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夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

コロナ危機「ワーケーションは、労働者の自由時間への雇用主からの浸食である」

2020-07-29 18:15:00 | 政治
 7月27日、菅官房長官は政府の「観光戦略実行推進会議」で「休暇を楽しみながらテレワークで働く『ワーケーション』の普及に取り組む」(NHK)などと言い出し、29日の記者会見で「国内観光を楽しんでもらう環境作りが重要だ」と強調した。つまり、観光業界が疲弊しているので、「ワーケーション」で利益を上げるよう政府が支援するということである。
 1.ワーケーションとは
 work とvacationを組み合わせた造語であるワーケーションは、2000年頃からアメリカで始まったものである。その背景には、アメリカは先進国で唯一、法律での有給休暇の規定がなく、有給取得率も日本よりも低く、先進国中最低の(エクスペディアジャパン「有給休暇の国際比較調査」)の国という事情がある。そこで、仕事もやるのだから休暇の申請もしやすくなるだろうという制度が導入されたのだ。確かに、仕事もするのだから、雇用する側はどうぞ、ということになる。当然、旅費も労働者の自腹である。手っ取り早く言えば、本来、有給休暇は自由なはずなのに、わざわざ仕事もついでにやります、ということである。そこに、いくらかの賃金は支払われるが、自由な時間と旅行の楽しい気分は犠牲にせざるを得ない。
 日本でもJALが導入しているが、JALは旅行代理店も兼ねる航空会社であり、ワーケーションは旅行を促す一種の広告宣伝であり、一般企業とは異なる極めて特殊な企業なので、参考にすることはできない。
 2.「つながらない権利」
 フランスでは、2016年労働法典の改正があり、従業員50人以上の企業に「個人や家族の生活を守り、休息や休暇の時間を尊重するために、つながらない権利を労働者が完全に行使する方法及びデジタルツールの利用を規制する企業による措置」を話し合うことが義務づけられた(三田評論Online)。近年、労働者の勤務時間外に、デジタルツールでの会社とのやりとりが増えたためである。そこで、労働者の自由な時間に仕事を持ち込むことを禁止するという動きが現れたのである。この動きはヨーロッパを中心に、イタリアでも同様の法整備がされるなど、世界的にも広がりつつある。
 3.ワーケーションは、労働者の自由時間への雇用主からの浸食
 休暇中に賃金がまるまる支払わられ、かつ旅費も労働者の負担でなければ、それは労働時間である。だから、仕事をやれというのは問題はない。しかし、そうでなければ、休暇中は勤務時間外であり、労働者の自由な時間である。休暇中は上記の「個人や家族の生活を守り、休息や休暇の時間」なのである。そこに仕事を強要されないのは、労働者の根本的に正当な権利である。そのために、多くの国で「つながらない権利」が労働者に保障されつつあるのである。
 つまり、菅官房長官は、世界の動きに真っ向から逆行することを提唱しているのである。
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コロナ危機『「夜の街」の従事者は下級国民か?』

