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日々感じた心の軌跡と手作りの品々のコレクション

海野十三の「深夜の市長」

2018-03-24 23:55:05 | 
2月はお休みだった読書会。課題図書は山村美紗の「鳥獣の寺」でしたが、ここへはわたくしはお決まりの海野の作品の調査票を粛々と。


 初出 「新青年」博文館 1936(昭和11)年2月~6月

 収録本 「海野十三全集 第3巻 深夜の市長」三一書房
    1988(昭和63)年6月30日第1版第1刷


 時代設定 作品発表と同時代程度

 品舞台 昭和初期の銀座かいわい

 登場人物
 ・深夜の市長 
 ・黄谷青二こと浅間信十郎 
 ・速水輪太郎  
 ・市会議員の動坂三郎 
 ・動坂の部下、四ツ木鶴吉  
 ・鶴吉の妹マスミと千代子 
 ・T市長の男爵高屋清人 
 ・黒河内警視総監  
 ・丘田お照と娘の絹坊

あらすじ

深夜の街を散歩するのが趣味だった司法官の浅間信十郎は、ある夜殺人事件に遭遇する。
逃げた犯人たちの残した遺留品を拾った浅間は、あらぬ嫌疑を避けるため、駆けつけた警官から逃れようとした際に、深夜の市長と呼ばれる謎の老人に助けられる。

拾った遺留品をみてみると、強力な磁力のせいで密着して離れない三枚のニッケル貨幣と遅れて時を刻む懐中時計である。浅間は深夜の市長に盟友の速水輪太郎に懐中時計を調べさせるから彼の元へ時計を届けるよう指示され、また、お照という女への伝言も頼まれる。

その頃、市議会では動坂三郎の権勢強く市長の高屋清人を失脚させる陰謀の動きがあったが、過日動坂の部下の四ツ木鶴吉が殺されたことが明るみに出、犯人は「深夜の市長」だという噂が流れる。

みどころ

冒頭の、まだ眠らぬ都市が出現する以前の深夜の街の描写はノスタルジックでメルヘンっぽくもあり、闇が内包する畏れや不可思議なロマンを感じさせて詩的である。物語が動き出すと登場人物がそこそこ多く、男女の絡みも盛り込まれ、関係性が事件の鍵となって行くところが推理小説的といえる。


これは割りと長いお話だったので、読み応えがないことはなかったんですが、今さらのように、海野のストーリー展開というのは作者のご都合主義がまかり通っているものなので、毎度突っ込みドコロが満載です。
人物描写に至っては、まるで記号が散りばめられているかのようなイメージで、登場人物に感情移入してしまうなどということはありえません。基本的に(毎度言ってるかもしれないが)ジュブナイルの域を出ないんですね。
そして、決定的なのが時代。古臭い過去のあくた、あるいはあぶくに見られかねない宿命を感じます。
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