■はじめに
戦後、わが国が着々と創り上げてきた社会保障制度。
日本の社会保障制度は、憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
「国は、全ての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
を具現化したものと言われている。
社会保障制度のうち、医療・年金・労災・失業の4分野は広義の意味で「社会保険制度」に属し、
健康保険法、厚生年金保険法等、労働者災害補償保険法、雇用保険法などの法律に基づいて運営されている。
しかし、今後はこうした社会保険分野に、国民背番号であるマイナンバー管理の浸食が進み、
保険制度への加入手続き等において「マイナンバーを書かない人は社会保障の恩恵を受けられない」かもしれない。
■雇用保険の加入手続き等でマイナンバーを書かないと加入できない
平成30年5月1日から、雇用保険では、マイナンバーを書かないと、資格取得届等が受理されないこととなった。
マイナンバーを書かないと、失業保険に加入することができない。
憲法25条が謳う国の社会保障制度のうち、社会保険分野(年金・医療、労災・失業)の一角に亀裂が入った。
■異常に頻繁なマイナンバー記載の強制
雇用保険において、被保険者の雇用保険記録は、雇用保険被保険者証に記載されている「雇用保険番号」で管理されている。
しかし、今後は、会社は、従業員の雇用保険資格取得届などの手続きの際に、雇用保険番号は記載しなくても、
マイナンバーを必ず記載しなければ加入はできないこととなった。
マイナンバーが必要な手続きは以下のものである。
1、資格取得届(転職する都度、各会社は毎回書かなければならない)
2、資格喪失届(退職する都度、各会社は毎回書かなければならない)
3、離職票を提出し失業給付を受給する時(失業の認定を受ける時、本人が書かなければならない)
4、高年齢雇用継続給付初回登録・申請時(2カ月に1回ずつ毎回最大5年間書かなければならない)
5、育児休業給付初回登録・申請時(2カ月に1回ずつ毎回最大2歳到達まで書かなければならない)
6、介護休業給付申請時
上記届出(3を除く)をする都度、会社は、マイナンバーを記載した各届出書を毎回職安に持参する。
もしマイナンバーを記載した書類を電車の網棚の上などに置き忘れた場合は、会社は膨大な損害賠償を背負い込み、
網棚に置き忘れてしまった社員の首は飛ぶ。
会社の総務人事部は、重い個人情報が満載した番号のために、気の抜けない事務処理が永遠に続く。
ほとんど使わないマイナンバーのためにーー。
■雇用保険でマイナンバーの利用が見込めるものは極わずか
雇用保険においてマイナンバーは下記の補足的な場合に利用されるにすぎない。
その効果は、可笑しいぐらいにかなり希少、かつかなり限定的である。
マイナンバーが雇用保険法施行規則の改正により、記載が強制されているのは、次の行政事務に使うためとされている。
(「雇用保険業務取扱要領」「雇用保険業務等における社会保障・税番号への対応に係るQ&A-平成30年5月7日版」)
1、介護休業給付の申請の際に提出する介護家族の続柄を証明するための「住民票」の提出が省略できる。
(編注:ただし、介護家族と同居している場合に限る。同居していない場合は続柄の証明はできないため戸籍謄本の提出が必要である。)
2、会社を解雇等された場合に、国民健康保険加入後の際に、市町村から保険料の減免を受ける際、
解雇等により失業している事実を証するために、市町村の窓口で職安からもらった「受給資格者証」を提示しなくてもよい。
マイナンバーがあれば、自治体が職安に当該事実を照会できる。
(編注:保険料減免の申請の際に本人が市町村でマイナンバーを記載するか受給資格者証を見せれば済む。)
3、生活保護の申請をした場合に、自治体が職安に対して失業保険の受給状況を確認できる。
(編注:生活保護申請の際に、本人が市町村でマイナンバーを記載すれば済む。)
4、60歳以上の人が老齢年金の受給申請をする際、現在では、雇用保険番号を記入するが、
マイナンバーがあれば、雇用保険番号を記入する必要がない。
(編注:雇用保険と年金の併給調整については、年金請求時の雇用保険番号の記載により併給調整がなされている。)
5、失業中に、傷病にかかり30日以上労務不能となった場合は、失業保険に代えて、同額の傷病手当を
受給できるが、この傷病手当を受給中は、健康保険の傷病手当金との併給ができない。
職安が、健康保険の保険者からその人が傷病手当金を受給していないか照会するため、マイナンバーで情報入手する。
(編注:傷病手当の申請時に本人にマイナンバーを記載させれば済む。)
■必要な時に本人からマイナンバーの提供を受ければよい
厚生労働省が公表している上記5点が、雇用保険事務にマイナンバーを使うことの「メリット」とされている。
「編注」に書いたように、いずれも、その時に本人自身がマイナンバーを記載すれば足りることだ。
上記5点のために、会社の人事総務部が危険を犯し、毎回社員のマイナンバーを記載した書類を職安に運ばなければならない。
その保管、その閲覧、その送付、その記載を完璧にこなしながら。
そして、社員が他に転職しても、転職先の会社でも同じように再び資格取得届にマイナンバーを記載して届け出なければ、
雇用保険に加入できない。
異常な雇用保険行政。ばかばかしい雇用保険行政。
一体、マイナンバーを記載していないことをもって資格取得届、資格喪失届を受理しないという強行を
押してもいいのか。社会保障国家としての大義名分が立たない。
職安では、会社が細心の注意を払って記載したマイナンバーは、「目視」により確認後は、即刻黒塗りされて
ファイルされ、倉庫に保管されるだけである。