2020-07-28 18:39:50 | 政治
 警察が自治体職員を伴い、「夜の街」飲食店の立入調査をすることが横行している。政府も、西村康稔経済再生相が27日の全国知事会とのテレビ会議で「あらゆる法令を駆使して(感染防止の)取り組みを進めていければと思う」と、風営法や食品衛生法 などを根拠に「夜の街」の飲食店に対し、「感染予防の徹底を促す」方針を表明した。
 本来、風営法も食品衛生法もCovid-19とは無関係で、それぞれの法の趣旨は別なものである。日本共産党の小池晃書記局長 が「風営法上はコロナ対策実施の有無を取り締まる権限はない。警察が威嚇をして休業させるという、まるで犯罪者扱いするようなやり方は許されない」と批判 したが、日本共産党ならずとも、趣旨とは異なる法を根拠にした権力行使によって威圧することが批判されるのは当然のことだ。
 「あらゆる法令を駆使して(感染予防に)取り組む」と言うと、さも政府は感染の拡大予防に努めているふうに聞こえるが、実態は逆である。むしろ政府は、「Go To」などによって、全国に感染の拡大リスクを高めているのである。単に、「夜の街」をスケープゴートにして、「対策を一生懸命やってる感」を宣伝し、政府に降り注ぐ批判の目を逸らすためである。
 確かに、外国でも酒を主に提供する店には最も厳しい制限措置がとられている例はある。しかし、それはすべて、法令によってであり、感染リスクを説明した上での話であり、ほとんどの休業命令は、夜・昼にかかわらず、すべての飲食店に対し、命令されている。日本のように、「夜の街」だけを目の敵にしたものは稀である。では、なぜ「夜の街」だけが、ことさら標的されるのだろうか?
 政府の持続化給付金も当初、性風俗店を対象から除外していた。そして「夜の街」である。
そこには、それらの従事者が、「普通の人」ではない、という意識が潜んでいる。「普通の人」ではない、といっても歴史的な意味を持つやといった差別問題とは異なる。ここで言う「普通の人」ではない人とは、いわゆる公序良俗の「善良なる風俗」に反しているのではないかというイメージを持たれる人びとのことである。実際に良俗に反しているかどうかとは別で、何となくいかがわしい、何となく怪しいということである。地域で言えば、新宿歌舞伎町という街のイメージがそれであり、実際に歌舞伎町で働く人びとが良俗に反するということではない。
 2019年に、元通産省の上級技術官僚の経歴を持つ者が起こした交通死亡事故では、上級国民という言葉がネット上で出現した。上級があれば、中級も下級もあることになる。その言い方にならえば、「普通の人」ではない、かつ上級ではない、ということは下級国民ということなる。勿論、上級国民と言ったのは、法の下の平等がなされていないのではないか、という批判を込めたものである。それと同様に、国民を格付けすれば以下のようになるだろう。
 上級国民=高級官僚、与党政治家、大企業役員またはそれに準ずる地位にある者
 中級国民=普通の人びと
 下級国民=上記の怪しい人びと
 非国民 =お上にたてつく不逞のやから。即ち、ネトウヨが「反日」と定義する人びと

 「夜の街」の下級国民だけを標的にすることが、どのように働くかというと、「普通の人」だと思っている多くの人たちは、自分たちとは異なる人たちが標的とされているので、痛みを感じづらいということになる。何となくおかしいと思ったとしても、他人ごとである。また、そういう人たちのせいで、感染が拡大していると宣伝されれば、そうかもしれないと思い込みやすい。政府がそこまで計算しているかどうかは分からないが、「夜の街」を標的にしたところで、感染は一般の人びとの間で既に広がっているので、感染拡大を止めることにはならないのは、残念ながら確かである。
 
 

 
 

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コロナ危機「最もリスクがあるのは<会話>だということが、なぜ伝わらないのか?」

