『休息の山』沢野ひとし(角川文庫)
山の神の本棚にあった本。なかなか味わい深い山の本で、もとは山と渓谷社から出ていた単行本の文庫化だ。奥付を見ると、平成9年、西暦でいえば1997年だ。かれこれ23年前の本になる。それだけの月日をくぐり抜けてきた情報なのだが、それほど現代との違和感を感じないのは、私の年齢のせいか。
イラストレーターの沢野さんといえば、椎名誠さんのあやしい探検隊メンバーで焚火してキャンプしてというイメージだが、この本を読むと、バリバリの山やさんであることがわかる。劔や穂高も複数回訪れていて、遭難者の幽霊(?)にも出くわしている。タモリの「世にも奇妙なものがたり」怪談編の雰囲気をかもし出している(笑)。また誘われるがままにアイガーにも遠征しているから相当なものだ。
いっぽうでは、「懐かしの山」として、子供時代のほのぼの山行記録、父や兄と行った奥多摩の思い出も綴っている。いわゆる山やになる原点だ。
本の後ろのほうでは、私も最近はまっている野鳥の話が出てきて心を和ませてくれる。軽井沢(星野リゾートか?)でバードウォッチングしていると、オナガを見つけたというくだりもあり、おおと思わず声が出るくらい。オナガといえば、私は最近知ったばかりの野鳥の名前だ。
それに沢野さんの本だから、もちろんあの独特なイラストが満載されている。そういえば、沢野ひとし画のバンダナがうちに1枚あったっけ(こちら)。そんなイラストにも癒されながら、雨の休日に読むにはもってこい。あっという間に読めてしまうのはさらにいい。