夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

イスラエル・パレスチナ戦争 No2「アメリカの戦争依存症Addicted to War」

2023-11-25 15:53:53 | 社会

イスラエルによる空爆

アメリカの戦争依存症Addicted to War
 2002年に、『Addicted to War: Why The US Can't Kick Militarism』 (「戦争依存症(中毒):アメリカはなぜ軍国主義から抜け出せないのか?」という本が出版されている。これは、アメリカの作家でありジョンズ・ホプキンス大学のジョエル・アンドレアスによって、漫画形式でアメリカの対外戦争の歴史を語ったものである。英語版Wikipediaによれば、「161の参考文献を含むこの本の目的は、なぜ米国が近年他のどの国よりも多くの戦争に巻き込まれたのかを実証し、これらの軍事的冒険から誰が利益を得て、誰が金を払い、誰が死ぬのかを説明することである」と説明されている。
  それは今日、バイデンがイスラエルのパレスチナ人への大量殺戮を「自衛」として擁護する姿にも、「戦争依存症」の症状は明白に表れている。
 バイデンは、いくら何でも、子ども4千人を含む1万人以上のパレスチナ人がイスラエル軍に殺されても、何の問題もない、とは考えないだろう。だから、人道上の一時休戦を言い出したり(これは、多分に即時停戦を求める多数世論に押されて、しぶしぶ言い出したのだが)するのだ。しかし、1万人以上の市民が殺されるのが良くないことと考えても、それを止める行動は、決してできない。なぜなら、戦争依存症だからである。人が大量に殺されると分かっていても、それを止められない、麻薬が悪いと分かっていても、それをやめられない。両者は依存症であり、同じ作用が起きているのである。

敵はテロリストだから,みんな殺せ
 アメリカ政府とそれに追随するヨーロッパ諸国政府は、ハマスはテロリストであり、テロリストを攻撃し、殺害するのは正義だとして、イスラエル政府のガザ市民への攻撃を支持している。しかし、テロリズムの社会科学上の定義など存在せず、テロリストと断定するのは、単に自分たちの敵とする勢力を非難するための便宜上の言葉でしかない。テロリストと断定すれば、その対象とその属する集団を殺戮するのは正義だと主張するための都合のいい言葉として使っているだけである。
 例を挙げれば、ロシアのプーチンもウクライナが自国の民間人を殺害すれば、テロ行為だと非難する。ロシア側がミサイル攻撃で多数のウクライナの民間人を殺害しているにもかかわらず、である。
 英国BBCも、ハマスをテロリストと呼ばないが、そのことで、政権与党と野党労働党右派の主流派から非難されている。それに対するBBCの答えは「『テロリズム』とは、人々が倫理的に認めない集団に対して使う、意図が込められたことばだ。誰を支持し、誰を非難すべきかを伝えるのはBBCの役割ではない」 (シンプソン記者)「『 テロリスト』ということばは、理解の助けよりも妨げになる可能性がある。 …われわれの責任は客観性を保ち、誰が誰に対して何をしているのかを視聴者がみずから判断できるように報道することだ」 (BBC編集ガイドライン、いずれもNHKから)というものだ。BBCは「テロリズム」の意味を正確に理解している。BBCも日本のNHK同様、保守党の権力側から圧力を受けており、フランス公共放送フランス2比べれば、欧米よりの報道が目立つが、最低限のジャーナリズムは死守したい意向が感じられる。
 
 アメリカも、テロとの戦いと称し、イスラムジハード主義者をその付近にいる一般人も空爆で大量に殺害する手法を何度も繰り返しているが、それも正義と主張するのである。そこで殺される一般人は、テロリストの所属する国の人びとである。アメリカ軍が、アラブ人やアフガニスタン人の結婚式や葬列をも空爆し、大量殺害することが度々あるが、それも「テロリスト」が紛れていると言えば、正義なのである。勿論、欧米人の中に「テロリスト」が紛れていれば、欧米人も殺害する空爆などは絶対に行わない。そこには、「テロリスト」と呼ぶのは必ず欧米人以外という人種差別主義が隠れている。「テロリスト」は大量殺戮しても正義なので、欧米人を大量殺戮するわけにはいかないからである。
 バイデンは、「テロリスト」の攻撃からイスラエルの「自衛権を全面支持する」と言って、ガザへの攻撃を容認した。(その後EUのデア・ライエンも追随して、同様のことを公言した。)それは、イスラエル軍がパレスチナ人を大量殺戮しても、ハマスという「テロリスト」がパレスチナ人の間に紛れこんでいるので、一般の民間人を何人殺そうと、ガザへの攻撃はイスラエルの「自衛権」であり、正義という理屈である。民間人を1400人殺害し、100人以上を拘束したことで「テロリスト」というのなら、子どもを4000千人を含むパレスチナ人を殺害したイスラエルも「テロリスト」国家だと考えるのが合理的だが、バイデンにはそういった正常で理性的な論理は通用しない。なぜなら、間違っていると分かっていてもやめられないアメリカの戦争依存症が、アメリカの大統領として、理性を働かせないように作用するからである。
 