2020-07-24 23:05:30 | 政治
1.どうやって感染するのか
 コロナウイルス(SARS-Cov-2)は、鼻と喉の粘膜で増大する。そして病気(Covid-19)を引き起こす。このウイルスが体外に大量に出るのは、一般的に他人に感染させる場合は口からが最も多い。鼻やその他体液、糞便からも当然出ていくが、社会生活上、居住空間を別にすれば、口からの飛沫または、呼気からの流出が最も多いと考えられる。その口から出たウイルスが本人の手に付着し、その手で触ったものからも感染する(接触感染)が、それより実際には、口から口または鼻へ直接ウイルスが伝わり、感染することが最も多い。
 その証拠に、マスクをする人が多いほど感染が縮小する。口から出るウイルスを減少させるからである。WHOが6月になって指針を変更し、マスク着用を推奨したのも、接触感染より口からの飛沫感染が多いことが分かり始めたからである。また、6月に医学誌Lancetに掲載された、感染リスクと距離についての論文(対人距離が3メートルの範囲で、1メートル長くなるごとに感染リスクがおよそ半減する 。また、マスク着用でリスクが17%から3%に減少)も、口からのウイルスが飛散することを前提に分析されている。
2.最も感染リスクが高いのは、マスクなし、近距離での会話
 口からの感染で、最もリスクが高いのは、当たり前ことだが、キスである。英国BBC電子版は、キスをしない性行為を薦めるという医学者の意見を載せているぐらいである。キスを例外とすれば、その次にはマスクなしでの近距離での発声、会話である。
 このことは、報道されるクラスターの事例を見れば分かる。「接待を伴う飲食店」、ライブハウス、小劇場、他人数による会合(多くは飲食している)、カラオケスナック、居酒屋、医療・介護施設、職場、その他すべてでマスクなしの近距離での会話が行われている。それも、一言二言の会話でなく、長い時間にわたる会話である。
 多くの場合は飲食を伴っているので、当然マスクを外す。酒が入れば、さらに声が大きく、対人距離も縮まる。医療・介護施設では、患者等にマスクを着用させるのが無理な場合が多い。明らかに、マスクなし、近距離会話で感染拡大が多く発生しているのである。
 (といっても、マスクによる感染率の減少は85%という研究データ(Lancetによる)があり、100%ではなく、マスクをしていれば感染しない・感染させないなどということはない。)
 逆に、満員に近い電車に1日数十万人が乗っているが、大量の感染が起きたなどという話が聞こえてこない。それは、乗客同士は会話をしないからである。
3.厚労省の3密
 厚労省は「
 1.密閉空間(換気の悪い密閉空間である)
 2.密集場所(多くの人が密集している)
 3.密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる)
という3つの条件が同時に重なる場では、感染を拡大させるリスクが高いと考えられています。」と書いている。
 確かに、この3つの条件が重なれば、リスクは高いと思われる。(ここではマスクに触れらていないが、厚労省はマスク着用も重点的に呼びかけている。)そして、この言葉はかなり浸透している。
 しかし、この3つは、感染のリスクが大幅に違う。1.の密閉空間は、例えどんなに密閉していても、口を閉じ、かつ2メートル以上離れていれば、呼吸からのウイルス飛散はごく僅かで、数十時間その場にいるなどしなければ、感染リスクはほとんどない。2.も同様に距離を開け、マスクをしていれば感染リスクは小さい。アメリカの人種間不平等への抗議デモで感染拡大の報告がないのは、距離をとりマスクをしているからである。それとは正反対に、トランプの共和党集会で感染拡大があるのは、マスクなしで近距離で座るからである。しかし、3.の密接場面だけは、例え戸外でも、少々風が吹いていても、数十センチの距離で、マスクなしで会話を15分以上すれば、極めて感染リスクは高いのである。だから、誤解を生むのである。
 カラオケスナックや居酒屋の感染例では、「窓を開け、換気に気を付けていたので大丈夫だと思った」という声がある(LivedoorNews)。確かに、同時に3密の条件は満たしていない。また、多くの人が集まるとあるが、「多くの人」の解釈は人それぞれで、5,6人なら、「大丈夫だろう」と会食をする。1と3の条件に合っているが、2は条件を満たしていないから大丈夫と考える。そう考える人がいるのは、3密の厚労省説明を読む限りでは自然なことである。はっきりと書かねばならないが、1、2があってもなくても、3だけで感染リスクは非常に高いのである。「同時に重なる場」などという表現があるから誤解を生む。だから、クラスターが発生するのである。
4.濃厚接触者の定義変更
 4月22日、国立感染症研究所は.濃厚接触者の定義変更し、それ以前に示した条件(患者と同居あるいは長時間の接触など数項目)の他に、『手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する) 』を追加した。この場合の「必要な感染予防策なし」とは、医療・介護施設以外の社会生活上では、マスクであり、「(15分以上の)接触」とは、身体的接触を除けば主に会話である。この条件は勿論、「専門家会議」でもリスクが高いとしてきたのだが、敢えて追加したのは、それだけ重要なことだと分かってきたからである。
5.グループで通常の距離間、マスクなし、15分以上の会話で、ひとりでも感染者がいれば、ほぼ全員感染する。
 結局、最もリスクが高いのはこれである。感染予防に努めるとは、第一にこのことを避けることである。経済を再開すると感染拡大が起こるのは、会話の機会が増えるからである。人が移動すれば、必ずどこかで、今まで会わない人と会話が始まるので感染が広まるのである。ただ単に、街の中を黙って歩いただけで、感染が広まるのではない。また、「夜の街」で接待サービスを受けることだけで感染が広まるのでもない。昼だろうが夜だろうが、飲み屋だろうが職場だろうが、近い距離でマスクなしで15分以上、声を発すれば感染するリスクが高くなる。あれやこれやと様々な感染予防法を言うよりも、このことを声を大にして言うべきなのである。
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 

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コロナ危機「つまるところ、1日10万件以上のPCR検査が最も有効な手段」

2020-07-23 18:37:07 | 政治
 7月23日、東京都はついにに366人の感染確認数を公表した。曜日によって集計の差が出るのだが、7月以降、誰が見ても感染確認数が増加しているのは明らかだ。都知事や政府が言うように、検査数が増えているので、それによって確認される感染例が増えるというのもの確かにそのとおりで、366人の内、何人かは以前は検査されず、数字に入らなかったのである。
 具体的に言えば、政治も自治体も、検査対象を詳細に公表していないが、メディアの報道で判断すると、以前は濃厚接触者の内、症状を呈していない者は検査しなかったのだが、今は無症状でも検査をする。つまり、以前は無症状で回復した者は「感染者」には入らなかったのである。その分が増えたのは、明らかである。逆に言えば、以前は見逃していたので、過去の数字はいい加減なものだ、と言っているに等しい。また、「夜の街」やスポーツ界など一定の集団を検査するようになったので、その分は「感染者」は増える、というのも納得がいく。しかし、報道で言うところの、感染経路不明者とは、症状を呈し、医師の勧めで検査したものである。この数字も著しく増えている。そのことから言えるのは、症状が表れている者も増大している。感染者の内、症状を呈する者はある程度一定しているので(無症状は4割という、アメリカからの最新の報告もる)、感染者全体が著しく増えているという実態が見えてきたということである。
 緊急事態宣言の解除以後、政府も自治体も経済を再開し、「新しい生活様式」などと、感染予防への注意は呼びかけてきた。その結果が、感染増大(第2波は明らかだが、政府は頑なに認めようとしない)である。確かに、個々の人びとは入念に注意しているだろう。特に、高齢者が引き続き自粛しているのは、感染確認が若年層に多いことでも分かる。しかし、個人レヴェルでいくら感染予防に注意しても、飲食店やホテルがアルコール消毒をいくら熱心に行っても、感染拡大は止まらない。それが数字として表れているのである。いくら注意を呼びかけても、注意をする人は充分にしているのであり、それでも感染拡大は止まらない、それが現実なのである。
 勿論、再度緊急事態宣言を行うのが、最も近道であるのは疑いない。それによる、或いはそれ以前からの、国民の自粛で感染を一定程度抑え込んだ実績があるからである。しかし、それは実際には極めて困難である。国民の命より、経済再開にひた走る安倍政権は、最後の最後までやりたがらないだろう。何よりも、国民は「自粛疲れ」を起こしており、再度の自粛には、抵抗がとてつもなく大きい。恐らく、法的な強権による行動制限を課す以外には方法はない。しかし、もとより日本では、それは不可能である。
 部分的な地域や業種に限り、自粛と生活補償を行うという方法も考えられる。しかし、感染確認数が既に全国に拡大しており、「夜の街」以外にも数多く感染が発見されることから、その方法では、もはや完全に手遅れである。
 つまるところ、WHOのテドロス・アダノム事務局長は言ったように「検査、検査、検査」しか方法はないのだ。「医療ガバナンス研究所」理事長 の上昌広医師も、 「感染症対策の基本は早期診断、治療、そして自宅も含めての隔離です。検査しなければ何も始まらない」 (毎日新聞7月23日)と言う。PCR検査を主体に、大規模な検査で感染者を見つけ出し、医療とともに、その人たちの防疫上の隔離を行って、その先の感染拡大を防ぐ、それ以外にはないのだ。検査数は多いければ、多いほど感染者を発見でき、その人の健康も保たれ、その人が感染させるリスクも激減させる。
 日本のPCR検査数は確かに増えているが、それでも東京で1日数千件、全国で1万件程度。感染拡大をかなり抑え込んだニューヨーク州は無償で1日6万件である。(アメリカは地域によって、検査法もまちまちで、ニューヨーク州の感染確認数を抜いたカルフォルニア州では、CNNによれば、結果が出るまで10日もかかるなど、統一的な検査法がなく、問題も多い。何よりも、トランプのように経済再開を急ぎ、行動制限を嫌う人びとがあまりにも多い。)
中国武漢では1000万人の市民の検査が実施され、ドイツ、フランス、英国その他多くの国でも、多額の公費を費やしても1日10万件以上のPCR検査が実施されている。それはすべて、感染を封じ込めるのに、最も有効と考えられるからである。
 政府が何もしなくても(アホでも)、国民の「民度」により、一度は感染を低く抑えた。だが、第2波はそうはいかないだろう。感染拡大を後押しする「Go To」の1兆円規模の予算があれば、1日10万件の検査は可能である。経営が悪化する病院への経済支援も、さらなる国民の生活支援にも公費は使える。今度ばかりは、アホな政府では、コロナ危機は乗り越えられない。安倍政権はアホな政策を直ちにやめるか、すぐに総辞職するか、どちらかを選ぶべきだ。
 