戦後、わが国が着々と創り上げてきた社会保障制度。
日本の社会保障制度は、憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
「国は、全ての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
を具現化したものと言われている。
社会保障制度のうち、医療・年金・労災・失業の4分野は広義の意味で「社会保険制度」に属し、
健康保険法、厚生年金保険法等、労働者災害補償保険法、雇用保険法などの法律に基づいて運営されている。
しかし、今後はこうした社会保険分野に、国民背番号であるマイナンバー管理の浸食が進み、
保険制度への加入手続き等において「マイナンバーを書かない人は社会保障の恩恵を受けられない」かもしれない。
■雇用保険の加入手続き等でマイナンバーを書かないと加入できない
平成30年5月1日から、雇用保険では、マイナンバーを書かないと、資格取得届等が受理されないこととなった。
マイナンバーを書かないと、失業保険に加入することができない。
憲法25条が謳う国の社会保障制度のうち、社会保険分野(年金・医療、労災・失業)の一角に亀裂が入った。
■異常に頻繁なマイナンバー記載の強制
雇用保険において、被保険者の雇用保険記録は、雇用保険被保険者証に記載されている「雇用保険番号」で管理されている。
しかし、今後は、会社は、従業員の雇用保険資格取得届などの手続きの際に、雇用保険番号は記載しなくても、
マイナンバーを必ず記載しなければ加入はできないこととなった。
マイナンバーが必要な手続きは以下のものである。
1、資格取得届(転職する都度、各会社は毎回書かなければならない)
2、資格喪失届(退職する都度、各会社は毎回書かなければならない)
3、離職票を提出し失業給付を受給する時(失業の認定を受ける時、本人が書かなければならない)
4、高年齢雇用継続給付初回登録・申請時(2カ月に1回ずつ毎回最大5年間書かなければならない)
5、育児休業給付初回登録・申請時(2カ月に1回ずつ毎回最大2歳到達まで書かなければならない)
6、介護休業給付申請時
上記届出(3を除く)をする都度、会社は、マイナンバーを記載した各届出書を毎回職安に持参する。
もしマイナンバーを記載した書類を電車の網棚の上などに置き忘れた場合は、会社は膨大な損害賠償を背負い込み、
網棚に置き忘れてしまった社員の首は飛ぶ。
会社の総務人事部は、重い個人情報が満載した番号のために、気の抜けない事務処理が永遠に続く。
ほとんど使わないマイナンバーのためにーー。
■雇用保険でマイナンバーの利用が見込めるものは極わずか
雇用保険においてマイナンバーは下記の補足的な場合に利用されるにすぎない。
その効果は、可笑しいぐらいにかなり希少、かつかなり限定的である。
マイナンバーが雇用保険法施行規則の改正により、記載が強制されているのは、次の行政事務に使うためとされている。
(「雇用保険業務取扱要領」「雇用保険業務等における社会保障・税番号への対応に係るQ&A-平成30年5月7日版」)
1、介護休業給付の申請の際に提出する介護家族の続柄を証明するための「住民票」の提出が省略できる。
(編注:ただし、介護家族と同居している場合に限る。同居していない場合は続柄の証明はできないため戸籍謄本の提出が必要である。)
2、会社を解雇等された場合に、国民健康保険加入後の際に、市町村から保険料の減免を受ける際、
解雇等により失業している事実を証するために、市町村の窓口で職安からもらった「受給資格者証」を提示しなくてもよい。
マイナンバーがあれば、自治体が職安に当該事実を照会できる。
(編注:保険料減免の申請の際に本人が市町村でマイナンバーを記載するか受給資格者証を見せれば済む。)
3、生活保護の申請をした場合に、自治体が職安に対して失業保険の受給状況を確認できる。
(編注:生活保護申請の際に、本人が市町村でマイナンバーを記載すれば済む。)
4、60歳以上の人が老齢年金の受給申請をする際、現在では、雇用保険番号を記入するが、
マイナンバーがあれば、雇用保険番号を記入する必要がない。
(編注:雇用保険と年金の併給調整については、年金請求時の雇用保険番号の記載により併給調整がなされている。)
5、失業中に、傷病にかかり30日以上労務不能となった場合は、失業保険に代えて、同額の傷病手当を
受給できるが、この傷病手当を受給中は、健康保険の傷病手当金との併給ができない。
職安が、健康保険の保険者からその人が傷病手当金を受給していないか照会するため、マイナンバーで情報入手する。
(編注:傷病手当の申請時に本人にマイナンバーを記載させれば済む。)
■必要な時に本人からマイナンバーの提供を受ければよい
厚生労働省が公表している上記5点が、雇用保険事務にマイナンバーを使うことの「メリット」とされている。
「編注」に書いたように、いずれも、その時に本人自身がマイナンバーを記載すれば足りることだ。
上記5点のために、会社の人事総務部が危険を犯し、毎回社員のマイナンバーを記載した書類を職安に運ばなければならない。
その保管、その閲覧、その送付、その記載を完璧にこなしながら。
そして、社員が他に転職しても、転職先の会社でも同じように再び資格取得届にマイナンバーを記載して届け出なければ、
雇用保険に加入できない。
異常な雇用保険行政。ばかばかしい雇用保険行政。
一体、マイナンバーを記載していないことをもって資格取得届、資格喪失届を受理しないという強行を
押してもいいのか。社会保障国家としての大義名分が立たない。
職安では、会社が細心の注意を払って記載したマイナンバーは、「目視」により確認後は、即刻黒塗りされて
ファイルされ、倉庫に保管されるだけである。