楽しいブログ生活

日々感じた心の軌跡と手作りの品々のコレクション

谷間の神

2016-11-09 22:01:11 | 


今月の課題図書が「岡田みゆき」の「谷間の神」。O氏がどういう経緯で課題図書に決めたのか分からないけど、本が手に入らない。
調べると1961年に創刊された徳島の作家の同人誌「暖流」第一号に掲載された作品で、県立図書館で所蔵が確認できたものの、貸し出し禁止の代物。
仕方がないので、図書館で読んで来ましたが、手元に読み直しの出来る本がない上、記憶力のすさまじい減退でまともな感想など書けるはずもありません。かろうじて登場人物の名前だけはメモしてきたので、思い返しながら、何とかあらすじだけでも少しまとめたいと思います。





上は掲載の一頁目と著者影です。上に写っている方が岡田みゆきさん。写真で見る限り、モダンな雰囲気を持つ明るい美人という印象です。
この号の近況報告によると教師で主婦で作家という三足のわらじをはいていたようです。

さて、あらすじはといいますと

谷間を散策していた栄子は村の少年に出会うが、栄子を見た少年は悲鳴をあげて逃げて行く。
まるで恐ろしいものを見たような少年の反応にいぶかしい思いを抱きながらも、いや、あるいはそれは・・・と栄子は考える。

育った村ではいつも大切にされ、何事にも群を抽んでて人々に讃嘆されていた栄子は、しかし、町に出ると、その自尊心は見事に打ち砕かれ、劣等感と孤独にさいなまれる。
しかし、級友の体操選手である、田上敬子に憧れて、自分の意識を彼女にそっくり乗せて、その躍動する身体すらも共有するというひそかな楽しみを発見し、自分を解放するすべを得る。
そんなある日、自分の足の痛みが、シンクロしていた田上敬子に競技を誤らせるという事件が起きる。
単なる偶然なのか、自分の所為なのかは分からないが、いずれにしてもシンクロの事実を知っているのは自分のみ、他人が栄子と関連付けて考える筈もなかった。

失意の栄子は村に戻る。逃げた少年のことを胸で吟味しながら、家路へ向かう栄子は幼なじみ「静子」の兄、牛尾謙一に会う。
何かと心頼りにしている謙一に、自分の気持ちを聞いてもらいたい栄子だったが、謙一からは「“薬売り”に会ったか?」と問われる。
その薬売りとは、某日、油断していた栄子に思いがけず手をかけようとして来た男で、今、病に伏しているという。

「わたしの所為?」「そんな訳ないだろ」「それより、国行貞男と結婚するのか?」「町の人間は嫌いや」
そんな会話をしながら、栄子は謙一は信用できる人間だという思いを強くする。

しかし、誘われた集会に参加してみようと会場に近付いた栄子は、切れ切れに聞こえてくる、栄子を裏切っているとしか思えない謙一の言葉に衝撃を受ける。怒りに我を忘れる栄子。

後日、謙一の死体が谷で発見される。
驚き、悲しみに打ちひしがれた栄子はふらふらと謙一の家へと足を向けるが、家の窓には謙一の妹、静子の姿が。
そして静子はそっくり栄子となって栄子の声を発し、栄子の物語を語っているのだった。

私は「イヌガミ」なのだと確信する栄子。
家は山持ちで、亡くなった父親は医者。人から尊敬される条件は備えており、表面上は祀り上げられていた谷間の神様は、実はずっとずっと恐れられてきた忌まわしいイヌガミの家系の人間だったのだ。

村を出る決心をした栄子に物陰から石つぶてが飛んでくる。
そのひとつは栄子に当たり、血がにじむ。
栄子はやっと開放され、自分を取り戻した気持ちになるのだった。

コメント
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