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コロナ危機「新<分科会>は、政府のいいなりのお墨付き機関であることをさらけ出した」

2020-07-18 17:57:23 | 政治
 内閣官房の資料によれば、この分科会とは、正式には「新型コロナウイルス感染症対策分科会 」といい、政府の新型インフルエンザ等対策閣僚会議の決定に基づき設置され、この分科会の議決で、同じ閣僚会議の下で開催されるとする「新型インフルエンザ等対策有識者会議」の議決にとって変えられる、とされるものだ。要するに、「専門家会議」を廃止したので、その変わりということで、小林慶一郎など経済学者も加えて、少し新味を出そうというものである。しかし、やはり専門家会議同様、いやそれ以上に、政府のいいなりのお墨付き機関であることをさらけ出してしまった。
 7月16日、この分科会は政府の「Go To トラベル」キャンペーンの東京除外を了承した。それをもって赤羽国土交通大臣 は「専門家の了解を頂いた」と言って、政府案どおり、東京除外案を公表したのである。
 そのあたりの尾身茂会長以下分科会委員の政府へのいいなりぶりはひどいものだ。以下は、会議後の記者への回答である。
尾身茂
「東京を一つ例外としたのは合理的な判断だと思います」  
釜萢敏・日本医師会常任理事
「東京だけということよりは、まずは自分の県、あるいは隣県くらいまでのあいだでやりながら広げていったらどうかなっていうようなことを言おうと思ったんですけども、それはとくにしゃべる機会がありませんでした」 
岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長 
「『GoToキャンペーンを止めるべきではないか』とか『3カ月様子を見よう』という意見は出なかった」 
 これでは、単なるセレモニーである。内閣官房は分科会を「構成員の間における自由かつ率直な議論が妨げられることがないよう、議事は 非公開とする」と決めており、議論の過程は漏れないようになっているのは、デタラメでも分からないようにするためだろう。「自由かつ率直な議論」などあろうはずもない。何も文句を言わない「専門家」だけを集めて、「はい、終わり」とやっているだけで、会議にもなっていない。尾身茂座長は、それで政府の案どおりの結論を出すだけである。
 そもそも、政府側に専門家の意見を聞く耳などないことは、以前の「専門家会議」で明らかであり、委員もそれが分かっていて出席しているとしか思いようがない。それでは、専門家に値しない。ここに、先の国会に参考人招致された、東大先端科学技術センターの児玉龍彦名誉教授のような人物がひとりでもいれば、侃侃諤諤の議論になり、それこそ言葉の正しい意味での会議になるだろう。専門家とはこういう人のことを言うのだ。
 この分科会も、各種の諮問会議と同じように、政府の言うとおりの結論を出す機関になってしまっている。政府が初めから、反対意見を言う学者は排除しているからで、政府が専門家の意見を聞いたと、お墨付きを与えるだけになっている。このような会議はむしろない方がましで、害悪以外の何ものでもないのである。
 

 
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