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住めば都か  岩崎邦子の「日々悠々」㊿

2019-09-20 13:21:38 | 【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」

【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」㊿

住めば都か 

                 

 

 9月9日の未明から襲って千葉県に上陸した台風15号だが、今でも甚大な被害の様子が連日報じられている。その第一は停電と断水であるが、復旧の見通しに大きな誤算があり、残暑も続いて高齢者や病人には深刻なダメージを強いられた。逐次分かってきた強風の被害、住民には苦悩の続く日々となっている。

 台風と聞くだけで雨量の多さで川の氾濫や崖崩れなどを想定していたが、今回はとにかく猛威を振るった強風の怖さであった。軒並みに電柱が倒れていることで、停電の復旧が大幅に遅れている。災害が起きると、いつも「想定外の事態だった」とされてしまう。

 テレビでの天気予報は、どの局も日に何回もされるので、台風のシーズンになると、最近は特に思うことがあった。九州をはじめ、西日本には台風の他にも、尋常ではない雨の降り方と頻度に驚くと共に気の毒で仕方がない。

 放送では「身の安全を第一に」などと繰り返されることがあり、その深刻さにも脅威を感じる。警報が出る地域は、山林や崖沿い、大きな川が近くにある低地とも思われるが、不遜ながら、その地に居を構えていることに、不安はないのだろうか。長く居住している人にとっては、その地から離れられない大きな理由もあるのだろう。やはり私たちが知らないだけで「住めば都」で、良い点もいっぱいあるに違いないのだが……。

 そういえば、「住めば都」になった例が私にもあった。会社勤めの夫が転勤を命じられれば、家族は有無を言わず従うことになる。夫の最初の転勤先は札幌であった。まず、頭に浮かんだのは「寒さ」と「雪」。長男も小さかったので、冬になっての外遊びが出来ないだろうと危惧した。借りた家は幸いにも造りが平屋で、部屋の仕切りは壁になっていなかった。

大きな石油ストーブがリビングの真ん中にデンとあったことと、二重窓になっていたので、冬になっても家の中は、内地(本州のこと)の市川市に住んでいた時より遥かに暖かった。ふすまを取り払ってしまうと、大きな一つの部屋になる。外遊びが出来なくても、子供はおもちゃの車で家中を乗り回し、滑り台などをして近所の子供たちとも、元気に遊ぶことが出来た。

 マーケットに行けば、甘エビの安さやトウモロコシの甘さに驚き、ナマコなど今までに食したことのない食べ物にも、出会うことができた。地元の人にも親切にされて、慣れない冬支度の中で大根などは土中に埋める保存を教わった。里芋にもそれをして掘り出してみると、溶けたようになってしまい、大笑いをされた苦い経験もある。ニシン漬けを教わったりもした。

 長女も生まれたので私は子育てが中心であったが、夫はゴルフやスキーなどを大いに楽しむこともできた。春の訪れは遅いが5月に入ると、どこの庭にも一斉に花々が咲き競い、目を見張る見事さであった。

 もう一つ大きな環境の変化を味わうことになったのが、ロスアンゼルスでの生活である。言葉という大きな壁もあった。でも、慣れてしまえば、「もう、ずっとここで住みたい」と思えるほど。まさに「住めば都」である。

 これらの地に住んでいた時は、若かったことや、大きな災害には遭遇しなかったことも影響しているのかも。所帯を持ってからの今までの生活を振り返ってみると、白井市の生活が一番長いことに、改めて思いがいたる。駅にも近く、道路の広いことは最高だ。464号沿いには、大型商業施設が沢山あって買い物も便利である。周辺には大きな山も川もなく、海からも遠いので、いわゆる風光明媚な地とは言えないが、この度の千葉県が被った台風被害からも逃れることが出来て快適に過ごせる地であることを実感する。

 もちろん、自然環境が優れているのも重要な要素だが、「住めば都」のためには、周りとの人間関係の良し悪しが大きく影響するようだ。集合住宅に住んでいると、上下階の騒音問題や住民間のちょっとしたトラブルが起こりがちだ。幸いなことに、私が住む集合住宅では、そんな困った問題が発生することはほとんど無い。それだけでも、幸せと思わなくちゃ。


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