【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」(97)
梅雨明けが遅かった。8月に入ってから酷暑の日が、来る日も来る日も続く。テレビを見ると、熱中症の人らしいが、救急車で運ばれている。今年は新型コロナウィルス感染症の疑いもあり、患者受け入れのための医療現場が混迷しているようだ。
そんな中、全国に先駆けて「熱中症警戒アラート」が関東甲信で運用が始まった。熱中症の予防のため、今年から気象庁と環境省が発表するようになった情報だ。当初、1シーズンに7日間くらいの発表する予定だったが、8月10日から22日までで、すでに12日間も発表されている。
なんと40℃を超える猛暑に襲われた地域もあった。その原因として、地球温暖化・都市化が考えられる。さらに太平洋高気圧にチベット高気圧が張り出すダブル高気圧や、風のフェーン現象といった複数の影響もあるだろう。
関東各地で、局地的に大雨が降ったところも。でも、白井健康元気村の人が多く所属している農業クラブの畑には、恵みの雨が思ったほど降らなかった。白井市の辺りはカラカラ状態のままである。気象の難しさは、私にはなかなか理解出来ない。
さて、今年はマスクの着用や、外出自粛が熱中症リスクを高め、死者も昨年より大きく上回っているという。高齢者は、のどの渇きに鈍感になりがちな高齢者は要注意だ。水分不足による脱水症状で、血液がドロドロ状態に。こうなると、熱中症だけでなく、脳梗塞も心筋梗塞も心配される。
体温を調節する機能が衰えてきた高齢者の場合、どうしても気温を感知する皮膚や中枢神経がうまく働かない。熱帯夜が続けば、水分補給と快適な睡眠が絶対に必要だ。熱中症で亡くなった人を調べてみると、8割以上にエアコンがないか、あっても使用していなかった。
こうして、水分の足りないまま、夜間に命を落とす事態になるという。でも、熱中症アラートが出されれば、特に一人暮らしや、高齢者に向けての注意喚起ともいえる。冷房は体に悪いという、かつての固定観念は、もはや通用しない。
私より3歳上のSさんのことを思い出した。夏になると、彼女は冷房が嫌いというか、そんなものに頼らなくても平気で過ごせるのだと、暑さに弱い私に自慢げに言っていた。反対に冬の寒さには耐えられないのか、異常なほど何枚も重ね着をし、「ホカロン」まで背中に貼り付けていた。ここ何年か会うチャンスもなく、音沙汰も聞かない。今年の酷暑を乗り切っていることを祈る。
隣に住む息子がひょっこりと顔を出し、「熱中症に気を付けて」「早めに冷房を入れろよ」。それだけ言うと、早々に引き上げて行った。息子は普段から、万が一のコロナの家庭内感染にも気を遣ってくれている。不要不急の外出自粛と酷暑が続く。息子のアドバイスを素直に聞くことに。冷房をつけ、テレビの前に陣取って針を持つ日が増えた。
ところで、日本テレビのチャリティー番組「24時間テレビ 愛は地球を救う」は、すっかり夏の恒例行事となったようである。今年はコロナ騒ぎで果たして実施されるかが話題になっていた。「チャリティを中止には出来ない」というのがテレビ局側の強い意向なのだが、その出演者には、売名行為・偽善行為だとの批判も。
この番組の中からコロナ感染者が出ることは、何としても防がなければならず、番組作りには、大変な苦労も垣間見られたが、8月22日から23日にかけて、「動く」(離れていても、心を通わせて動きだそう)がテーマで「24時間テレビ」が放映された。
地震や台風、予想をはるかに超える豪雨などの自然災害に見舞われた人たち、思いがけない事故に遭遇する人、大きな病に侵されてしまう人、当たり前の日常が得られなかった人たちが、何と多いことか。それらのことに目を向け、心を動かし関心を持つことを、問いかけているのだろう
マラソンの高橋尚子さんや、シンガーソングライターのさだまさしさんを始め、その他の出演者たちの、「何もしないことより、チャリティ活動として動くこと、行動することが大切」に説得力を感じた。歌の中の言葉からも、感謝・励まし・元気の素が汲み取れる。それが人の心に響いてくるのかも。
冷房を入れたまま朝を迎える日が続いていた。が、朝方になって冷房を止めて窓を開けると、レースのカーテンが少し揺れ、すーっと爽やかな風が……。まだ残暑が続く日々であっても、東の空に昇る太陽も、少しずつ遅くなって、季節は移ろいつつある。