目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

北杜夫『白きたおやかな峰』

2012-05-04 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

01

北杜夫の『白きたおやかな峰』の復刻版が出ていた。先ごろ、新潮社の『考える人』で山のおすすめ本として紹介されていて、読みたいもんだと思っていたら、書店で平積みになっていた。河出文庫からこの3月に刊行している。

この本は、北杜夫らしい、現実(=リアリティ)と、おかしみを巧妙にミックスして、テンポのいい山岳小説に仕立てられている。『楡家の人びと』、『輝ける碧き空の下で』とか、どくとるマンボウシリーズがおなじみの読者にとっては、登山にあまり興味がなくても、楽しく読めるんじゃないだろうか。ましてや、このブログをよくチェックされている山好きの方は、十二分に楽しめると思う。

1965年、カラコルムの未踏峰ディランへ向けて遠征隊が編成され、登頂を目指すことになるのだが、その一員として北杜夫がドクターとして随行している。この小説は、そのときの体験がベースになっている。登場人物には、いっぷう変わったドクターが出てくる。もちろん北杜夫自身がモデルになっている。なんの遠慮もいらず大暴走するのがこのドクターの役割で、ストーリーにスパイスを与えている。その意味では、どくとるマンボウシリーズなのだ。

日本人隊のメンバーは、さすがにモデルがいる(?)からか、人物描写には抑制が効いていて、ドクターのように派手に暴走する人はいない。フィクションとはいえ、あまりめちゃめちゃなことを言わせる、やらせると苦情がきそうだしね。でもそれなりに個性的な色合いは出ていて、京都弁を話す20代の田代であるとか、モタ(現地語で太ったの意)・サーブと呼ばれている増田とか、チョータ(現地語で小さな)・サーブと呼ばれている曾我とか、副隊長久能とかがなかなかに面白いエピソードをつむいでいく。

それに比べ、パキスタンの連絡将校(リエゾンオフィサー)やコックのメルバーン、ポーターたちは、抑制する必要がない(?)から、人間の感情や欲望そのままを表に出し、極端な人物造形となっていて、北杜夫独特のおかしみを生み出している。自分がつくった料理を残されると不機嫌になるメルバーン(量が多すぎるという難点があるのだが)。自分勝手な発言も目立つが、憎めない奴になっている。雪崩が起きて危険とみれば、脱兎のごとく逃げ出すポーター。命あってナンボだからね。

これらドタバタの後にこの本のクライマックスはやってくる。サミットプッシュだ。60年代日本の登山隊がとっていた極地法(キャンプをいくつも設営して荷物をデポし、隊として登頂する方法)の最後のタクティクス。最終キャンプがどうも手前すぎたようなんだね。サミットプッシュはメンバーを代えて2回試みることになるが、いずれもビバークすることになり、似たような苦境に陥る。最後のシーンは、読者の空想にゆだねられ……。

参考
考える人~ひとは山に向かう
http://blog.goo.ne.jp/aim1122/d/20120215

白きたおやかな峰 (河出文庫)
クリエーター情報なし
河出書房新社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

子持山・浅間山

2012-05-02 | 山行~上州

001p4291008子持山 標高 1296.4m 浅間山 1088m 群馬県

2002年4月29日(月) 晴れ

メンバー 私だけの単独行

コースタイム 8:40子持神社8:50--9:20尾根筋9:27--炭釜--10:33浅間山10:45--11:40子持山山頂(昼食)12:25--獅子岩(大黒岩)--13:25林道(車道)--13:55子持神社

 

山の神はなんだっけなあ、なんで行けなかったんだっけ? よく覚えてないが、行けなかったんだ。山の神本人に訊いてもわからずじまい。結果山の神が行けないから、がっつり鎖場のこの山に行くことになったのだ。

5:45頃家を出るという遅めのスタートになったが、関越道を比較的順調につき進んで、赤城ICで下り、8:40には子持神社に到着した。鳥居横に車を置く。数台停められる程度のスペースには、地元の群馬ナンバーの車が1台停まっているのみだった。じつは、奥の院に停める予定だったのだが、ここを奥の院と思い込んでいた。稜線をしばらく歩いていて、その事実に気づいたのだ。遅すぎ! 

01p4290993 02p4290995
左:子持神社。この手前に駐車スペース 右:稜線に出る

8:50子持神社の石段を登り始める。いきなり急な上りが待ち受けていた。しかも周囲は杉さんばかりで味も素っ気もない。9:20ようやく稜線に上がり、汗をぬぐって一息つく。

03p4290999 04p4291000
左:炭釜の祠群 右:浅間山山頂

この尾根筋は、新緑の青々とした回廊で気持ちのいい道だ。後から知ったのだが、ジモティのあいだでは、「尾根めぐりコース」の名で、歩きやすいハイキングコースとして有名なようだ。指導標もよく整備されているしね。

途中、松の木の緑も愛でながら、仏岩や炭釜を越え、10:33浅間山山頂に到着する。まさしくハイキングを楽しむ年配の夫婦2組と出会う。

05p4291005 002p4291006
左:新緑の回廊の先に子持山 右:子持山山頂にあった石碑「十二山神」

浅間山を10:45出発。ここから子持山への道はきつい。等高線がこれでもかっというくらい詰まっている。そのうち悠々と下ってくるグループと出くわす。こちらは、これからだと気合を入れ直す。11:40ようやく山頂に至った(冒頭の写真)。山頂には「十二山神」の碑がある。たどってきたコース上に「牛十二」と書かれた指導標があったが、この「十二」というのは、ここでは謂れのある数字らしい。山の神を十二様と呼ぶような民間信仰があるようだ。

山頂からの眺めは抜群で、上州武尊山、皇海山、日光白根山、越後の山々が見える。この日はガスが多く、遠くはだいぶ霞んでいた。

003p4291007 日光白根山方面

005p4291011 後方に榛名山群

004p4291010 獅子岩

12:25大勢の登山者でにぎわう山頂を後にする。往路にとった稜線とは打って変わって、岩場だ。獅子岩を注意深く下る。さわやかな新緑の山のイメージはここで瓦解する。持参したガイドブックに岩場の写真がなかったせいか、その姿にちょっとした驚きを覚える。おお、岩山なのか、ここは!

006p4291013 屏風岩

13:25林道に出る。最も登山者に利用されている登山口がここだ。この登山口には駐車場があって、見ると、ほぼ満車だった。ホントはここに停める予定だったのだ。

その駐車場からは、狭いながらも舗装された車道が延びている。行きかう車に注意しながら、子持神社まで下った。帰途は、敷島温泉ユートピア赤城(当時大人¥500)に寄り道し、汗を流してさっぱり。気分よく関越道赤城ICへ向かった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

臼杵(うすき)山・市道(いちみち)山

2012-05-01 | 山行~中央線沿線・大菩薩

001p4140980臼杵山 標高 842.1m 市道山 795.1m 東京都

2002年4月14日(日) 晴れ

メンバー 山の神と私

コースタイム 8:57バス停 元郷9:05--9:47休憩9:57--10:40臼杵神社10:55--11:35休憩11:45--12:12市道山(昼食)13:20--14:05休憩14:35--15:05醍醐峠15:10--16:00バス停 和田(県立陣場自然公園センター)

人の記憶とは、曖昧で、いい加減なものだ。2011年の1月に市道山に和田峠から登っているのだが、このときは、吊尾根を歩いていないからと、そのコースを選んだ。しかし、自分の手帳を見ると、じつは2002年に逆側から縦走し、まさにそこを歩いていた。市道山手前で、かつてこの風景を見たような気がしたのは、実際に歩いていたからだったのだ。

さてと、山行記録に移ろう。
武蔵五日市の駅に8:28に到着し、8:35発のバスに乗り換えた。8:57臼杵山の登山口である元郷のバス停に降り立つ(¥410)。さびしいことに、ここで降りたのは、山の神と私だけだった。臼杵山・市道山・刈寄山の3座で、戸倉三山なんて呼ばれているのだが、その名称から連想するほどに、イキでもないし、メジャーでもないし、カッコよくもない。とにかく地味で、これといった特徴のない山群だ。だからなのだろう。記憶が飛んでいたのは。

03p4140983 01p4140981 02p4140982
臼杵神社と狛犬たち

とはいえ、新緑の季節の山はいい。山桜は花びらをすでに地面に散らしていて、花の季節を終えていたが、ついこの間芽を吹いたような黄緑色の葉は目にまぶしいし、生命の躍動を感じる。すがすがしい気分になれるよね。

10:40臼杵山神社に到着。ヘタウマ調の表情の狛犬が出迎えてくれる。てっきりここが山頂かと思っていたが、山頂はここから4,5分のところにある。で、ついでにいうと、山の神と私は山頂と気づかずに通り過ぎていた。今はご立派な山頂の碑があるようだけど、10年前にはなかった!?

04p4140985 002p4140987
左:つつじも咲き始めていた 右:市道山山頂

急坂を下り、アップダウンを繰り返していると市道山に到着した。朝五日市線の電車で前の席を占めていた団体さんたちが昼ごはん中だった。笹平からでも登ったのか。やけに早いなあと思いながら、山の神と私も山頂で昼食にした。

003p4140988 05p4140989
左:片側杉林の狭い登山道を行く 右:新緑が目にまぶしい

13:20下山開始。一度休憩をはさみ、杉林の単調で飽き飽きする巻き道をいく。かなりやせた道だ。醍醐峠からはたちまち車道に出た。車道歩きはつまらないから、やたらと長く感じる。16:00に和田バス停に到着。今日は何か陣場山ででもイベントがあったのか、バスを待つ人は多い。そこへ臨時バスがちょうどやって来て、16:15乗り込んだ(¥240)。

JR中央本線の藤野駅に出て、都心へ向かう16:41発の電車に乗る。立川着が17:30くらいで、ちょうど日が傾いてきた。まさしく居酒屋が山の神と私を呼んでいるようだった。自然と足は、立川駅を出て、居酒屋あじたろうへと向かうことになった。そんなアホな!

参考
市道(いちみち)山・醍醐丸
http://blog.goo.ne.jp/aim1122/d/20110125
西東京バスhttp://www.nisitokyobus.co.jp/rosen/noriba/musashiitsukaichi.html

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする