目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

「閑けさや岩にしみいる蝉の声」 山寺へ

2018-09-10 | まち歩き

立石寺 標高 約400m 山形県

2018年8月15日(水) 晴れ 

行こう行こうと思いながら、天気や日程の都合で行けなかった立石寺(りっしゃくじ)、通称山寺を訪れた。

前泊は天童駅前にあるビジネスホテル、天童セントラルホテル。山の神と6:00頃起床し、館内の自販機で買ったお茶やコーヒーを電熱器で温め、前日に買っておいたパンやおにぎりで朝食をとる。

夏場の山寺は8:00から拝観できるようなので、気温を考えてその時間を目指した。ホテルは7:30にチェックアウトし、20分ほどで山寺の最奥部、根本中堂横の駐車場に入った(¥500)。すでに車は満車に近く、山寺の人気のほどがうかがえる。

 
左:根本中堂 右:「閑けさや岩にしみいる蝉の声」の石碑

山の神も私も、連日の山登りで足がヨレていることもあり、山用のストックを持っていくことにした。当初は登山靴に履きかえることも考えていたが、登山靴で歩いている人なんていないだろうし、それより履きかえるのが面倒だ。そこまでしなくてもいいかとスニーカーでスタートする。

最初は根本中堂。もう目の前で何人も参拝し、記念撮影をしている。今日も暑くなりそうだから、われわれ同様、朝イチをねらって来ているのだろう。


奥の細道の道中を表した松尾芭蕉と弟子の曽良像

お目当ての一つだった芭蕉像はすぐに現れた。隣に弟子の曽良像もあったが、妙に離れて設置されていて、撮影するのに一苦労だった(上の写真)。このためなんだろうけど、通常ネットの山寺案内やガイドブックでは、芭蕉像だけが紹介されていることが多いようだ。

そしてかの有名な句が彫られた石碑が鎮座している。

閑けさや岩にしみいる蝉の声

実際に彼の地は蝉時雨だったが、人が多いだけに「閑けさや」という情感はどこかに行ってしまっていた。

 
左:山門。ここで拝観料を支払う 右:山門からの参道

まだ手持ち無沙汰気味の茶店を越えて進んでいくと、鐘楼、そしていよいよ山門が出てくる。山門で拝観料¥300を支払い、参道へ上がっていく。

 
左:姥堂 右:空也塔

思ったほど暑くないのは、参道の樹木が枝葉を繁らせ、直射日光を遮っているからか。まだ8:00過ぎということもあり、冷んやりとしていて快適だった。 

姥堂や石碑、石仏などを見ながら、階段を上がっていく。

 
左:階段はつづく 右:休憩ポイントのせみ塚

やがて石丈岩が目の前に現れ、しだいに山寺に来たという実感が湧いてくる。石丈岩の直下に来て、その岩の巨大さに圧倒されながら見上げていると、その手前にちんまりと棒状のものが立っているのに気づいた。それがせみ塚だった。地味すぎて見落とすところだった。ここはちょっとした広場になっていて、観光客の休憩ポイントになっている。

 
左:せみ塚の背後にそそりたつ石丈岩 右:弥陀洞の巨岩

せみ塚のすぐ先に弥陀洞(みだほら)がある。案内板によると、長い年月をかけて岩が侵食され、阿弥陀様の姿が形作られたとしていて、そのお姿が見える人には幸せが訪れるのだとか。少なくとも私にはそう見えなかったし、どうすれば、そう見えるのかは不明だった。 

 
左:かなり急な階段を上る 右:五大堂から胎内堂(立入禁止)を望む

急坂に付けられた階段を必死に上っていく。このときにはまだ序の口で、先が長いと思っていたのだが、じつはそうでもなかった。仁王門を過ぎるとゴールは近い。

すぐに左に分かれる道が出てきて、そのまま曲がると、開山堂そして五大堂にたどりついた(冒頭写真)。あっけなくも山寺の象徴、五大堂に着いてしまった。もっとずっとずっと高い場所にあって、そこまで上るには数々の艱難辛苦が待っているのだろうと勝手に思っていたのだが、まったくそんなことはなかった。


五大堂からの眺め。遠くは白く霞んでいた


山寺駅周辺を見下ろす

五大堂で周囲の景色を堪能したあとは、さらに奥の大仏殿へ向かった。天蓋をなしていた樹木がなくなり遮るもののない道は、ただただ暑いだけだ。容赦ない強い日差しを浴び、先ほどの冷んやり感はどこへやら、滂沱の汗に襲われる。 

 最奥部に位置する大仏殿

大仏殿はこれまた意外なほど地味だった。ご開帳もなく、拝むことすらできない。それから三重小塔というなぜか重要文化財であるちっぽけな模型のような塔を見て、山の神とすごすごと戻ることになった。この間気温はだいぶ上昇したようで、すれ違う観光客は皆汗だくだった。われわれは下りなので、まだましだ。最後は立石寺本坊から神楽岩横を通って、お土産店が軒を連ねる通りに出た。ガイドブックでは、全行程1時間半から2時間ほどと出ていたが、1時間くらいで巡ってしまった。香川のこんぴらさんの垂直拡大版のようなところかと期待を膨らませすぎたせいか、少々失望してしまった。その後茶店に寄って、水分補給。時間があるからと、前日天童の居酒屋で教えてもらった後藤美術館に足を延ばすことにした。

後藤美術館(大人¥800)は、バルビゾン派の絵画とアールヌーボーのガラス工芸が目玉のようだ。駐車場には何台か車があったが、客ではなくスタッフと業者の車だったようで、館内に客の姿はなかった。山の神と2人で貸切状態で見学する。説明文が古くて、アールヌーボーは今世紀はじめまで続いたみたいな記述があった。明らかに20世紀のときに書かれたものだ。いまどき宣伝もせず営業努力なしでよく運営できているなと、経営者のお金持ちぶりに驚かされた。とはいえ、空いているからゆっくり見られるし、そこそこの名品が展示されているので、見て損はない。アート好きの方は、山寺とセットでどうぞ。

不動の滝・三階の滝と遠刈田温泉へつづく
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