夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

トランプは北朝鮮の先制攻撃を待っている?

2017-08-15 17:05:16 | 政治

 米朝間の威嚇合戦が凄まじいものになっている。トランプは「北朝鮮はこれ以上、米国を脅さない方がいい。世界が見たこともない炎と激怒で対抗する」と言い、北朝鮮は、「あのような理性を欠く男との平静な対話は不可能。彼に対しては決定的な武力しか通用しない」と答え,8月9日には「グアム島周辺にミサイルによる包囲射撃」の計画を発表した。その後トランプは「「北朝鮮が浅はかな行動をとるなら、(米国の)軍事解決に向けた準備は完全に整っている」と発言し、14日にキム・ジョンウンは「愚かな米国の行動をもう少し見守る」と言ったと、複数のメディアは伝えている。

 こうした米朝の非難合戦に、国連のグレテス事務総長は「深く懸念し」「緊張を緩和し外交に戻るあらゆる方策を歓迎する」と述べているが、安倍政権は緊張緩和どころか、PAC3を配備したり、北朝鮮のミサイル発射に対応する「準備」に事欠かず、いつでも攻めて来いと言わんばかりである。また、日本のマスメディアは、あたかも北朝鮮がやみくもにミサイルを発射してくるかのような報道を繰り返しており、特にテレビ各局は、ミサイルの日本への直接的影響という観点だけでしか、報道しない。北朝鮮のミサイルが日米韓の領土に着弾すれば、あるいは着弾することが確定的になれば、極めて当然に、予防を含めた報復攻撃により、戦争が始まるのは目に見えているにもかかわらず、そのことには触れるのはごく稀である。

 しかし、海外メディアを見ると、様子が異なる。刻々と進む米朝の非難合戦を報道しながらも、例えば、BBCは8.10電子版で「ほとんどの専門家は、北朝鮮が自殺行為に等しい先制攻撃を米国に仕掛けるとは思っていない」と記し、ロイターは8.4電子版でAndry Abrahamian豪マコーリー大学名誉フェローの「北朝鮮は実際に戦争を引き起こさないよう、非常にうまく計算して挑発行動を行っている。指導部はこれまでも、衝突が起これば間違いなく体制が崩壊することを重々承知していた」というインタビュー記事を載せている。つまり、北朝鮮が実際に、米本土や米軍が駐留する地域をミサイル攻撃すれば、米軍は直ちに応戦し、次のミサイル発射と韓国攻撃を予防するため、北朝鮮全土を攻撃する。何故北朝鮮全土かと言えば、北朝鮮のミサイルと韓国攻撃用ロケットは移動式であり、一定の地域に固まっているわけではないので、可能性のある場所はすべて破壊しなけれなならないからだ。当然平壌も、労働党指導部も含まれるので、キム・ジョンウンもその取り巻きも殺される。要するに、北朝鮮という国家自体が存続できないということである。それだけの軍事力をアメリカが有していることを、北朝鮮は百も承知しているという。それ故、先制攻撃などの愚かなことはしないだろうというのが専門家の意見だ、と海外メディアは書いているのである。だから、アメリカCIA長官のポンペオは8.14にFOXニュースで「核戦争が迫っていると皆が口にするのを耳にしているが、きょうの時点でわれわれがそのような状況に置かれていることを示す情報はない」と発言したのである。また、北朝鮮が「グアム島周辺の包囲射撃」と言いながら、「もう少し見守る」というのは、上記の「戦争を引き起こさないよう、非常にうまく計算して」いるという発言に符号しているのである。

 だがしかし、専門家も危険な状況にあることは指摘している。「現在の緊迫した状況では、解釈を誤れば偶発的な戦争につながるおそれがある。米シンクタンク、軍備管理協会(ACA)のダリル・キンボール氏はBBCに対して、『北朝鮮で停電が起こり、それを彼らが先制攻撃の一部と考えるかもしれない。また、米国が非武装地帯(DMZ)で間違いを犯すかもしれない』と話した」(BBC前出)というように、相互に相手の真意を誤解すれば、戦争は勃発するのである。例えば、北朝鮮が、ミサイルをグアム島周辺の公海上に着弾させれば、グアム島そのものを狙ったものではないので、アメリカは静観するだろうと考え、「包囲射撃」を実行する。これを、アメリカ側は北朝鮮のミサイルの精度を疑い(ミサイル発射角度から着弾地点の推定ができるのだが、わずかにグアム島に近いと推定されれば)、グアム島に着弾する恐れがあると判断する。その時はアメリカは迎撃態勢に入るだろう。そうなれば、北朝鮮は反撃に出る可能性が高い。日本のテレビに登場する「専門家」は、「アメリカが自国民を韓国から避難させる動きに出ていないから、心配はない」などと、思考停止した発言をしているが、「自国民を韓国から避難させる動き」とは、戦争準備行動であり、そんなことをすれば北朝鮮は直ちに反応し、攻撃に移ることが濃厚なので、それはできないのである。

