夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

オミクロン株 ワクチン供給を自国ファーストにしたつけがまわってきた

2021-12-14 11:17:05 | 政治

 
 世界中が、オミクロン株に怯えている。日本でも12月13日現在で17名の感染が確認されたが、特に欧米、中でも英国は11月27日に初めて確認された後急増し、12月13日には、1日で1576名が確認され、累計で4713名となってい る。また、ジョンソン首相はオミクロン株による1名の死者があったとも公表した。ロンドン大学の研究チームは11日、「来年1月にオミクロン株による大きな感染の波に直面することになる 」という見通しを明らかにし、感染対策を強化しなければ、「来年4月末までに2万5000人~7万5000人がオミクロン株で死亡する可能性がある」とまで警告している。
 英国でのオミクロン株感染拡大が早いのは、英国がロンドン空港を中心に、この新型変異株が発見された南アやアフリカ諸国との結びつきが強く、入出国が多いからだと考えられるが、イスラエルと並んで英国が、自国民へのワクチン接種が最も早い国だったのは、まさに、自国ファーストのつけがまわってきたという言葉がぴったりと当てはまる。
 WHOは2020年、ワクチン開発が進んだ頃から、世界の公平なワクチン供給を主張してきた。それは、ワクチン供給能力のある先進国だけで接種が進んでも、途上国で接種が遅れれば、途上国での感染が長引き、そこで変異株の出現が起こる可能性が高くなるからでもある。南アのワクチン2回完了率は12月10日で26%、その周辺国はさらに遅く、アフリカ全土では3.6%に過ぎない。
 南アで初めてオミクロン株が確認されたが、変異株が南アで出現したという意味ではなく、周辺国よりも比較的医療体制が整っているので、南アで発見されたということである。アフリカの中央、南部は医療体制が脆弱なので、COVID-19自体の感染状況が正確には把握されていないのである。
 主に途上国へのワクチン供給体制は、国連主導のCOVAXファシリティがあるが、2021年10月の段階では、供給量は3億回分に過ぎない。計画では、当初2021年中に20億回分を目標としていたが、14億回分に下方修正せざるを得なくなった。調達の見通しが悪く、その下方修正した目標も実行できるかどうか分からない状況である。
 途上国へのワクチン供給は、中国が早く、2021年6月の段階で「習近平によれば世界に10億回分を供給した」(CNN7月13日)という。それに対して、西側先進国は「ワクチン外交」と非難し、慌てて6月のG7サミットで「途上国に対する新型コロナウイルスワクチン10億回分の寄付を誓約 」(ロイター6月11日)したが、どこまで実行されているかどうかは不明である。
 
 欧米の接種率の鈍化と在庫過剰
 欧米は自国民へのワクチン供給は早く、英国などは2020年12月8日に開始している。7月3日には、2回目接種者は全人口の50%に達したが、その後は接種率は上がらず、7月から12月までの6ヶ月間で20%上昇したに過ぎない。アメリカも4月22日に同30%に達してから接種率は鈍化し、50%が3か月後の7月20日、12月になっても60%に過ぎない。英国もアメリカもワクチン製造国であり、報道されていないが、製造量、国の調達量は、その時点で大幅に過剰になったと推測される。バイデン大統領は、6月9日に「5億回分を約100カ国に提供する方針を明らかにし、2021年中に2億回分、残りは2022年に提供する」(CNN6月11日)としたが、これもどこまで実行されているかは不明である。
 いずれしても、自国民への接種には熱意があったが、他国への供給は積極的に行ったとは言えない。中国にしても、その供給は、アジア、南米の外交関係の友好的な国に限られ、アフリカ諸国へは、極めて少量しか供給していない。だから、7月にWHOのテドロス事務局長は、欧米に3回目接種より途上国供給を優先させるよう呼びかげざるを得なかったのである。
 
 結局のところ、WHOの警告どおり、ワクチン供給を自国ファーストにしたつけが、オミクロン株という変異種によって、世界中にまわってきたのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする