目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

Nスペ「幻の山カカボラジ」

2015-07-12 | テレビ・映画

録画していて、見るのを忘れていた番組を発見した。NHKスペシャル「幻のカカボラジ アジア最後の秘境を行く」。放送は4/11(新聞のテレビ欄を見ていたら本日7/12NHKBSで再放送がある)。山の神が大量に嵐の番組を録るものだから、すっかり埋もれてしまっていた。

まずこの山がどこにあるかといえば、しばらく軍政で閉ざされていたミャンマーだ。交通の便は信じられないくらい悪く、ミャンマーの最大都市でかつての首都ヤンゴンから、北の山岳地帯プタオ空港まで飛んで、そこから車といいたいところだが、歩くしかない。

この挑戦をしたのは、世界七大陸最高峰ガイドの倉岡裕之氏(リーダー)、竹内洋岳氏のチョーオユー行きにカメラマンとして同行したこともあり、最近は「世界の果てまでイッテQ」でもおなじみの中島健郎氏、そして同じく竹内洋岳氏とガッシャーⅡやブロードピークを登った平出和也氏の3名だ。このつわものたちが熱帯のジャングル地帯に突入していく。ミャンマーは雨季まっただ中で、ぬかるみの道を肌にねばつく空気をはねのけながら進んでいく。カラフルなヤマビルも登場して、不快指数は天井知らずになる。

空港を出て6日目の9月20日にラワン、リス族の住むラボ村に到着する。珍しい来訪者を快く迎えてくれる。20日目には最奥の地、タクンダン村にたどり着く。ここで困ったことが発生する。シェルパたちが、休みたいといってごねるのだ。代わりに近隣の村から人を雇おうとするが、働き手が誰もいない。ちょうどミャンマーのカカボラジ遠征隊が2人の遭難を出し、近隣の村人もかり出され救援隊が編成されていたのだ。やむなく停滞となったが、ここでは貴重な人物と会うこともできた。ナンマー・ジャンセン。彼は日本の著名な登山家、尾崎隆氏(2011年にエベレストで亡くなっている。ニュースになったので、覚えておられる方も多いだろう)とともに1996年カカポラジに登頂している。ジャンセンによれば、温暖化が進んでいるので、尾崎氏とたどった氷河コースは、崩れやすくなっているのではないかと。この発言は、のちにリーダーの倉岡氏の判断に影響を与えることになる。(以下結末まで書いていますので、今後ビデオや再放送を見られる方はこの辺でストップしましょう)

28日目の10月12日、予定よりだいぶ遅れて、カカボラジが見える高所に到達した。ふだんは、その姿をめったに現さないため、現地では「鳥が羽で包み込む山」の意で、カカボラジと呼ばれているのだが、このときはまさに天の配剤。その場に居合わせた人々は皆歓声をあげていた。さらに高みへ進み、この日のうちに4000m地点にベースキャンプを設営する。

10月21日ベースキャンプを後にし、山頂を目指す。事前のルートファインディングの結果と、ベースキャンプからの目視での検討を重ね、リーダーの倉岡氏はルートを決めていた。氷河の状態を考え、尾崎さんのたどった、氷河から尾根にいたるコースは選択肢からはずした。またミャンマー隊がとった谷筋のコースは雪崩の危険性が高いと判断しこれもはずした。残るは、ゴジラの背のような岩峰が続く尾根伝いに行くコースだ。いざ岩峰地点に来てみると、非常に幸運なことに岩峰の裏側に大雪原が広がっていた。尾崎隊は、ゴジラの背をアップダウンすることなく、悠々と進んでいく。

10月22日5000mのキャンプ1。10月23日5400mのキャンプ2。キャンプ2からの大パノラマ映像は息をのむ。中国の少数民族が住む雲南省の山々、ヒマラヤの東端、ナムチャバルクを遠望できる。そしてサミットプッシュへと向かう。氷がゆるく状況が悪いながらも、ベテランらしく悪ければ悪いなりになんとか突破していく。しかし、最後の最後に来て、いかんともしがたい事実を突きつけられる。ベースキャンプからは目視確認できなかった地点にさしかかると、巨大キレットが待ち受けていたのだ。目の前にはカカボラジ5881mのいただきが見えている。

雨季から冬へ至るつかの間の天候安定期を狙っての登山だったが、遅れに遅れた日程のせいもあって、この日が事実上のラストチャンスだった。ルートを探すも、時間がかかりすぎる。結局断念せざるを得なかった。ベースキャンプに戻った10月24日には、早くも積雪をみることになる。いよいよ冬の到来だ。今回は残念な結果に終わったけれども、テレビの前で見ている者にとっては、こんな未開の山を登る疑似体験をさせてもらえただけでありがたいことだ。倉岡さん、中島さん、平出さん、次なる挑戦を期待しています。

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「カカボラジ山行記」ナショジオ2015年9月号


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