軍事優先国家としてのアメリカ
 1970年以降のアメリカの外交政策に大きく影響したネオコンの代表的論客であるロバート・ケーガンは、文化や政策的魅力によって交流を推進する国家の「ソフトパワーには限界があり、」軍事力を背景とする「ハードパワーを無視すれば世界を見誤る」として、国際問題の解決に軍事力を優先することを強調した。2001年以降のブッシュ政権は、ネオコンのチェイニーやウォルフォウィッツを起用し、明らかな誤情報によってイラク戦争を開始したが、国際紛争の解決に対する軍事力優先志向が如実に表れている。
 実際には、その軍事力優先志向は、アメリカ社会構造自体に染みついていると言っていい。世界最強の軍隊を持つアメリカの軍事費は、ストックホルム国際平和研究所SIPRIによれば、2022年で8760億ドルでGDPの3.5%に相当し、世界中の軍事費の39%を占める。2位の中国は、2910億ドルでGDP比1.6%であり、アメリカの軍事力は群を抜いている。
 また、アメリカの商取引での武器輸出額は、世銀データによれば、2022年145億ドルで世界1位であり、2位のフランスの30億ドルを大きく上回っている。ここには、例えばウクライナへの兵器供与などの軍事支援は含まれておらず、それらは年間数千億ドルにもなる。
 
 アメリカは第二次世界大戦後、圧倒的に数多くの世界中の戦争に関わっている。それは朝鮮戦争、ベトナム戦争を始め、枚挙にいとまがない。それに伴って軍事産業だけは、他の産業の衰退とは逆に、最強・最大の繁栄を誇っている。それは、雇用を軍事産業が保証し、その増大を図る「軍事ケインズ主義」と呼ばれる社会構造を形成している。
 ロシアのウクライナ侵略戦争は、ウクライナへの軍事支援で、アメリカの軍事産業は空前の利益を得ている。戦争開始当初の2022年3月には、和平の兆しがあり、ゼレンシキー政権はロシアとの交渉に前向きだったという報道がなされている。そしてそれに強く反対したのは、バイデン政権だったという報道もなされている。
  ロシア・ウクライナ戦争は、ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官が英誌エコノミストに、ロシア側に有利な「膠着状態にある」と正直に認めたように、実際は「ウクライナは勝てない」状況である。ゼレンスキーがいくら叱咤激励しても、ウクライナ兵の死体の山はうず高くなり、これまでに徴兵逃れのためにウクライナから逃亡した成人男性は2万人を超える(仏公共放送フランス2)。ザルジニーが言うように、「兵器はあっても人間も弾も足りない」状況で、ウクライナ人の死傷者だけが増えていくのが現状である。
 それでも、西側、特にバイデン政権は、戦争続行の意思を変えず、さらなる軍事支援を強化しようとしている。それは、ロシア側だけでなく、アメリカの軍事産業にとっても、「有利」であることは明らかである。
 要するに、アメリカの社会構造そのものが、軍事力優先、いつでも戦争ができる国、同盟国への最大軍事支援国と化しているのである。
 
アメリカのイスラエルへの軍事支援
 アメリカはイスラエルの建国以来、これまでで1580憶ドルの軍事・財政支援をししている(NHK10/30)が、2009年以降はすべて軍事支援であり、今年度は38億ドルである(BBC10/25)。さらに現在の紛争後10月に、バイデンは143億ドルの追加軍事支援予算を計上している。このことは、2022年のイスラエルの軍事費は230億ドル(SIPRI)であるので、またそのようなイスラエル支援をしている国は他にはなく、アメリカの軍事支援がかなりの割合を占めていることを表している。
 実際のイスラエルの軍がガザを攻撃している兵器は、今回の空爆で使用されている戦闘機も、精密誘導兵器のほとんども 、イスラエルの防空システム「アイアンドーム」が使う迎撃ミサイルの一部も、やはりアメリカ製である(BBC10/25)。言い換えれば、アメリカの軍事支援がなければ、イスラエルはガザへの攻撃、大量殺戮はできないのである

アメリカの戦争依存症が引き起こす大量殺戮
 イスラエル対パレスチナの戦争は、今回始まったわけではない。国連人道問題調整事務所OCHAによれば、2008年から2023年9月までで、紛争によるパレスチナ人の死者は6621人にのぼり、その内、イスラエルの空爆による死者は3222人である。それに対し、同時期のイスラエル人の死者は311人である。特に、2014年のイスラエル軍のガザ侵攻時には、パレスチナ人は2329人が死亡している。

 バイデンは当初、自衛の名のもとのに大量殺戮を行うイスラエルへの全面支持を公言していたが、人道支援や一時停戦を口にし始めた。イスラエルの攻撃に、世界中で即時停戦の世論が巻き起こっている。アメリカ内部でも特に若年層が「Ceasefire Now 」「No Vote」(即時停戦 大統領選でバイデンには投票するな)というデモが続出し、アメリカ国務省内部でも100人を超える職員がバイデンの外交方針に反対の書簡を送るなど、イスラエル軍の攻撃に反対する世論が大きくなったためである。
 バイデンは、人道を口にするが、戦争犯罪とも言える大量殺戮はイスラエルの攻撃が引き起こしているのであり、その攻撃を「自衛」だからと支持する行為は、大量殺戮を支持することとまったく同じことである。それは、1+1=2と同じくらい誰でも理解できる理屈である。人道を口にするなら、イスラエル軍の攻撃をやめさせればいいのである。そして、アメリカの軍事支援がなければ、イスラエル軍は、圧倒な軍事力によるガザ攻撃ができないのだから、バイデンはやめさせることは可能だ。そうしないのは、やはり、アメリカ政府が戦争依存症に侵されており、軍事力優先志向から逃れられないからである。それ以外に説明がつく合理的な理由は見当たらない。
 
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