目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

番組こぼれ話もある『日本百名山ひと筆書き』

2016-09-03 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『グレートトラバース 日本百名山ひと筆書き』田中陽希(NHK出版)

電子書店のサイトで、山の日特集と銘打ったラインナップの中にこの本を見つけた。NHKの番組は見ていたが、本になっているとは、まったく知らなかった。番組をまったく知らないという人のために概略を説明しよう。アドベンチャーレーサーとして一部に名前を知られていた田中陽希さんが、2014年に深田久弥の日本百名山を、屋久島の宮之浦岳から北海道の利尻山まで、人力で踏破しようという冒険の旅に出た。総距離7200キロ、4月1日から10月26日までという壮大なものになった。その模様を、NHKの取材班が密着取材し、BSプレミアムで放送したのだ。

さっそく読み始めて、番組を見ているときには、これっぽっちも疑問を感じなかったことが気になった。海を渡るときはカヤックを使用し、それ以外は自らの足で、つまり徒歩で移動する、これを「人力で踏破」としていることだ。プロローグに、徒歩にこだわらなくとも、「人力なら自転車でもいいじゃないか」という友人の言葉が出てくる。たしかにその通りだ。徒歩にこだわるなら、海は泳ぐべきではないか。そんなことをいうと怒られそうだが、理屈からいえば、そうなる。まあ、現実的なところで、海はカヤック、そして陸上は、単純に、より困難な方法=「徒歩」を選んだということなんだろう。

この本で印象に残ったのは、映像で見るよりも、足の怪我が深刻だったということだ。足を見てさすっている陽希さんの痛そうな顔を見るよりも、そのものずばりの「痛い」という表現や行間から伝わってくる情報のほうが、より深刻さが伝わった。結果を知っていると、深刻さが薄まってしまうが、現在進行形の文章は重い。にわか応援団、ファンとの付き合い方の困惑ぶりも、映像以上に伝わってきた。しかしそんなファンの中にはポテチの差し入れをしてくれたり、ご飯をおごってくれたり、宿を提供してくれたり、と思わぬ助っ人になった人もいた。そんな人との出会いのエピソードは、思わずこちらも顔がほころんでしまう。旅の醍醐味のひとつは、やはり人との出会いだよね。

また番組スタッフとの距離の置き方なども書かれていて、なるほどなと思う。撮影隊はいつの間にか同志となり、気にかけるようになったとある。基本は一人でひたすら歩き、登るわけだけれども、後から番組スタッフがついて来る、あるいは先行して山頂にいて、撮影に備えるわけだ。撮影隊も長距離移動で苦労は絶えず、移動用に購入した自転車が壊れたという話も出てくる。番組は、微に入り細を穿ち、陽希さんが体験したこと、感じたことをなるべく視聴者に伝えるようにしていた。それが感動のドラマになっていくのだ。

テレビを見た人も、見なかった人も、感動のドラマをどうぞ。

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