争に行け、そうすれば、短期間でロシア軍を追い出せる」とバイデンが言ったとしたら、賛成するのだろうか? 

 朝日新聞は、「ロシア軍撤退が先」と4月に社説に書いた。3月の停戦の気運が完全に消滅した後である。確かに、正論である。ロシア軍が撤退すれば、戦争は終わるからである。しかし、ロシア軍は撤退する意思はまったくない。つまり、この「ロシア軍撤退が先」は、停戦よりも戦争を継続し、ロシア軍を排撃しろという以外は、現実的意味を持たないのである。これは、朝日新聞だけではなく、西側政府も主要メディアもすべてそう主張しているのであり、朝日新聞が特殊ということではない。しかし、日本人も数万人が死ぬ可能性があるとしたら、朝日新聞はこのような主張をするのだろうか?
 
  アメリカのバイデンは当初から、外交交渉など一切見向きもしなかった。西側政府の中では、比較的に停戦への交渉仲介の姿勢が見られたフランスのマクロンも、今はロシア排撃一本槍の流れに呑みこまれている。西側政府のやっていることは、ウクライナ軍事支援とロシアへの制裁だけである。特にアメリカは、物価は高騰しているものの、兵器、石油・ガス、穀物輸出で利益をあげ、戦争継続を全面的に後押ししている。西側の主要メディアも、それを支持するオピニオンとアメリカ政府発の情報記事で溢れている。
 
戦争は自分が死なない限り楽しめる
 人は、戦争映画を楽しむ。あるいは、バーチャル戦争ゲームで戦闘気分を楽しむ。映画を観ているだけ、バーチャルゲームに参加だけでは、絶対に死ぬことはない。だから、楽しめるのである。それと同様な高見から、ウクライナでの戦争を、ああすべき、こうすべき、と言っている。それが、西側政府と主要メディアが戦争を眺めている基本的な立ち位置になっているのは間違いない。
 
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終わらない戦争「人命より『正義』と西側政府は鼓舞するが、人びとの厭戦気分は増大する」

2022-08-12 07:40:34 | 政治
 
ロシア軍に攻撃された学校跡 ドネツク州クラマトルスク  BBC
 
 8月12日の朝日新聞に、早稲田大学教授の豊中郁子が「ウクライナ 戦争と人権」という寄稿文を載せている。豊中は「犠牲を問わぬ地上戦 国際秩序のため容認 正義はそこにあるのか」という副題で、ウクライナでの現実の地上戦での人々の犠牲を心の底から嘆いている。
 豊中はこの中で、ヨーロッパのシンクタンク、欧州外交評議会が 行ったヨーロッパ諸国10か国のウクライナの戦争に関する、極めて興味深い世論調査を引用している。
 それは、6月15日に公表されたもので、日本のメディアではNHKが報じている。NHKによれば、ロシア・ウクライナ戦争に関し、
「和平派」=「できるだけ早期に戦闘を停止し交渉を始めるべきで、戦争終了のためにはウクライナ側が多少の譲歩をするのもやむを得ない」と
「正義派」=「ロシアに侵略の代償を払わせ、ウクライナは国土を取り戻すべきで、戦闘の長期化や負傷者の増加もやむを得ない」
に分け、どちらに近いかを調査したものである。

 これで分かることは、ヨーロッパ10か国全体の世論は、「和平派」が35%と「正義派」22%を上回っていることであり、多くの国民は、「早期に戦闘を停止し交渉を始めるべき」だ望んでいることである。「正義派」が「和平派」を上回るのは、指導者レフ・ヴァウェンサ(ワレサ)で知られる「連帯」によって、旧ソ連体制に激しく抵抗し、ロシア嫌いが徹底しているポーランドだけである。

 人命より「正義」の西側政府
 ここで重要なのは、「正義派」は、上記の豊中の言葉を借りれば「犠牲を問わぬ地上戦」を「国際秩序のため容認」するというものであり、ゼレンスキーの徹底抗戦を支援し、大量の武器供給を行っている西側政府の方針を表していることである。その武器供給量は、その国の以前からのロシアとの抗争の大きさに比例し、アメリカが最大であり、その次が英国である。そしてそれは、少なくともヨーロッパ諸国においては、世論とは完全に異なっているということである。
 侵略者を撃退するために侵略された側に大量の武器を供給し、ウクライナを助けるのは、道義的に正しく、「正義」である。しかし、現実には、ロシア軍をウクライナ領土から完全に放逐するためには、ウクライナ人の膨大な数の人命(同様に膨大なロシア兵の人命も)が失われることになる。西側政府と主要メディアは、ウクライナ軍と米英軍事当局の「大本営発表」を鵜呑みにして流すが、その情報が真実だとしても、戦闘は一進一退を繰り返しており、ロシア軍がウクライナ領土から撤退する気配はまったくない。それを撃退するまで戦うとは、犠牲者は無限に増え続けるだけである。
 
「正義派」とリベラルの結びつき
 日本で、和田春樹などのロシア・東欧研究者が、「即時停戦の呼びかけ」を提唱した時に、それがロシア寄りとして「ロシアの撤退が先」という反発が一斉に上がった。その声は、概ね、右派からではなく、いわゆるリベラル派からである。リベラル派とは、厳密な定義などないが、重視する立場(自由は往々にして平等と対立する概念であるので、その対立がある時に、平等を優先するのが左派である。例を挙げれば、大資本、大金持ちの自由を規制し、平等なシステムを作れ、と左派は言う。)と言っていい。香港の北京政府による言論弾圧を非難するのも、このリベラルの立場からである。「ロシアの撤退が先」というのは、とりもなおさず、ロシアの侵攻が自由、民主主義、人権を破壊している、という思いからだと思われるが、「ロシアの撤退が先」とは、「撤退しないロシアを撃退すべきで、安易に停戦すべきではない」という論理になり、当然、ウクライナへの軍事支援強化を生む出す。
 この「正義派」とリベラルの結びつきは、日本だけではない。概ねリベラルな中道右派と中道左派のヨーロッパ各国政府が、反ロシアで一致しているのに対し、ハンガリーの反リベラルのオルバン右派政権が、対ロシアには融和的であるのは、その象徴的なものと言える。アメリカでも、常に武力行使を厭わないタカ派色の濃い共和党はもとより、バイデンの民主党主流派も停戦など眼中になく、ウクライナへの強力な武器供給を推し進めている。
 そしてこの「正義派」と結びつくリベラルな論理が、各国の軍事力増強を容認することに繋がっている。ロシア撃退のためのウクライナへの軍事支援は、それだけに止まらない。ウクライナへの軍事支援をしながら、自国の軍事力を強化しないことは、矛盾するからである。リベラルな国際秩序を破壊するロシアや中国の「悪い国」から自国の平和を守るための軍事力強化に反対できないのである。戦争に反対だと言いながらも、「悪い国」からの自国に対する侵略を抑止するための軍事力強化を黙認せざるを得ないのである。
 
 このリベラルと結びついた「正義派」の論理は、西側主要メディアの論調を支配している。それがNATOの強化、日本では米軍と一体化した軍事力のさらなる拡大を後押ししているのである。日本のメディアもこの論理で貫かれており、核軍縮は進めるべきとしながらも、通常兵器の軍拡はやむを得ないものとみなしている。
 実際、ウクライナへの軍事支援強化への対応は左派内部でも意見が割れており、ドイツSPDや英国労働党のように、中道左派は強化容認、元労働党首のジェルミー・コービンのような明白な左派は反対と、対応は様々となっている。

 終わらない戦争に、一般庶民の厭戦気分は増大する
 西側の経済制裁は、ロシアの侵略を辞めさせる効果は、今のところまったくない。確かに、ロシア国民を困窮させる効果はあるが、それが却ってロシア国民の対西側への憎悪を生み、結束させるという逆効果になっている。むしろ制裁は、それをしている側の生活困窮の方が大きくなっているのである。ヨーロッパ諸国の、燃料費を始め、著しい物価上昇は、庶民階層を激しく痛めつけている。上記の世論調査は、それを反映している。
 リベラルなどの思想的基盤が強くない一般庶民にとっては、終わらない戦争による自分たちの生活困窮や、現実にウクライナ・ロシア双方の多くの人びとの死の方が身近に感じられるからである。それが、世論調査に反映しているのである。そしてこの「できるだけ早期に戦闘を停止し交渉を始めるべきで、戦争終了のためにはウクライナ側が多少の譲歩をするのもやむを得ない」という厭戦気分は、ますます増大していくだろう。
 いずれにして、侵攻が始まって半年になる終わらない戦争への西側各国政府の対応は、増大する庶民の厭戦気分を無視できないものとなる。生活が困窮する傍ら、ウクライナへの軍事支援には、莫大な税金が投入されていることなども批判されるだろう。戦争さえ収まれば、それも済むのである。ロシア軍を撃退するまで戦争は継続すべき、という西側政府の方針は、遅くない時期に、方針転換を迫られるのは間違いない。
 
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「戦争狂の殺人鬼と化したプーチン(5) 世界大戦へのシナリオ 人類滅亡?」

2022-03-14 11:15:05 | 政治
 

 ロシアが侵略を開始してから3週間近くになる。戦況は、ロシア軍がじわじわと東部の都市を占領し、首都キエフに迫っているが、その進撃は極めて遅い。それに関しては、多くの軍事専門家が指摘するように、ウクライナ軍の抵抗がロシア軍の想定以上であり、ロシア軍自体の補給不足と士気の低下が考えられるが、いずれにしても、プーチンに侵攻を辞める意図は見えず、このまま戦線は拡大していくものと思われる。
 これに対してアメリカのバイデン政権は、NATO軍のウクライナ領土への投入を控え、ウクライナ政府が要求している飛行禁止区域の設定まで拒否している。勿論、これはロシア軍との直接的衝突を回避しているからであり、それが世界大戦につながりかねないからである。
 3月11日、ワシントンポストは、
<We can do more to help Ukraine without provoking World War III>(第3次大戦を引き起こさずに、ウクライナをもっと助けることができる)という専門家の意見を取り入れた記事を載せている。この記事の主旨は、「プーチンと彼の顧問には、軍事的に優れたNATOとの戦争はしないという独自の理由がある」として、 ロシア軍もまた、NATO軍との直接衝突は避けるはずであり、そのリスクぎりぎりの線で、もっと多くの軍事支援ができるというものである。具体的には、ロシアと協議の上、民間人避難を安全にするためだけの飛行禁止区域を設定することや戦闘機の提供も考慮すべきだという。
 恐らくこれは、バイデン政権の政策検討を反映していると思われる。そこには、経済制裁だけでは、プーチンが方針を変えそうもないという事情がある。プーチンにとっては、ある程度の経済制裁は想定内であり、人びとの生活を犠牲にしてまでも、野望を遂げたいという願望が勝っているように見えるからだ。
 今後アメリカは、さまざまな軍事支援オプションを、ロシア側の出方を伺いながら試すだろう。それは、ロシア軍とNATO の衝突回避を念頭に置きながらも、戦況が長引けば長引くほど、ウクライナ側の被害が増えることから、ロシア軍を攻撃すべきという世論の圧力は強まり、衝突リスクが高いものへと順次移っていかざるを得ない。
 既に、ロシアはNATO のウクライナ軍支援に使われているウクライナ西部の軍事基地へミサイル攻撃を始めた。そこに、(いないことになっている)アメリカ軍関係者がいれば、被害が及びかねない。その時は、さらなるウクライナに直接軍事介入すべきという世論やアメリカ軍内の強硬派も勢いづく。
「軍事的に優れたNATOとの戦争はしない」というロシア側の意思も、小規模衝突ならやむを得ないと変わるかもしれない。これはアメリカ側も同じである。
 ロシア軍は、ポーランド国境沿いの軍事支援基地を攻撃し、それはウクライナ領かポーランド領かはっきりしない地域(双方が都合のいいように解釈するので)にも及ぶ。そこから戦闘がエスカレートすれば、それは第3次大戦の引きがねとなるだろう。
 ウクライナを助けろ、という世論が、軍事支援に突き進めば、必然的に第3次大戦のリスクは増大する。それがどこまで理解されているか、極めて疑問だ。
 
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ウクライナ侵略(invasion) 「戦争狂の殺人鬼と化したプーチン」

2022-02-26 11:23:49 | 政治

ロシアによる侵攻を伝える英BBC


 2月24日早朝、プーチンは軍事作戦を命令し、ウクライナに軍事侵攻を始めた。まさに、状況は、ロシアが作り出したウクライナ危機からウクライナ本格的侵略(full-scale invasion)に変化した。
 このプーチンの選択は、西側の予想したシナリオの中でも最悪なものだったのは間違いない。西側は経済制裁をかざすことで、本格的軍事侵攻というシナリオを何とか回避できるのではないか、という読みがあったからだ。それは、バイデンがプーチンが侵攻を準備していると言いながらも、ウクライナに大規模な軍事支援を行わなかったし、ドイツのショルツやフランスのマクロンが直前まで、プーチンとの首脳会談に臨んでいたことでも明らかだ。本格的軍事侵攻は、ロシアの経済に重大な苦境をひき起こし、NATOはプーチンの要求とは真逆に、結束を固め、ロシアとその同盟国を今以上に完全包囲する体制をつくる。合理的な判断からは、ロシアにとって利益にならないことを選択するとは想像していなかったに違いない。それは、常に冷静なショルツが侵攻直後に激怒したという報道でも分かる。ショルツもマクロンも、西側メディアが報道するように、プーチンが以前から侵攻を決断しているのにもかかわらず、交渉の余地があるという素振りを見せたのは演技に過ぎなかったとは、想像していなかったのだ。結果的にこの二人は完全にメンツを潰されたのだが、それを想像していれば、決して会談には臨まなかっただろう。

 世界は今以上に軍拡の時代に入る
 このロシアの動きに最も重要なのは、交渉や経済制裁では、侵略行為を思い止まらせることができなかったということだ。この見方は、ほとんどすべてのメディアが伝えている。しかし、それ以外に何があるかと言えば、強大な軍事力を保持し、すぐに反撃するという意思を見せつけるという「抑止」という選択以外にはない。ウクライナで言えば、NATO非加盟で、ロシアから見れば脆弱な軍事力しか持たないことが、プーチンの侵攻を決断させた、ということになる。
 プーチンはロシアが核大国であることを脅しに使い、NATOがロシア軍と交戦すれば、核戦争にも繋がりかねないから、西側は直接攻撃して来ることはないと読んでいる。その読みどおりに、バイデンは早々とウクライナに直接米軍を派遣することはないと言ってきたし、NATOとしても、加盟国の軍備は増強に急いでいるが、直接ロシア軍と交戦することはしようとしない。また、ロシア側も決してNATO軍と交戦しない戦術をとっている。
 このことは、危機を迎える前に、西側は軍事同盟国を拡大し、強大な軍事力を敵対する相手側に見せつけることで、侵略を思い止まらせるという論理を加速させる。強大な軍事力を持った同盟国側には、敵対する相手は攻撃できないという論理である。要するに、世界は今以上に軍拡の時代に入るのである。

 日本には、改憲の追い風となる
 改憲の最大の目的は9条を含めた平和憲法の改変にある。いつでも戦争ができる「普通の国」にすることである。その改憲に、今回のロシアの侵略は追い風になるのは明らかだ。
「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して」とは、日本国憲法の前文だが、ロシア・中国は「平和を愛する諸国民」ではない、というのは説得力を持つことになる。いつ侵略してくるかも分からないから、それ以前に、侵略を思い止まらせる強大な軍事力を持つべきだ、という論理が正論としてまかり通るだろう。改憲勢力である自公維に、風の流れに乗ろうとする国民民主党も加われば、改憲はぐっと早まったと言うしかない。
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感染爆発「肝心なことはやらない岸田政権の本性がばれ、支持率も低下し始めた」

2022-01-28 09:02:02 | 政治

 1月30日、日経新聞とテレ東の最新の世論調査が発表された。それによると、岸田政権の内閣支持率は59%で、前回12月と比べて6ポイント下落したという。また、「優先的に処理してほしい政策 」で「新型コロナウイルス対策」 が49%と前回から11ポイントも上がり、その岸田政権の対応についても、6ポイント低下したという。その要因がCOVID-19の爆発的感染拡大であることは、誰の目にも明らかである。
 これ以前の世論調査では、1月10日の時事通信が6.8ポイント増の51.7%、1月16日の読売新聞が4ポイント増の66%とそれぞれ発表されていたので、直近になって、内閣支持率が下落し始めたことを表している。それは、ここに来てようやく、岸田政権の一見、やってるふりで、肝心なことはやらないコロナ対策が国民の目に分かるように表れ始めたことを意味している。

 安倍・菅政権は、「後手後手」と言われたようにコロナ対策の失敗で支持率低下をまねき、最期は自滅した。岸田政権は、その失敗を繰り返さないようにと、首相自身が「スピード感を政策の実行へ向けていきたい」( 11日4日)と言い、「早め早めに対応」しているという印象を与えるのに懸命だった。しかし、実際には何をやったかと言えば、何もしていないのである。
 岸田首相は1月10日、コロナ対策の目玉政策として病床を3割増やすと胸を張ったが、実現したのはたかだか数パーセント増だけである。厚労省の「新型コロナ対策病床数推移」で、例えば東京都では、首相就任時の10月6日の6,651床が、2022年1月26日は6,919床、268床4.0%増えただけである。大阪府でも3,421床が3,753床、332床9.7%の増加で、とても3割増などには遥かに届いていない。新型コロナ対策病床数推移(厚労省)そもそも、コロナ病床数を増やすといっても、他の患者用の病床を転用しただけで、病症の絶対数が増えたわけではない。他の重篤な患者を断らざるを得なくなるのも当然のことで、医療体制自体は改善されないままなのは分かり切ったことである。
 感染爆発で、1月31日現在、東京都の病床使用率は50%間近にまで迫り、他の病症患者への悪影響などもあり、医療体制の逼迫は最悪な状況へと向かっている。
 国民は感染が疑われても、自宅療養という自主隔離が主になり、病院に行くことさえもできない。病気になっても患者が医療にアクセスできない状況に陥っているのである。これは、公的医療体制のひとつである保健所の人員・個所数を縮小してきた自公政権の政策が根本原因なのだが、それを岸田政権は踏襲してきた。保健所を縮小すれば、ただでさえ業務が逼迫する保健所は、国民と病院との連絡・橋渡しができなくなるのは、目に見えている。
 日本のPCRも抗原も検査数は、欧米、韓国の数十分の1にしか過ぎないが、その検査を軽視する政府の姿勢が、検査キットの不足という形で噴出する始末である。中国では、数日間に一つの都市で1000万回分、国全体では億単位の公的PCR検査を実施できているが、日本政府は1月25日に460万回分の抗原検査キットを確保したという程度で、確保数が2桁少ないのである。
 そして何よりも不手際は、ワクチン3回目接種を8か月経過後などと、言い出したことだ。その後、接種の経過後期間を短縮したが、各自治体に通知した「8か月経過後」が各自治体の整備不足をまねき、全OECD加盟国の中でも断トツの3回目接種の遅れを生じさせている。岸田政権は、ワクチン調達が順調に進んでいないので、そのことを隠し、科学的根拠ゼロの「8か月経過後」と無責任極まりないことを言っただけである。
 
岸田政権の「スピード感をもって対応してきた」は、錯覚
  国民が、何かやったような印象を受けたのは、9月頃からの急激な感染減少によって、政府がうまくやっているからだろうという錯覚に陥っただけである。すべての国で感染は上昇下降を繰り返すことで分かるように、政府が何もしなくても、下降局面に入っていただけである。それを政府の努力のせいのような宣伝に錯覚を起こしたのだ。また、前首相の菅義偉に比べれば、各段に話がうまいので、国民は本当にやってくれるだろうと幻想を抱いただけなのである。
 先に発生した欧米からは少しずれて、当然のように感染爆発は起きた。これは、専門家だけでなく、多くの人にとって予見可能なことだった。それを岸田首相は、肝心なことは「検討する」と言うだけで、実際にはやらずに4か月が経過した。それが、ここに来て、「実際には何もしない」という本性がばれ始めてきたのである。
 
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