 こういった局面を打開するためには、アメリカが前提条件なしで北朝鮮と直接交渉する以外にはないのだが、それもできないだろう。北朝鮮の目的はアメリカとの交渉なのだが、そこには「有利な条件で」というのが必ず付いている。この「有利な条件」とは、核放棄を約束しないということをも含む。だから、アメリカはそれを飲めないのだ。また、北朝鮮が最も問題にしている米韓軍事演習を多少なりとも規模を縮小すれば、打開の道が開かれる可能性はあるが、アメリカの軍事行動は他国からの影響を受けてはならないという軍事ドクトリンがあるので、それもできないのである。

 このニッチモサッチモいかない状況を解決する方法はあるのか? 以下は悪夢である。

 トランプは、いかなる犠牲もすべて北朝鮮の責任にすればよいと考える。アメリカは大規模な軍事力で北朝鮮を徹底的に追い詰め、先に北朝鮮側から攻撃を開始させる。これは、2008年のロシアとグルジアが南オセチアをめぐり交戦したことを想像すればいい。ロシア軍は大規模な軍隊を国境付近に配置し、グルジア側の恐怖心を煽る。耐えきれなきなったグルジアは先に攻撃を開始する。そして、待ってましたとばかりにロシアはグルジア軍を撃破する。先制したのはグルジア側であり、ロシアは反撃したに過ぎないという正当性が成り立つ。これと同様に、北朝鮮のその後の攻撃を絶つために、全土を攻撃し、キム政権を壊滅する。その後の北朝鮮地域には、中国の意図を考慮し、米軍は駐留させず、軍事的中立地域であることを保証する。それで、問題は解決する。アメリカは先制されたから、正当に反撃したのであり、韓国数十万人、アメリカ人数万人、北朝鮮市民数百万人、その他日本人も含め、数万人が犠牲になったが、これらすべてはキム・ジョンウン政権と北朝鮮のミサイル計画阻止に消極的だった中国、ロシアにある。このアメリカの犠牲はベトナム戦争に比べれば、遥かに小さい。放置すれば、北朝鮮の核攻撃に常に怯え続けなければならない。トランプは、歴代の大統領が成しえなかった北朝鮮の脅威を永久に消し去った大統領として、歴史に残るだろう。

 トランプが過激な発言をすると、ティラーソン国務長官がやや緩和した発言をするということを繰り返している。しかし、誰にもトランプの頭の中は分からない。まさか、このようなことはないとは思うが……。

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自衛隊の「日報」は、安倍政権の下では誰が防衛相でも「隠蔽」せざるを得ない。

2017-08-02 16:09:22 | 政治

 マスメディアは、稲田防衛相が自衛隊の「日報隠蔽」問題で引責辞任したと伝えている。あたかもこの問題の本質が、稲田防衛相の資質にあるかのような報道ぶりである。では、稲田明美以外の人物が防衛相であったら、隠蔽はなかったのだろうか? そもそも、「日報」の何を隠蔽したかったのか?

 日本の国連平和維持活動PKOへの参加には、基本方針で5原則があり、第1に、「紛争当事者の間で停戦合意が成立していること」がある。「停戦合意が成立」していれば、戦闘行為などあり得ないはずである。しかし、南スーダンのジュバでは、そういう状態ではなかったのだ。政府軍と反政府勢力との戦闘が日常的に繰り返されていたのである。安倍政権によって派遣された自衛権は、それを素直に「日報」に「戦闘」の文字を記したのである。PKO参加5原則に従えば、派遣してはならい地域だったのだ。そのひとつの証拠が「日報」なのである。つまり、安倍政権にとって、「日報」には「不都合な真実」が記載されているのであり、「憲法9条上の問題」になるから、「戦闘行為ではない」という稲田明美の迷国会答弁を生んだのである。

 安倍政権がこの間違いを認めない限り、「日報」はあってはならない、隠蔽せざるを得ないものなのである。「自民党国防会議で、『そもそも日報を公開すべきでなかった』との意見が出席議員から続出した」(朝日新聞2017.8.1)のは、安倍政権側の正直な意見だと言える。

 石破茂元防衛相は講演で「国民や自衛隊員に申し訳ないという気持ちを持たなければならない」(北海道新聞電子版2017.8.1)と語ったという。しかし、石破元防衛相といえども、現在の安倍政権の下での防衛相なら、「日報」を隠蔽せざるを得ないだろう.その中に「戦闘」という言葉がある限り、安倍政権の防衛相としては、稲田明美のように、黒を白と言う国会答弁しかできないからだ。誰が防衛相でも、「日報」はあっては困るものなのである。

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