【連載】腹ふくるるわざ⑨
私が予測した陽性者数と実績がほぼ合致
桑原玉樹(まちづくり家)
当ブログに「藤井聡京大教授がコロナ報道に喝!」を書いたのは、約1カ月前の5月1日のことである。この記事では、その後の2カ月間に大阪府の新型コロナ陽性者数(感染者数)がどのように推移するかを予測した。
記事の最後に「しかし、事態が予測のように進むか、ちょっと心配だなー」と記載したのだが…。実際はどうなったのか。
予測が当たった!
1カ月前のグラフにその後の実績を加えたのが次のグラフ(図1)だ。自分で言うのもはばかられるが、ほぼ合致しているではないか。
▲図1
緑の線が、5月1日に私が予測したものである。茶色の線で示した5月分の実績と比べると。実績予測より少し多い日があるものの、概ね合致していると言っていいだろう。
6月も予測のように進んで、6月末には100人以下(グラフ中N)になると期待したい。
減少は緊急事態宣言の効果ではない!
マスメディアは、「緊急事態宣言で人流が減り、そのために新規感染者数が減少した」と言うに違いない。しかし、5月1日にも書いたが、それは違う。
新規陽性者数増加率は3月27日をピーク(D)に下がり始めているのだ。ここからすでに感染は収束に向かっているというのが藤井教授の主張だった。D→Eの間の増加率は1.9→1.0なのである。
新規陽性者数は増えているものの、感染状況は収束に向かい、増加率が1を切った5月1日(E)からは新規陽性者数も減少に向かっている(L→M)のだ。
つまり、収束に向かい始めたのは3月下旬からである。決して第3回目の緊急事態宣言の出た4月25日からではない。
K→Lの期間は新規感染者数は増え続けるので、それ見たことか、とマスメディアは盛んに煽る。が、この時期はすでに感染状況は収束に向かっているのである。
増加率に目を向けろ!
では増加率を見てみよう。第2回目の緊急事態宣言(1月14日~2月7日)が終わった2月上旬から上昇に向かっている(B→D)。増加率が1を超える(C)までは新規陽性者数は減少しているが、危険を察知しなくてはならないのは本当はこの時期だ。やがて増加率は1を超え、新規感染者数は増加する。
医療体制の強化はどうした?
専門家こそ、増加率を元に判断しなくてはならない。増加率が上昇に向かい始めたが、まだ1を越えない時期(B→C)に注目してもらいたい。この時期のは減少していることがわかるだろう。
新規陽性者数が少ない時期にこそ、医療体制を強化すべきである。そのために専門家が活躍すべきではないか。
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は1年前、専門家会議の副座長だった。そのとき、次の図2を示して新型コロナウィルスには2つの対策があると説明している。
▲図2
図2の黄緑の矢印で示されるように「患者の増加のスピードを抑える」「流行のピークを下げる」ために緊急事態宣言が出され、国民に我慢を強いたのだろう。しかし、水色の矢印で示される「医療対応の体制強化」が一向に進んでいないのは、いかがなものか。
テレビで国民に「医療が逼迫するので人流の抑制を」と呼びかける行政や医療界は、自らの責任と義務をどのように考えるのだろうか。ワクチンに対策の全てを委ね、他の対策は放棄したのだろうか。
【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】
昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。