春も間近。
花屋さんの店先では、春を告げる彩とりどりの花達が、その柔らかな美しい姿と清清しい香りで楽しませてくれています。
さて、この花。何だかお分かりですか?
チューリップ。
愛らしい蕾の形の外見がこの花の可愛さですが、花が開くとこのようにまた一味違った表情を見せるのです。
私は、数ある花の中でも、チューリップが一番好きです。
長くくねくねと伸びた茎は、時間によって少しずつ方向を変えます。少しでも明るいところを探して。太陽の光を求めて。
だから、花瓶に活けていても奔放気ままに位置を変える困った奴。ウェディングブーケにでも使おうものならちょっと苦労します。(個人的に、ワイヤー使いはあまり好きでないので・・・)
でも、その自由気ままな動きがまた良いんですよね。
それに花びら。開くと内側の花びらの付け根の色が異なっていて、外見とは違う雰囲気。“中はどんな色?”花が開くのを待って覘くのもひとつの楽しみです♪
花びらは朝になると開き、そして夜にはまた閉じます。
それを幾日も繰り返す内に、やがてだんだん閉じなくなってきて、最後には開ききったままの状態になります。
そして、花びらが1枚、また1枚と落ち、花が終わるのです。
もう10年くらい経つでしょうか。
当時愛していた人ととても辛い別れをした直後、私は誕生日を迎えました。
当日、勤め先の会社に大きな花束が届きました。私宛でした。
差出人の名前はなし。
配達してくださったお花屋さんに聞いても“匿名というご希望でしたので・・・”とはっきり教えてくれませんでした。
でも、本当は名前を聞かなくても、私にはすぐにそれが誰か分かっていました。
私の大好きな色のチューリップを、年齢の数、しかも私がとても好きなお花屋さんから・・・。
20代後半だった私の年の数のチューリップ。
両手を回して抱きしめられるくらいのボリュームでした。
ふんわりとその花束を両手に抱きしめると、切ない香り。
言葉はないけれど、静かにそして深く伝わってくるその人の想い。
少しの涙の後、思い切って彼に電話をかけました。
「どうしたの?え?花束?・・・良かったね~!そんなことをしてくれる人がいて!」
受話器の向こうで明るくとぼけた口調で笑う彼。
お互いに苦しんだ末に選んだ別れだったから、ヨリを戻すことはもうなかったけれど・・・。
頂いた花束は、全ての花の花びらが床に散り敷くまで、ずっとずっと大切に見守りました。
まるで、終わってしまった私達の関係への静かなお弔いのように・・・。
今でもチューリップを見ると、鮮やかにその時の記憶が蘇るのです。