夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

人類滅亡まで90秒「(ウクライナ戦争が)誰の手にも負えなくなる可能性は、依然として高い」」

2023-01-25 16:02:25 | 社会

 1月24日、アメリカの「原子力科学者会報Bulletin of the Atomic Scientists」の人類滅亡までの時間は更新され、昨年より10秒短い90秒となった。
 その声明は、「今年、原子力科学者会報の科学安全委員会は終末時計の針を前に進めたが、これは主に(排他的ではないが)ウクライナでの戦争の危険性が高まっているためである。時計は現在、真夜中まで 90 秒を指している。これは、これまでで最も地球規模の大惨事に近づいている」と言う。
 
 この「終末時計」とは、「アルバート・アインシュタインとマンハッタン計画で最初の原子兵器の開発を支援したシカゴ大学の科学者によって 1945 年に設立された原子科学者会報は、2 年後に終末時計を作成した。人類と地球への脅威を伝えるためのゼロへのカウントダウンである。Doomsday Clock 終末時計は、10 人のノーベル賞受賞者を含むスポンサー委員会と協議して、Bulletin会報委員 の Science and Security Board によって毎年設定される。」というものである。
 この「終末時計」は、国家の利益に執着する政治家たちとは離れ、純粋に科学者からの物差しで測ったものとして、極めて客観的な意味を持つ。

 声明は「ウクライナでの戦争は、双方が勝つことができると確信して、2 度目の恐ろしい年に入るかもしれません 」とするが、当然、大部分はロシアの侵攻を非難している。
ロシアの侵攻により「ウクライナの主権と、第二次世界大戦の終結以来、おおむね維持されてきたより広範なヨーロッパの安全保障協定が危機に瀕している」からである。
「そして何よりも、核兵器を使用するというロシアの脅迫は、偶然、意図、または誤算による紛争のエスカレーションが恐ろしいリスクであることを世界に思い出させます. 紛争が誰の手にも負えなくなる可能性は依然として高い。」
 「ロシアはまた、チェルノブイリとザポリージャの原子炉サイトに戦争をもたらし、国際議定書に違反し、放射性物質が広範囲に放出される危険を冒しています。これまでのところ、これらの発電所を確保しようとする国際原子力機関の努力は拒絶されている。 」
「ロシアと米国の間で最後に残された核兵器禁止条約である新STARTは危険にさらされている。 」
 また、「戦争の影響は、核の危険性の増大だけにとどまらない。また、気候変動と闘うための世界的な取り組みを弱体化させる。 」
 そして要するに「ロシアのウクライナ侵攻は、核兵器使用のリスクを増大させ、生物・化学兵器使用の亡霊を引き起こし、気候変動に対する世界の対応を妨害し、その他の地球規模の問題に対処するための国際的な取り組みを妨害した。ウクライナ領土への侵略と併合はまた、これまでの理解に異議を唱え、安定を脅かす行動をとるよう他の国を勇気づけるような形で、国際規範に違反している」としている。
 NATOによるロシアの周辺までの東方拡大があり、2014年以降、ウクライナで紛争があり、ウクライナの民族主義者によってロシア語話者の多くが殺害されたとしても、ロシアによる軍事侵攻が正当化できないのは、当然のことである。したがって、客観的な立場に立つ科学者もロシアを非難するのは当然である。

本格的な和平交渉への道筋を!
 しかしそれでも科学者たちは、次の言葉でこの声明を締めくくっている。「しかし、少なくとも、米国は、戦争が助長した核のリスクの危険な増加を減らすために、モスクワとの原則に基づいた関与への扉を開いたままにしておく必要がある。リスク軽減の 1 つの要素には、誤算の可能性を減らすために、ロシアとの持続的でハイレベルな米軍間の接触が含まれる可能性がある。米国政府、そのNATO同盟国、およびウクライナには、対話のための多数のチャネルがある。本格的な和平交渉への道筋を見つけることは、エスカレーションのリスクを軽減するのに大いに役立つ可能性がある。この前例のない世界的な危険の時代には、協調行動が必要であり、一秒一秒が重要 だ」と結んでいる。

