夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

カネの亡者対戦争亡者 トランプ対ゼレンスキー

2025-02-22 12:14:01 | 社会


 これは直接的には、トランプが「2022年のロシアの侵攻はウクライナのせいだ」という発言から始まったものだが、それ以前の、米・ロによる和平交渉がウクライナ抜きで行われたように、ウクライナの頭越しで交渉が行われることへのゼレンスキーの焦燥と怒りが表面化したものである。
 
 勿論、「戦争を終わらせる」と豪語するトランプが、ウクライナ国民の生命と生活を重視する平和主義者というわけではない。「戦争を終わらせる」のは、アメリカが莫大なカネを使ってウクライナを支援しても一文の得にもなりそうもない、というカネの亡者の発想からである。

 トランプがゼレンスキーに腹を立てているのは、上記の「提案」をゼレンスキーが拒否したからだ。その怒りから、相手を攻撃するためには、どんな嘘も平気でつく。それがトランプ流のレトリックであり、「ロシアの侵攻はウクライナのせいだ」も「ゼレンスキーの支持率は4%」もレトリックであり、トランプ自身がそのことを信じているかどうかも疑わしいので、発言の真偽を確かめる必要性はない。

 片や、ゼレンスキーは、国民が何人死のうと何が何でもロシアをやっつけてやるという戦争亡者と化している。ウクライナ国内では、逃げ惑う男性を徴兵担当局員が無理やり引き連れる様子が西側メディアでも報じられている。それは、恐らく、ロシアの侵攻直後にあった和平交渉を蹴り、徹底抗戦に転じたことを間違いだったと認めたくないからだろう。ウクライナはその後の3年間で、さらに領土を失い、とてつもないほど人的物的被害を被っているからである。
 しかし、ゼレンスキーが戦争亡者と化したのは、好き好んでそうなったわけではない。ゼレンスキーが「徹底抗戦」を決意したのも、欧米の支援が約束され、「勝利の見込み」が感じられたからである。また、その時の和平交渉時に、(恐らくは、和平を潰すために、敢えてこの時期に報道された。)ロシア軍による「ブチャの大虐殺」が大々的に報道され、西側全体とウクライナ国民の怒りが燃え上がったことにもよる。
 勿論、相手側のプーチンも最悪の戦争亡者と言うべきだろう。2022年以前のウクライナにおいて、キーウの親ロシア派政権は「マンダイン革命」で壊滅し、ウクライナのロシア語話者は、アゾフ連隊で名高いウクライナ民族主義勢力に弾圧された。ウクライナには、NATO加盟も動きがあった。しかし、それはウクライナ軍事侵攻の正当化には、微塵もならない。あくまでも、本格的な戦争開始を命令したのはプーチンである。この戦争亡者は、かえってNATOの脅威を増大させ、ロシア国民を死に追いやり、困窮化させる選択をしたのである。
 
欧米の戦争亡者たち
 この戦争の長期化は、戦争亡者は何が何でも軍事力でロシアをやっつろという欧米首脳が、軍事支援を約束し、ゼレンスキーを焚き付けた結果である。
その意味では、プーチンだけでなく、欧米政府もそれを支える主要メディアも戦争亡者と化しているのである。
 この戦争亡者の特徴は、自分たちを100%正当化し、対立する側を徹底的に最悪なものと決めつける、即ち悪魔化することで、戦争への道を突っ走ることにある。それによれば、プーチンは、ロシア帝国の拡大を目指しているので、ウクライナ侵攻で、ウクライナの壊滅をたくらみ、それだけでは終わらず、いずれヨーロッパ全体に軍事進攻を仕掛けてくる、ということになっている。だから、欧米はウクライナに最強の軍事支援が必要で、ヨーロッパも軍事費はGDP5%を目指した軍事強化をしなければならない、ということである。そこには、極めて薄い根拠しかない。そもそも、ロシアのウクライナ軍事侵攻は、数万から15万人程度の兵力で行われた。他の戦争では、湾岸戦争連合軍65万、イラク戦争アメリカ軍26万であり、この二つとも、イラクの軍事占領を目指してはいない。それより少なくとも兵力では、イラクより大きな軍事力を持つウクライナを占領できる兵力には、遥かに不足していることが分かる。第二次世界大戦のポーランド占領に投入されたドイツ軍は150万である。そのことから、プーチンはウクライナ占領など意図しておらず、単にキーフの政権を親ロシア派に変えるためだった考えるのが妥当である。要するに、デタラメな側近の情報から、ウクライナ国民の多数は、ネオナチ派の民族主義政権に圧迫されているので、ロシア軍と呼応しネオナチ派を倒してくれると、愚かにも思い込んだのである。

