はさみの世界・出張版

三国志(蜀漢中心)の創作小説のブログです。
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臥龍的陣 太陽の章 その56 つながっていく手がかり

2023年02月10日 10時10分34秒 | 英華伝 臥龍的陣 太陽の章
陳到は、斐仁《ひじん》の言葉に、すばやく頭をはたらかせた。
公孫瓚、袁紹、そして劉表。
趙雲の移動とほぼ同じくして移動し、形成された組織が壷中。
壷中はいま、荊州の豪族たちを樊城に集めている。
その壺中は、なぜか孔明を人質にとった。
その理由が、趙雲を捕えるためだという。
罠としりながら、趙雲は孔明を助けるため、襄陽城に戻った。
壷中の要は、潘季鵬《はんきほう》という男。


だめだ、さっぱりわからん。


首を振り、ふと麋竺と嫦娥《じょうが》のほうを見ると、意外なことに、両者とも顔を蒼くして、どころか小刻みに震えている。
嫦娥と目が合うと、意外なことに、涙目になっていた。
そして、陳到の目線からのがれるように、ふいっと目を逸らすのであった。


あきらかに、なにかある。
陳到は、嫦娥に詰め寄る。
「嫦娥どの、貴女には、まだ我らに話をしていないことがあるはずだ。
なぜいまの話を聞いてそのように嘆かれる。
斐仁が言った、潘季鵬とは、何者なのだ? 
なぜ子龍どのが狙われる?」


「潘季鵬とは、袁紹のもとにいた子龍を、公孫瓚のところへ連れて行って、白馬義従に入れた男だ」
嫦娥の代わりに答えたのは、劉備である。
むずかしい顔をして腕を組み、考え込んでいる。
「皆も知っているとおり、公孫瓚はわしの学兄でもあった。
見かけは立派だったのだが、天下の英雄を名乗るには、度量と運がなかった。
わしらにはよくしてくれたのだが。戦況が悪くなってくると、だんだん忠臣をとおざけ、耳に心地よいことばかりいう佞臣を信じるようになった。
そのことが、まだ若かった子龍には不満だったのだよ。
それで、自分の兄貴の葬式を理由に故郷に帰り、そのまま官を辞したのだ」


「いや、待て、兄者。
たしか、その前に、子龍からの相談に乗っていただろう。
たしか潘季鵬のことも話をしていたと思うぞ」
「おお、そうだった、雲長、おまえの記憶力もたいしたものだ。
うむ、思い出したぞ。潘季鵬っていう男は、一見するといかにも善人で、いい兄貴分といった風を装っていたが、見掛け倒しもいいところで、やたらとおのれの考えを、人に押し付けてくる奴だった。


最初は子龍が気に入りで、なにかと面倒をみていたのだ。
けれど子龍もちょうど大人になる頃で、だんだんと潘季鵬の押し付けが嫌になっちまったのだ。
それが気にくわなかったものだから、潘季鵬って男は、子龍にひどい言葉を浴びせて、すっかりしょげさせてしまったのさ。


もちろん、ほかにもいろいろあっただろうが、それがきっかけのひとつになって、結局は、子龍は公孫瓚のもとから去ることになった。
そのあとの潘季鵬のことはよくしらぬが…公孫瓚の城が袁紹に落とされたときに、たしか主君もろとも戦死したのではなかったかな」


劉備のことばを引き継いだのは嫦娥だった。
「いいえ、潘季鵬は生きておりました。
袁紹に捕らわれ、晒し者になっていたところを、お助けしたのが趙子龍どのだったのです。
ところが、潘季鵬は、助けられたことを逆恨みしました。
子龍どのが、おのれを笑いものにして、生き恥をさらさせるために助けたのだと、そう思い込んだのです」
「ひどいな、ものの見事に逆恨みではないか」
劉備が眉間にしわをよせると、嫦娥は深くうなずいた。
「潘季鵬は、貴方がたが知っている者とは、もう別な人間に変わってしまっております。
あれは、狂っているのです」


ふむ、と劉備はうなずき、それから嫦娥のほうに体を向けた。
「嫦娥さんとやら、あんたは、どうやら全部を知っているようだ。
あんたの知っている、壷中についてのことを、ぜんぶ話してくれ」
嫦娥の目は、もはや潤んでいない。
決然とした表情で、劉備と陳到らに顔をに向けると、よどみなく、壷中についての説明をはじめた。
そのあいだ、口を挟むものは、だれもいなかった。




つづく

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みなさま、いかがお過ごしでしょうか、どうぞ滑らないようお気をつけくださいませ。
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