  科学者たちは、「本格的な和平交渉」の必要性を訴えているのである。

 1月25日、マスメディアは、NATO諸国によるウクライナへの新たな兵器供与のニュースを伝えている。ドイツはレオパルト2,アメリカはM1エイブラムスという最強戦車をウクライナに供与することを決めたという。それは、「本格的な和平交渉」とは正反対の、軍事力強化によるロシア軍の撃退を意図したものである。NATO諸国は、軍事力によってロシア軍を敗退させることが可能だという「希望的観測」に基づいて、兵器供与を強化しているのである。しかしそれは、声明の中での「双方が勝つことができると確信して」という言葉に示されているとおり、「双方」の一方であるNATO諸国側の不確かな「確信」に過ぎない。ロシアもまた、「勝つことができると確信して」いるのであり、総力を挙げて戦争遂行をしてくるのは疑う余地はない。
 現実は、NATO諸国もロシアも「誰の手にも負えなくなる」戦争に突き進んでいるのである。NATO諸国は、ロシアの侵略に対する正義の戦争と位置づけている。しかし「誰の手にも負えなくなる」戦争で、「90秒後」に人類滅亡が引き起こされるとしたら、NATO諸国は「ロシアが悪いのだから、人類滅亡も仕方がない」とでも言うのだろうか?
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アメリカの指示命令で、中国との戦争準備にひた走る岸田政権

2023-01-21 12:15:19 | 社会

 報道によれば、「1月13日、岸田首相はワシントンでバイデン大統領と会談し、敵基地攻撃能力の保有や防衛費の大幅増を決めたことを説明した」という。それに対し、「バイデン大統領は全面的な支持を表明した」という。
 これは、東京新聞が「防衛費大幅増など手土産 喜ぶアメリカ」と見出しで報じたように、岸田文雄が2022年の5月の会談で、バイ デンへの「防衛力の強化と防衛費の増額」の約束を忠実に守ったことを、アメリカが称賛したということである。それは、「アメリカ政府はお祝いムード」で「日本の戦略的思考と外交の方向性に非常に満足している」(シーラ・スミス米外交問題評議会上席研究員 朝日新聞1/15)という言葉でも分かるとおり、バイデン政権の安保政策に完全に合致していることを示している。岸田政権のアメリカへの忠誠心に、さぞ、バイデンは「満足」していることだろう。

NATO諸国とロシアの代理戦争
 ロシア・ウクライナ戦争がNATO諸国とロシアの代理戦争だと指摘することを、ロシア側からもそのような発言があるので、ロシアの言うことは100%嘘だとしたい意向もあり、西側政府と主要メディアはそう見なすことを拒否している。しかし、ロシア側がどう言おうと、また、この戦争がロシアの侵略行為であることは間違いないとしても、代理戦争という性格を帯びていることは否定しようがない。
 それは、ウクライナは、NATOの兵器供給と主にアメリカの軍事情報支援がなければ、ロシアに立ち向かえないことから、戦争継続はウクライナ政府の意思だけでなく、NATO諸国政府の意思でもあるからである。特に、アメリカ政府のバイデンが、トルコのエルドアン並みに和平仲介の努力を重ね、現在のような強力な兵器供給に消極的ならば、ウクライナのゼレンスキーも「クリミア半島の奪還まで徹底的に抗戦する」とまでは言えず、停戦交渉に力を入れざるを得ないだろう。
 このように、NATO、特にアメリカ政府の意向が大きく左右する戦争を代理戦争と呼ぶのは理にかなっているのである。
 アメリカ共和党内には、米軍はロシア軍より地上戦では圧倒的に軍事力が優位で、ロシア軍を早期に撃退できるので、ウクライナに米軍を派遣すべきという意見もあるが、民主党主流派のバイデンは、ロシア軍との直接的戦闘は、絶対に命令しない。その意味でも、アメリカの代理戦争的性格を持つとは言えるこの戦争は、アメリカにとっては、長年にわたり敵対関係にあるロシアを弱体化するのに、極めて好都合である。アメリカの軍事産業を活性化させ、かつ、ロシア制裁により世界的に品薄となった石油や穀物を輸出増加させる利益をもたらし、正義はアメリカ側にあると示すことすらできたのである。そして、直接戦うのはウクライナ国民であり、アメリカ国民は犠牲にならずに済む。このような、願ったり・叶ったりなことは、そう起こることではない。
 ロシアによるウクライナ軍事侵攻は、アメリカにとっての敵国を政治経済的に弱体化させるのに、最も好都合であるのは間違いない。そして、この構図を対中国にも作り上げる誘惑に、バイデン政権がかられも、なんら不思議ではない。

中国・日本の戦争も願ったり・叶ったり
 バイデン政権は、2022年10月「国家安全保障戦略(NSS)」を公表した が、その中で中国を「国際秩序を変える意図と能力を高めている唯一の競争相手」と 規定し、対抗する方針を明白にした。要するに、中国との競争に打ち勝つことが安保政策上の最優先課題であり、それも、政権発足依頼に方針である同盟国との協調体制によって、中国に打ち勝つ、ということである。
 中国に打ち勝つと言っても、中国と戦争し、打ち破るということではない。最大限の軍事力強化に努めるが、核兵器を使用しなくても、破壊力が極度に発達した現代の戦争に勝者はなく、互いに甚大な被害を被るだけなのは、分かりきっていることだからである。米軍は中国軍との連絡窓口を維持しているし、2月にブリンケン国務長官の訪中が予定されるなど、バイデン政権の米中の直接衝突は避ける意向は明白である。
 そうなれば、対中国で「ウクライナの役割」を担うのは、日本以外にない。アジア太平洋地域のアメリカ同盟国は、日本、韓国、オーストラリアなど(アメリカが味方に引き入れたいインドは、中国と紛争が絶えないが、対ロシアでアメリカに追従しないことで分かるように、自国の利益を最優先するので、アメリカの思いどおりにはならない。)だが、その中でも、経済力と軍事力で秀で、親米右派政権がほぼ永続的に続く国は日本だけである。韓国もオーストラリアも右派と中道左派が政権交代を繰り返すが、日本は、異常なほどアメリカに追従する自公政権は安定しており、近いうちに政権交代する可能性はゼロに等しい。また、明治以降の欧米崇拝、第二次大戦以降のアメリカ崇拝は、国民に深く染み渡っているし、日本人の中国嫌いも甚だしく高まっている。かつて日本は中国を侵略し、日中戦争を行った。それは中国側の記憶にも刻まれている。その意味でも、中国と戦争が起こるとすれば、日本は「うってつけ」なのである。
 日本は、曲がりなりにも「平和憲法」を抱き、「専守防衛」を掲げてきたのだが、自公政権は、それを逸脱する姿勢を明白にし始めた。軍事費を大幅に増額し、アメリカ、中国に次ぐ世界3位の軍事大国になろうと努めている。バイデン政権は「民主主義国対権威主義・専制主義国」の戦いという「正義」(何が正義なのかは、アメリカが決めるのだが)の概念を前面に出しているが、それは敵と見なす国を力によって封じ込めるというアメリカの伝統的政策となんら変わりはない。それに日本政府は、同調したのである。

「防衛費大幅増など手土産 喜ぶアメリカ」の真の意味
 ロシアの侵略は、アメリカにとっては「棚から牡丹餅」だったが、ロシアが侵攻するよう画策したという証拠はなく、また、そのようなことはしたとは考えづらい。それと同様に、アメリカが対中国でも戦争が起こるように画策することはないだろう。しかしそれでも、アメリカ政府は戦争を想定し、そのための準備は怠らない。日本の軍事力の増強は、日本には最新兵器の製造能力がないことから、アメリカ製兵器の輸入に頼らざるを得ない。それは、アメリカ軍事産業の多大な利益をもたらす。そして、何らの理由により、不幸にも開戦となった時、対ロシアでのウクライナの役割を日本がしてくれれば、これほど願ったり、叶ったりのことはない。それが、岸田文雄の訪米での「防衛費大幅増など手土産 喜ぶアメリカ」の真の意味なのである。

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「旅行支援」「マイナポイント」「ふるさと納税」の3バカ政策

2023-01-13 11:28:01 | 社会

1バカ「旅行支援」
 政府の旅行支援対策が1月10日に再開した。これは、GoToトラベルがコロナ感染再拡大で、1兆3500億円の予算が使いきれず、名前を変えて再スタートしたものである。
 この政策には、Yahooニュースのコメント欄を始め、「税金の無駄遣い。旅行しない人には恩恵が無く不公平」という声が多数上がっている。確かに、旅行する人には、その支出の一部が税金で支払われるというもので、旅行できる金銭的時間的に余裕のない人には、一円の恩恵がないからである。特に、生活困窮者は、旅行する余裕などないので、まったく恩恵を受けず、富裕層とは言えないまでも一定の生計に余裕がある人にだけ恩恵があるという意味で、不公平な制度なのは明らかである。
 そもそも、コロナ危機での旅行業界を支援するという目的なら、業界の雇用に補助金を支出するといった欧米で実施された政策の方が、直接旅行業界を支援できるのである。さらに言えば、コロナ危機での困窮は、旅行業界だけでないので、ことさら旅行業界だけを支援する理由は全く不明である。
 根本的には、この施策が旅行業界の支援に本当になっているかも疑わしい。コロナ危機で感染の不安から旅行を控えていた人たちは、いくらか安全になったと思えば、旅行支援による割引がなくても旅行に行くのである。割引があるから利用するだけで、割引がなければ旅行に行かないという者は極めて稀だろう。旅行支援が旅行者を増加させるかどうかは、全く疑わしい。旅行業界の感染への安全策を支援する方が、旅行者を増加させる効果は狙える。さらには、「宿泊施設では人手不足や事務手続きの煩雑さによるスタッフへの負担が増え、離職者が増えたという声まで上がっています。 」というニュースさえある。(2022/11/9朝日放送)
 