 振り返れば、プーチンの帝国拡大の意図など、2022年侵攻以前には、ほとんど叫ばれたことはなかった。それが、侵攻以後、それ以前に西側メディアで度々報道されたウクライナ国内の紛争も、「アゾフなどの危険な民族主義者」もは消し去られ、問題が2022年に何の脈絡もなく始まったかのように、「悪魔のプーチン」の大合唱に変わったのである。
 和平交渉を模索する意見は、すぐさま「プーチンの手先」と非難される。
ロシアの2022年の10月、ウクライナの戦争終結へ向けた協議を行うよう促すアメリカ民主党内左派による動きがあったが、それもロシアを利するという非難に合い、簡単に封じられた。
 
 ロシアはヨーロッパ全体に侵攻してくるに違いないという主張は、ベトナム戦争にも使われた一種のドミノ理論である。民主主義国が、ベトナムで共産主義者に負ければ、共産主義者はさらに侵略を進め、やがてはアメリカまで攻め込んでくるというものである。ここにも、対立する相手の悪魔化があるが、それが馬鹿げていたことは、歴史が証明している。
 
 確かに、プーチンはICC国際刑事裁判所から逮捕状が出ている国際法違反の犯罪者である。その意味では、軍事侵攻に反対しウクライナ支援を行うことは道徳的規範を重視したものである。それが、極右よりも、リベラル中道派に軍事支援強硬派が多い理由である。しかしこの道徳的規範の重視は、イスラエルにはまったく用いられない。逆にイスラエルに抵抗するパレスチナ武装勢力を悪魔化することで、イスラエルのジェノサイドをも正当化し、イスラエルへの軍事支援をやめようとしない。そこには、イスラエル政府は欧米の仲間であり、それと対立するパレスチナは、「悪」と見做す欧米の本性がある。

戦争亡者はいずれ敗北する
 日本も同様だが、いつの間にか、マスメディアでは、軍事militaryという言葉は、すべて防衛defenseに置き換わった。軍事費は防衛費に、軍需産業は防衛産業と呼ばれるようになった。核兵器も、国防省や防衛省と呼ばれる省庁で管理されていることで分かるとおり、「防衛」には核兵器すら含まれる。既にに軍艦、戦艦は護衛艦となったが、その内、戦闘機は防衛機、戦車は防衛車両と呼ばれるのかもしれない。「軍艦マーチ」も「防衛マーチ」と名前が変わるのかもしれない。ここには、戦争亡者による戦争の正当化への国民への刷り込みがあるのだが、誰も気づこうとはしない。
 
 しかしそれでも、戦争亡者の政権が長続きすることはない。アメリカでは、戦争亡者のバイデンからカネの亡者のトランプに変わった。ヨーロッパでも遅かれ早かれ、戦争亡者の政権は姿を消すだろう。軍事費の著しい伸長は、国民を疲弊させ、社会を混乱に陥れるからだ。アメリカ同様に、自分たちファーストのカネの亡者の極右に、政権はとって替わるだろう。勿論、その時は、国民生活の疲弊が治まるどころか、ますます困窮するばかりなのは目に見えている。
 
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トランプのウクライナ和平でヨーロッパは瓦解する

2025-02-18 11:39:04 | 社会


 トランプ政権によるウクライナ・ロシアの和平交渉が進んでいる。2月18日(日本時間19日)にもサウジアラビアでアメリカ・ロシアの高官協議が開催されると報道されている。
 このトランプのやり方に、ヨーロッパ諸国は「ウクライナへの裏切り」だと非難した。また、事実上相手にされていないウクライナのゼレンスキーは、「欧州軍」を作って、自分たちを助けてくれとヨーロッパ諸国に懇願している。
 
