白井健康元気村

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ゴルフ馬鹿 岩崎邦子の「日々悠々」(98)

2020-09-04 05:11:01 | 【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」

【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」(98

ゴルフ馬鹿 

 

 

 窓から入る涼しい風が部屋の中を吹き抜けていった。8月末の夕刻、翌日はもう9月。月末になると、翌月の夫のゴルフ予定や私が出かける日をカレンダーに書き込むことにしている。お互いに車を使用する日の調整のためだ。

 だが、この夏の酷暑と、コロナ騒ぎである。私が参加している会や、行事の取り止めが増えたので、以前に比べると、私が車を必要とする日も、外出する日も少なくなった。夫は暑さに強いのか、はたまたゴルフ好きだからなのか、プレーのお誘いには極力参加している。他はゴルフ練習場に通ったり、近隣のウォーキングにも出かけたりしている。

 私たちが今の住まいである白井に移ったのは、30年程前のことだ。その頃の夫は現役だったので、新しい住まいは、まずは都心に通うための駅に近いことが、一番の条件である。「ゴルフ場銀座」とも言われるほど、白井は近場にいくつものゴルフ場があるし、ホームコースにしている鎌ケ谷カントリーにも15分位で行くことが出来るので、夫は上機嫌であった。

 市川に住んでいた頃からの延長で、休みの日になると、友人たちとのプレーに参加することもあったが、ふらりと出かけて行き、居合わせたグループに入ってプレーをすることも。そんなことが功を奏したのか、ホールインワンも達成することが出来、鎌ケ谷CCのゴルフ場コースに記念樹の寄贈もした。

 夫は貧弱ともいえる体つきながら、気さくな性格だからか、初めての人にも警戒もされることもなく、むしろ歓迎される形で、ゴルフを楽しんでいた。ゴルフ上達のために、ハンディキャップの上級者がエントリーする「鎌ケ谷カントリー理事長杯」に参加し、運よく準優勝を得ることが出来た。

 そんなわけで、ゴルフ熱はますます過熱したようだ。その理事長杯には翌々年にも参加したが、3人でのプレーオフに。猛者ともいえる強豪の人たちとの対決で、少しも優位な所はない。気負わずにプレーをしていると、なぜか周りの人の応援も得られたようである。

 その結果、理事長杯を獲得してしまった。55歳になったばかりの夫は、「一番名誉ある賞なのだ」と、その喜びを爆発させる。が、当時の私は、「ゴルフウィドー」だったこともあって、淡々とした態度でしか接することができなかった。

 ところが、夫の「ゴルフ命」の日々も、60代半ばに危機を迎える。腰痛が酷くなったのだ。治療のために、良いと言われることはやり尽くしたとも言えるが、これぞと言った療法もなく、ゴルフを楽しむことなどは全く出来なくなってしまったのである。

 そんな夫が現役を退いたのは68歳のときだった。仕事のストレスから解放されたことと、パークゴルフに出会ったことがよかったのだろう。徐々に元気を取り戻し、再度ゴルフが楽しめるようになったのだ。そんな折、夫は「名球会」に入会する。と言っても、プロ野球の「名球会」ではない。「ゴルフを紳士の競技としている会」のことである。

 ルールやマナーをかなり厳しく言及する会でもあり、以前の職業や地位にとらわれる人もいないことで、居心地も良いようだ。そこで知り合った人たちの他の会にも、度々誘われるようになり、ゴルフ熱が再燃する。ホームコースではなかったが念願のエージシュートを、80歳のときに77のスコアで達成した。

 そのコースは、夫と相性が良いのか、その後もエージシュートを4回も達成する。プライベートではなく、コンペの参加であるので、ゴルフ場からその都度「エージシュート証明書」が出た。それらをリビングに飾って嬉しそうな夫に、私は容赦しない。

「ホームコースでも達成しないとね!」

 と嫌味を一言。

 ま、ゴルフをたしなむ人の大半が、それはどんなに社会的地位があっても、ノーベル賞を得るような方も、果てはゴルフのプロでさえ、エージシュート獲得は、夢であり喜びであるらしい。

 夫のゴルフ仲間は、一種のライバルでもあるので切磋琢磨し合う。刺激や、「なるほど」と思う教訓を得たり、一回りも若くて、前途有望な人たちまで知り合えたりと、同じ趣味を持つ人のとの交流に喜びを感じているようだ。間もなく83歳にもなるが、そんなことで今年の酷暑の日々も元気にしていられるのだろう。

 暑さに弱い私である。パークゴルフが体に良いと言っていても、特に梅雨明けが宣言されたあとの何日かは、午前は元気にプレーが出来ても、午後の部になると、ついつい体が悲鳴を上げる。そんな状態が例年続く。

 暑さ対策として首を冷やし、水分補給もするのだが、息づかいも苦しくなる。水の摂りすぎでお腹が一杯になるのだが、口の中はカラカラに乾いた状態で、顔も真っ赤になってしまう。一緒にプレーをする人に迷惑はかけられないので、平静を装いながらも、やっと歩くといった有様だ。

 毎年夏になると、一度はこんな経験をしてきたが、猛烈に暑かった今年の8月、テレビの天気予報の際に言われる「危険な暑さ」が報じられた日には、パークゴルフ参加も遠慮というか、断念した方が良いとの思いになった。

 それでも、私の運動不足はやはり気になる。歩くことが良いと言われていても、アスファルトの道を歩くのは嫌。やはり芝生の上で球を追いかけるから私は歩けるのだ。私にとって、パークゴルフが一番の運動不足解消法である。プレー時間もコース選びも、自分たちの自由になる日を選び、稲荷弁当持参で夫と二人で、週一回は出かけることにしている。

 酷暑の日々、フレイルも気にしながら、冷房のもとでテレビと向き合っていた日が続いた。あえて私の成果を言うなら、クッションカバーをパッチワーク仕様で5枚仕上げたこと、それに小花を寄せて作るアクセサリーも幾つか作ったことか。

 夫の「ゴルフ馬鹿」ぶりも、大いに発揮したらいい。元気の証である。まだ蒸し蒸しとした暑さは残っているが、夏を惜しむセミの鳴き声の中から、ひぐらしの「カナカナ」も。やがて秋の虫たちの鳴き声も聞こえることだろう。


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