 このような馬鹿げた政策を実施しているのは、恐らく日本だけだろう。例えば、ドイツで実施されている公共交通機関を9ユーロで乗り放題という政策は、旅行者以外の多くの物価高騰に喘ぐ通勤労働者を支援し、マイカー利用を減らし、CO2の排出量を減らすことに貢献するという社会的意味を持つ。日本のように、社会的な意味もなく、一部の業界や旅行をする者だけに多額の税金を譲り渡すというような政策は、日本以外では不可能と言っていいだろう。

2バカ「マイナポイント」
 社会的な意味はなく、一部の業界や人に多額の税金を譲り渡す政策は、マイナポイントもふるさと納税も同様である。
 マイナポイントは、マイナンバーカードを取得した者に、総額2兆円を超える予算を供与するというものだが、これも社会的な意味はまったくない。
 国民への番号付与という制度、国民識別番号制のは、ヨーロッパ諸国で始まり、主に社会保障や税負担の公平性と行政事務の簡素化を目的としたものである。例えば、税負担の公平性では、富裕層の複数の所得を同一番号で管理し、税逃れを防ぐという目的を持つ。
 政府は、国民識別番号制の目的を前面に出し、それを国民に訴えればいいだけである。税逃れを防ぐ目的がありながら、2兆円もの税金を投入するというのは本末転倒である。

3バカ「ふるさと納税」
 ふるさと納税も大バカ政策としか言いようがない。その目的は、故郷や地方を思う気持ちをその地域への寄付によって貢献することで、都市と地方の税収格差を縮めることにあるという。しかしその実態は、その「寄付」は返礼品目当てであり、「故郷や地方を思う気持ち」などとは無関係となっている。それは自治体間で高額返礼品競争が起こり、「お得な」返礼品がある自治体が収入が多いことで明らかである。それは、本来、寄付に返礼などあり得ないにもかかわらず、寄付額が所得税・住民税の控除されるなどという寄付の主旨とは正反対の制度となっていることに起因する。そのため、居住している自治体の税収減を招くという、馬鹿げたことが起きているのである。居住している自治体の税収減は、行政サービスの低下をもたらし、ふるさと納税を利用しない多数の者の不利益をもたらすことにもなるのである。
 返礼品を提供するのは、その自治体内のすべての産業ではなく、ごく一部の業者に過ぎない。それは、行政との繋がりが深い業者であり、税金を使ってこれらの業者だけに利益をもたらすという著しい不公平な構造をも生み出している。このような著しい不公平が、「寄付」という美名のもとに行われている極めて不合理な制度なのである

目先の損得だけに目を向けさせ、一部の業者だけの利益に貢献
 これら3つの政策に共通しているのは、目先の損得勘定だけに目が行くよう設計されていることである。割引で旅行ができれば得、マイナポントがもらえれば得、高額な返礼品をもらえれば得、そういう「餌」で国民を釣る制度と言っていい。利用すれば「得」ということから、マスメディアもその欲望を満足させるため、どうすれば「もっと得」か、という記事ばかり報道している。目先の「得」が、それがどのような結果をもたらすのかは、新聞の片隅や一部のメディアを丹念に探さないと理解できないようになっているのである。
 これらの政策が不公正で不合理なのは、それだけではない。これら制度が、主にいわゆるデジタルを通じて実施されるので、デジタル関連業者に多大な利益をもたらしているからである。旅行支援は、楽天トラベルなどのデジタルツーリズム業者に、マイナポントは、デジタル関連産業全般に、ふるさと納税も
その間に「ふるなび」などのデジタル業者が入り込み、手数料収入を得ている。
 それは、自公政権のデジタル産業の育成という方針で実施されているのであるが、オリンピック同様に、一部業者と行政・政治との結びつきも加速させる。まだ表にはでないのだが、いずれ政治とデジタル産業との贈収賄等の癒着がメディアを賑わすのも、そう遅い時期ではないだろう。


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「ウクライナ侵攻」戦争は何年も続き、結局、ロシア・欧米共倒れ?

2023-01-09 11:37:36 | 社会

 ロシアによるウクライナ侵攻で始まった戦争は、年を越しても終わる気配はまったくない。ウクライナのゼレンシキー政権は、クリミア半島まで含めた「領土奪還」を目指しており、NATOすなわち欧米はそれに合わせて大量でかつ強力な兵器の供給を続けている。
 それに対し、ロシアはウクライナで敗退することは、ロシアという国家存亡の危機と捉えているのである。それは、2022年12月20日NHKの取材に、ロシアの政治学者ドミトリー・ヴィタリエヴィチ・トレーニン (アメリカのワシントンに本部を置くカーネギー国際平和財団のモスクワセンター所長)が、「ロシアが敗北すれば、すべてが失われます。この戦争は、ロシアの国家(государство)、そしてロシアの国家性(государственность)の存在をかけたものであることを理解しなければなりません。」と答えていることからも明瞭である。ロシアにとっては、かつての「ソ連圏」であった東欧まで親西側勢力となり、「兄弟国」と思っていたウクライナまでも、2014年に親ロ派のヤヌコヴィッチ大統領が武力で追放され、アメリカ主導の西側が国境まで迫ってきていると感じているからだ。ウクライナでくい止めなければ、次は、ロシアという国家そのものが、危ういものとなる。こういった思いは、プーチン個人だけのものではなく、トレーニンが言うように、多数のロシア国民のものと考えるのが自然である。
 そもそも、侵攻したロシアが悪いのだから、ウクライナにいるロシア兵は敗北して全員死ぬべきだ、などと考えるロシア人などいないのだ。国際法違反であろうとなかろうと、戦争犯罪であろうとなかろうと、自国の兵士は生きていて欲しいのである。また、あり得ないが、プーチンが撤退を命じたとしても、その後のロシアの再侵攻を防ぐために、西側はNATOをさらに強化し、強大な軍事力でロシアをとり囲み、ロシアには武装蜂起すら要求するだろう。ウクライナに取り残された親ロ派ウクライナ人は、少数とはいえ、2014年以降の内戦のようにウクライナ民族主義者に虐殺される危機(ロシア兵がブチャで行ったように)を迎える。まさにその時は、ロシア国家は壊滅寸前に追い込まれるのである。この戦争は、表面的にはロシア・ウクライナ戦争だが、実態は西側とロシアの戦争なのである。
  欧米は、主要メディアの論調から分かるように、欧米、特にアメリカの強力な兵器は、ロシアのものよりはるかに優っているので、ウクライナ軍は何年かかろうとロシア軍と親ロ派勢力を撃退できると信じているようだ。それは、侵略を開始したロシアに対する正義の戦争というわけである。しかし、正義であろうとなかろうと、ロシアは国家の存亡の危機と捉えている以上、負けるわけにはいかず、総力を挙げて戦うしかないのである。それを抑えるには、ロシア領内の軍事施設を全滅させるしかないが、それは全面戦争を意味し、西側はその選択はできない。
 
結局、ロシア・欧米共倒れ?
 戦争は終わる見通しはない。そしてどうなるのかと言えば、両者ともに疲弊することである。見通しは立たない中で、それだけは間違いないだろう。ロシアは経済も国民生活も極度に疲弊する。西側は、特にヨーロッパ諸国では、エネルギー価格の高騰に見られるように、ロシアほどではないとして、経済は低迷し、国民生活の困窮は免れない。大量の軍事支援による軍事費の著しい増加(既に、ウクライナへ供給する弾薬は不足が指摘されており、生産を増加させなければならない。それは、1発数億円のミサイルを含む)により、福祉予算は削減される。著しい格差・不平等は、さらに加速するのである。恐らく、その時になって、ようやく和平の気運が生まれるだろう。それは勿論、両者ともに負けられない戦争なのだから、両者ともに敗北しないものである。つまり、簡単に言えば、現状維持での停戦しかないのである。
 
 
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「安倍殺害事件」朝日新聞の馬鹿げた言い訳

2023-01-08 11:35:00 | 社会
 
 1月8日、朝日新聞は朝刊に安倍元首相を殺害した山上徹也が、警察に対し「銃撃30分後 教団名を供述」した事実を記事として載せている。そして事件発生の7月8日夜に、奈良県警は教団名を「戸惑った警察 伏せて会見」し、「特定の団体に恨みがあった」としか公表しなかった。
 この「特定の団体」が旧統一教会であることを朝日新聞だけでなく他の新聞やテレビ・ラジオが明らかにしたのは、旧統一教会側が事件の3日後の7月11日に記者会見を実行してからである。旧統一教会側は、主要メディアが名前を公表しない中で、「現代ビジネス」などネットニュースが旧統一教会と明らかにし、旧統一教会側にとって不利な情報がネットを中心に駆け巡るのを恐れ、先に自ら名乗り出ることで、不利な状況を少しでも良くしようという思いからであるのは想像に難くない。
 その3日間には、「民主主義への挑戦」と、さも言論への暴力であるかのような言説が政府やメディアから盛んに登場し、当の朝日新聞は、7月9日に「民主主義の破壊は許されない」などという的外れな社説を掲げたのである。
 主要メディアが、ネットニュースが知り得た「特定の団体」が旧統一教会であることを明らかにしていれば、事件は旧統一教会のあまりにも悪辣な行為からの個人の恨みに起因することが分かり、民主主義の問題ではないことが、すぐに理解できたはずである。
 ここには、事件が参院選投票日の直前であり、自公政権に当然のように忖度する警察(むしろ、首相官邸には事件直後に事実は伝えられ、官邸側が選挙前に公表するなと命じたと想像できる。)と馴れ合いの主要メディアの意向が隠されている。選挙前に、安倍晋三と旧統一教会の繋がりが明らかされれば、自公にとって極めて不利な参院選になりかねないからである。

朝日新聞の言い訳
 朝日新聞は、参院選の1日後に教団名を明らかにした理由を(事実の)「裏付け後に報道」と題し、「この団体が旧統一教会であるとの情報を独自取材で得て、その内容を事実と確認できるまでの間は」名称を明らかにしなかったとしている。そして様々な事実が「11日に判明」したから教団名を速報、掲載したと言い訳している。
 この言い訳が本当ならば、朝日新聞は自民党と旧統一教会との密接な関係や旧統一教会の極めて悪質な「勧誘」や「献金」の情報をまったく把握しておらず、この事件で初めて知った、ということになる。なぜなら、「この団体が旧統一教会であるとの情報を独自取材で得」たにもかかわらず、記事にしなかったのは、旧統一教会に関する情報をまったく把握していないので、「裏付け」が必要だったと解釈できるからである。旧統一教会の情報を以前から得ていれば、安倍晋三と旧統一教会との結びつきは瞬時に明らになり、11日前に記事にできたはずである。
 その後にメディアに登場するようになった鈴木エイト氏やその他のジャーナリストは、新聞・テレビ等の主要メディアは、旧統一教会の問題に「触れたくなかったようだ」と言っているが、恐らくは、それが事実だろう。テレビプロデューサー・ライターの鎮目博道は、記者クラブ制に「根深い問題があった」という。権力に不都合な記事を書いて「記者クラブ出入り禁止などにされて、取材機会を失う危険性があるので、当局の意向に面と向かっては背きにくい側面 」があり、「忖度」が働いたと証言している。
 はっきり書けば、朝日新聞は、旧統一教会の情報をまったく得ていないなどとは考えられず、自公政権への「忖度」が働き、教団名を記事にするのをためらったと考えるのが、極めて自然である。

 そして愚かにも朝日新聞は同日の紙面で、「カルト問題」を、中村文則なる人物の「『悪』は人々の無関心の中で行われる」などという的外れも甚だしい文章を載せている。人々は、「カルト問題」に無関心なのではない。主要メディアが、安倍殺害事件前は「カルト問題」をまったく報道しなかったので、知らされてなかったのである。人々が、直接見聞きする情報は極めて少なく、社会で何が起きているのかのほとんどの情報は、マスメディアの報道から知るのである。知らされてないものに「無関心」も何もないのである。
 
 勿論、朝日新聞だけが問題なのではなく、「日本記者クラブ」の会員である「日本新聞協会および日本民間放送連盟加盟の新聞、通信、放送各社など 」の日本の主要メディアの報道姿勢が問題なのである。
 警察は教団名を「伏せて会見」したが、警察の会見をそっくりそのまま、警察の公表どおりにしか報道しないのは、「日本記者クラブ」会員すべてである。長い間、自公政権が(束の間の民主党政権はあったものの)続き、その権力と広告収入の考慮から資本への「忖度」が常態化してしまった、日本の主要メディアの姿がそこにある。
 
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