 トランプの和平交渉は、実現には紆余教説が予想される。ゼレンスキーもヨーロッパ諸国も、現段階での和平は、ロシア占領地域の永続化になり、さらにプーチンの侵略行為がここで終わるとは考えていないので、原則的には和平に反対しているからである。

 しかし、ウクライナは、欧米の軍事支援なしでは、戦争を継続できないので、戦争を継続するかどうかの決定権は、実際にはゼレンスキーにはない。いくら徹底抗戦を叫んでも、ウクライナ単独では、軍事経済体制をひいたロシアには太刀打ちできない。また、アメリカなしのNATO諸国がいくら軍事支援を継続すると大声を出したところで、今のヨーロッパ諸国の軍事物資生産能力では、抜けたアメリカの軍事支援を補う不可能である。ヨーロッパ諸国は、政治的にも経済的にも、現実の大規模戦争を想定した軍需生産体制にはなっていないのである。それを考えれば、紆余曲折があったとしても、ウクライナもヨーロッパ諸国も、ロシア有利とみられている和平案に渋々、従わざるを得ないだろう。

ヨーロッパ諸国の結束
 しかし、和平交渉の行方がどうであれ、もうこれ以上、ウクライナ支援にアメリカのカネは使いたくないというトランプの「アメリカファースト」が変わることはない。トランプ政権は、ヨーロッパ諸国はこれ以上、アメリカの安全保障に頼るべきでなく、自分たちの防衛は自分たちのカネで賄えと言っている。アメリカは、GDPの3.4%の軍事費を使い、ヨーロッパ諸国を防衛してきたが、ヨーロッパ諸国の軍事費はGDP2%弱であり、アメリカだけが多額の軍事費を使うのは不公平だということである。トランプ政権は、ヨーロッパ諸国は軍事費をGDPの5%と大幅に増加させるべきだと主張している。
 
 この状況で、フランスのマクロン大統領は、2月17日、ヨーロッパ諸国首脳をパリに集め、緊急会談協議を実施した。そこには、フランス、ドイツ、ポーランド、イタリア、スペイン、デンマーク、英国、NATOとEU委員会およびEU理事会の首脳が集合した。そこで、EUのフォン・デア・ライエン委員長は、欧州の安全保障は「転換点にある。確かにこれはウクライナの問題だが、我々の問題でもある。我々は緊急性を重視し、防衛力の増強が必要だ。そして今、その両方が必要なのだ」 と述べた。今後、ヨーロッパの安全保障にはアメリカを頼れないので、自分たちで守るしかない、ということである。
 そして、ウクライナ和平が達成された後には、ウクライナの安全保障をヨーロッパ諸国が担うという主張が、度々報道されるようになった。ゼレンスキーの「欧州軍」の懇願も、それを踏まえたものである。そこでは、ウクライナにNATOとしてでなく、ヨーロッパ各国が平和維持軍として、軍を駐留させる案が浮上している。ロシアは、ウクライナのNATO加盟を断固拒否するが、それは、アメリカの巨大な軍事力を恐れているのであり、ヨーロッパの軍事力程度なら、駐留を容認する可能性があるからである。

ヨーロッパの瓦解 
 いずれにしても、ヨーロッパ諸国は軍事費を大幅に増額せざるを得ない状況に陥っているのである。上記の協議でも、各国は軍事費の増額を確認した。例えば、ヨーロッパで最大の経済大国であり、ウクライナへの支援で、アメリカに次ぐ規模の軍事支援を行っているドイツは、2024年にようやく軍事費GDP2%超えを達成した。それでも、トランプの5%要求には遥かに遠く、NATOのルッテ事務総長も、大幅に増額する必要性を強調している。 
 ドイツの場合は、左派党Die Linkeとそこから分派したザーネンクネヒト同盟BSW以外の、極右のドイツのための選択肢AfDも含め、主要政党は増額に賛成している。しかし、軍事費の大幅な増額は、別の問題を引き起こす。財政規律の破綻もしくは、社会保障費の大幅な減額である。
 ドイツの社会保障給付費は、GDP比で26.2%だが、アメリカは19.1%に過ぎない(厚生労働省2001年度)。要するに、軍事大国のアメリカと異なり、ドイツは軍事費が少ない代わりに、社会保障費が多いのである。勿論、これはヨーロッパが全体的に社会福祉を重視した政策をとってきたせいであり、アメリカと比較すれば、ほとんどのヨーロッパ諸国はこの傾向にある。
 財政に最も多く占める社会保障費を減額せずに、 軍事費を増額するには、国債の増額等による、政府債務つまり借金を増やすしか方法はない。しかし、それでは財政規律は破綻し、国債の信用低下による暴落、ひいてはリーマンショックのような民間金融システムの破綻を引き起こしかねない。社会保障費を減額すれば、ただでさえ、ヨーロッパ諸国は、ドイツに代表されるように景気低迷下にあり、移民問題に加え、物価高騰、失業率の増加で国民生活は窮乏しているのであり、社会の混乱は必至とならざるを得ない。
 恐らくは、軍事費の増額は至上命令であり、各国は国債のいくらかの増額と小幅な社会保障費の減額でやり過ごそうとするだろう。その場合でも、国民生活は圧迫される。ヨーロッパ諸国の極右政党は、ドイツのAfDのように、支持率を上昇させている。そこに、さらなる国民生活の窮乏化が進めば、現在の政権党である中道右派・左派は、極右政党に政権を譲り渡すことになるのは明らかである。アメリカでは、極右のトランプ政権が二度目に入った。ヨーロッパでも、極右政権が続々と誕生する可能性が大きい。国民生活の混乱に加え、治安は悪化し、政治的には、極右、リベラル中道派、急進左派の間の闘争は激しさをますだろう。
 
 文化人類学者のエマニュエル・トッドは「西洋の没落」で、ヨーロッパの衰退を指摘している。ドイツマックスプランク研究所の経済社会学者のヴォルフガング・シュトレークは、「時間稼ぎの資本主義」や「資本主義はどう終わるのか」で、欧米が主導する民主的資本主義の矛盾は「先送り」されているだけで、何ら解決しておらず、いつの日か「資本主義は終わる」と言う。ことのほか、その日は、近いのかもしれない。少なくとも、民主的資本主義を標榜するヨーロッパでは。

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与話情特朗普石破浮名戯言(よわなさけ とらんぷいしば うきなのざれごと)

2025-02-09 09:57:05 | 社会


とらんぷ 「その方が、日本国のいしばと申すか?」
いしば  「さようでございます」
とらんぷ 「苦しゅうない。面を上げい」
いしば  「大統領閣下におかれましては、ご機嫌麗しう、恐悦至極に存じま    
     する」
とらんぷ 「その方は、昨年末、余に目通りを申し立てておったが、してその                       
     用件は?」
いしば  「有り体に申せば、日本国への関税引き上げをご容赦願い奉りま 
     す」
とらんぷ 「そのようなことか。して、その方、がタリフマン(貿易男)と    
     呼ばれておることを、知っておろうの?」                         
いしば  「御意、存じております」
とらんぷ 「そうか、ではディールの見返りは何じゃ?」
いしば  「まず初めに、日本国より米帝国に1兆両の商い金を使わせていた 
     だきます。さすれば、米帝国の商いもますます栄え、大統領閣下の  
     ご威信も、天下に響き渡るかと存じます」
とらんぷ 「おお、そうか」
いしば  「トランプ様のご威信は、そこにありますお写真で一目瞭然。閣下 
     は不埒者の銃撃も物ともしない毅然としたお姿を拝見すると、神
     のご加護があり、故に神に選ばれしとご確信遊ばされたのも道理か
     と思いまする」
とらんぷ「その方にも、それが分かるか。愛い奴じゃ、もそっと近う寄れ」
いしば 「それからでござりまするが、日本国の隣には、シナと北チョソンと 
    いう国がご ざいまして、両国とも米帝国の威光に盾突く甚だしく悪 
    辣な国でございます。さらには、その後ろには、オロシャとかいう、 
    隣国のウ国に攻め込む国が控えております」
とらんぷ「そうじゃ、そうじゃ。オロシャという国、せっかくウ国が帝国の
    手下となったのに、それに理不尽にも腹を立て、攻め込みおったの
    だ」
いしば 「左様でございます。さすれば、我が日本国も、国の守護、延いては 
    帝国の守護を固めるため、帝国と力を合わせ、武器弾薬を大幅に増
    量し、起こるべく戦に備える所存でございます。そして、いつかは、
    シナ、北チョソンなど、成敗してくれようと思っております」
とらんぷ「そうか、それは良い考えじゃ」
いしば 「日本国といたしましては、総商い額の割合で2分のカネを費やし、帝
    国からできる限りの武器弾薬を調達いたしたいと存じます」
とらんぷ 「何、2分では足りんだろう。3分に引き上げよ」
いしば 「ははあ、そのように致します」
とらんぷ「その方は、物分かりが良いのう。それに比べて、西のオイロパと
    いう国々は、余の言動に重箱の隅を突つくように、文句を並べ立て 
    おる。けしからんこと、この上ない」
いしば 「我が日本国は、永遠に米帝国に忠誠を誓っております」
とらんぷ「おう、そうか。それは心強い。そなたは、良き男じゃのう。余は
    気持ちが良いぞ。おう、そう言えば、その方の国に、良き男がもう
    一人、しんぞうとかいう男がおったが、元気でおるか?
いしば 「しんぞうにつきましては、不届き者の毒牙に……」
とらんぷ「おう、そうであった、そうであった。そのようなこと、余も聞き
     及んでおる。痛ましい限りじゃ」
いしば 「痛み入ります」
とらんぷ 「よし、ここで良いことを教えよう。世の中には、お上に盾突く不
     逞な輩がうようよしておる。その不逞な輩どもが度々使うのが、電 
     子瓦版じゃ。そこで、電子瓦版を味方に付ければよいのじゃ。帝
     国では、電子瓦版を商いよる者たちは、皆、千両万両の貢金を持 
     ち、余に平伏しておる。皆、余の味方じゃ」
いしば 「羨ましい限りでござります」
とらんぷ「帝国の内外には、まだまだ、帝国の政道に難癖をつけ、帝国の繁
     栄を邪魔しようとする者たちが沢山おる。その者たちをひっ捕ら  
     え、悉く首を刎ねなけれならぬ。そのためには、その方の国の助 
     けがいる。その方の忠心、余の心に染み入るぞ。きょうは晴ればれ
     とした気分じゃ。日本晴れじゃ、いや、アメリカ晴れじゃあ。わっ
     はっはあ……」

 
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分かりやすい悪党トランプ

2025-02-08 13:30:46 | 社会


 トランプは、1月20日に2期目の大統領を就任して以来、やりたい放題の政策を乱発している。その政策は、バイデンの分かりづらい悪行と比べ、トランプの悪行の数々は実に分かりやすい。

 トランプの悪行を挙げれば、枚挙にいとまがないが、それは、メキシコ・カナダに高関税で脅したことで明らかなように、高率の追加関税で世界中を脅し、意のままにすることから始まり、グリーンランドやパナマ運河の領有権を主張したのは、あたかも、世界はアメリカの所有物とでもするかのような振舞いである。
 トランプはSNSで、カナダを「51番目の州」と表現し、ジャスティン・ トルドーを首相ではなく「知事」と呼んだ。それには、当のトルドーは、トランプが「カナダ併合し、膨大な資源を欲しがっている」と警戒を呼び掛けた。
 さらには、地球温暖化を否定し、パリ協定離脱、WHO脱退等、国連中止で勧められた人類の危機対策をすべて破壊しようとしている。
 
 アメリカ国内でも、多様性尊重政策のDEIを否定し、性別は男と女以外はないと、現に存在している性的マイノリティの存在を否定するなど、人権軽視は甚だしい。性的マイノリティは存在してはならない、と言うに等しい方針は、彼らに与える精神的苦痛は計り知れない。

 その中でも、何といっても世界を驚かせたのは、アメリカによる「ガザの所有」である。ガザからパレスチナ人を消滅させることを目的にし、「イスラエルの邪魔者を皆殺しにして、生き残った者は、追い出してしまえ」と言っているに等しい。これには、国連アントニオ・グテーレス事務総長は、即座にethnic cleansing民族浄化という言葉を用いて非難した。民族浄化とは、特定の民族集団が武力を用いて他の民族集団を虐殺・迫害・追放して排除 することだが、まさにイスラエルが実行し、トランプのアメリカがそれを支援するということである。
 それは勿論、イスラエルとパレスチナの2国家共存を否定しているが、永久に平和の芽を摘み取るばかりか、その周辺地域にも、とてつもない混乱を巻き起こすものだからだ。 ガーディアンは、「最悪の悪夢」として、エジプトとヨルダンの受け止め方を報じているが、周辺国は猛反対しているので、実現の見込みはない。
 さらには、民族浄化を進めるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフに逮捕状を出したICC国際刑事裁判所を制裁対象とする大統領令に署名した。これにも、一部の極右指導者を除き、ヨーロッパ諸国首脳を始め、世界中から非難の嵐が巻き起こっている。

アメリカに追随する日本政府は、世界の極右指導者並み
 世界中の首脳が批判するトランプの言動を日本政府は、一切の批判を封印している。「ガザの所有」にも、林芳正官房長官は「発言の真意は分かりかねる」と曖昧に語るだけでである。このことは、 トランプを崇拝する一部の極右指導者の立場に近く、他の政府とは際立った違いを見せている。
 2月6日、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、トランプに習いWHO脱退を表明した。ミレイは、トランプを崇拝する極右・新自由主義信奉者として名高いが、ネタニヤフも含め、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル、イタリアのジョルジャ・メローニ など続々とトランプに秋波を送っている。これらの政治指導者側に日本政府は立っていると批判されても、何ら抗弁できないだろう。
 
 2月7日、ネタニヤフの次に首脳会談を行った石破茂は、「神様から選ばれたとトランプ大統領は確信したに違いない」と銃撃写真で発言するなどトランプに忖度、称賛を繰り返した。共同声明では、中国を名指しで非難し、「日米関係の新たな黄金時代を追求する」と、かねてからの米日の一体化を確認したに過ぎない。
 脅しの手段の関税につては、「米財政赤字の縮小に寄与する」「相互関税 」を発表する計画とし、先送りされただけで、何ら解決してはいない。
 要するに、中国敵視を掲げ、米日安保体制を称賛し、さらなる軍事同盟の強化を約束しただけなのである。
 結局石破茂は、アメリカの「黄金時代」に日本は貢献します、と頭を下げにいっただけである。

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パレスチナ支援の「ハーグ・グループ」の設立 欧米に都合が悪いニュースの一つ

2025-02-04 13:52:40 | 社会


ハーグ・グループ
 グローバル・サウスの代表9ヶ国が、1月31日、パレスチナ人を守るため、オランダのハーグで、グループを設立した。その名もハーグ・グループである。その目的は、国際司法裁判所(ICJ)と国際刑事裁判所(ICC)の判決を擁護し支持する ことである。
 それらの国は、ベリーズ、ボリビア、コロンビア、キューバ、ホンジュラス、マレーシア、ナミビア、セネガル及び南アフリカで、アフリカ4か国、中・南米4か国、アジア1か国からなる。かねてから、欧米に異を唱えてきたアフリカや中・南米の国々に加え、全方位外交を主軸とするASEANの中で、成長著しいマレーシアが加わったことの意義は大きい。
 
 ハーグ・グループの共同声明は「国際連合憲章に定められた目的及び原則、並びに国際連合憲章が全ての人々に保障する自己決定権を含む不可侵の権利を擁護する全ての国の責任に基づき、イスラエル、占領国によるガザ及びパレスチナ占領地の残りの地域におけるパレスチナ人に対する大量虐殺行為により失われた生命、生計、コミュニティ及び文化遺産を深く悲しみ、このような国際犯罪を前にして受動的であり続けることを拒否し、イスラエルによるパレスチナ国家の占領を終わらせる義務を遵守することを決意し、パレスチナの独立国家パレスチナの権利を含む、パレスチナ人民の奪うことのできない自己決定権の実現を支持する」としている。
 
 言うまでもなく、この9ヶ国は、西側の二重基準を批判したもので、西側にとって「都合の悪い」ものに属する。したがって、ほとんどの西側メディアは、これが設立されたこと自体をニュースにせず、例外的に報じたのは英紙ガーディアンぐらいである。

崩壊寸前の国際秩序
 第二次世界大戦後、戦勝国である欧米とソ連は、国連を軸とした国際秩序を形成してきた。国際法の概念も、欧米で作られたと言ってもいい。国連本部がアメリカのニューヨークにあり、スイスのジュネーブに国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの多くの国連機関が置かれているのも、それを明らかにしている。
 しかし、パレスチナ問題に関する限り、その後の欧米の国連と国際法への無視・違反は目に余る。
 アントニオ・グテーレス国連事務総長は、パレスチナ人民連帯国際デー(11月29日)にメッセージを寄せ、「国際司法裁判所と総会で確認されたように、パレスチナ領域の違法な占領に終止符を打つこと。そして、国際法と関連する国連決議に沿って、イスラエルとパレスチナが平和と安全の内に共存し、エルサレムを両国家の首都とする2国家共存による解決に向けた不可逆的な前進」を、加盟各国に求めた。 
 ネタニヤフのイスラエル政府は、2国家共存を拒否し、パレスチナ人へのジェノサイドを続け、この地でのパレスチナ人を退去させ、イスラエル国家のみの繁栄を目指している。 グレーテスは、上記のメッセージで、「1年余りが経過する中でガザは廃墟と化し、4万3,000人を超えるパレスチナ人が死亡したと伝えられ、その大半が女性や子どもたちです。そして人道危機が日増しに悪化しています。これは恐ろしいことであり、許しがたいことです。一方で、東エルサレムを含むヨルダン川西岸被占領地区では、イスラエルによる軍事作戦、入植地の拡大、立ち退き、建物破壊、入植者による暴力や併合の脅しが、さらなる苦痛と不公正をもたらしている。」と述べている
 
 この国際法も国連決議も無視し続けるイスラエルを、欧米諸国の政府、多くの主要マスメディア、一部の左派(フランス「不服従のフランス」、ドイツ左派党、英国元労働党党首ジェルミー・コービンを中心とした労働党を除名された左派、アメリカ民主党左派・民主社会党など)を除いた極右から中道左派勢力のすべてが無条件に擁護しているのである。欧米政府は、イスラエルの蛮行を黙認するどころか、軍事支援によって虐殺に使用される兵器を未だに供与し続けているのである。
 イスラエル政府を批判すれば、反ユダヤ主義と非難される。現に、欧米では若者、左派系労組を中心に大規模な親パレスチナデモがたびたび行われるが、それらは禁止され、警察権力によって弾圧される。ホロコーストを行ったドイツでは、イスラエル政府によるジェノサイドは見てみないふりをし、それはフランスでも英国でも同様で、、かつてのユダヤ人への迫害から、イスラエル政府が何をしようとイスラエル政府への批判はタブーであり、一切封印されている。アメリカにいたっては、バイデン政権ですら、イスラエル擁護を基本としていたが、共和党のトランプ政権は、国連パレスチナ救援機関UNRWAへの資金を停止し、  アメリカ議会下院は9日、国際刑事裁判所 ICCに制裁を科す法案を可決した(1月30日に、民主党左派が多い上院で否決)ほどである。

 多くの欧米人にとっては、極右勢力を除き、移民への人権は、最大限重視されるが、パレスチナ人の人権は、まったくないに等しい。

 このような状況の中で、9ヶ国は国連中心の国際秩序の維持を訴えたのである。それは、ソ連なきロシアや資本主義システムを導入した中国が極めて恣意的な国際法の運用を行う状況で、国連中心の国際秩序を築き上げてきた欧米自らが、その秩序を破壊しようとしているからである。

 愚かにも、アメリカ追随の外交方針しか持たない自公政権の首相の石破茂が、イスラエルのネタニヤフの次にトランプと首脳会談を行い、その会談を自慢げに発表する姿は、あたかも尻尾を振って小躍りする犬のようである。日本がアジアの一員としての認識が少しでもあれば、マレーシア政府のように行動すべきであるのは、当然の論理なのだが。

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