はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

東京遠征12/24。

2006-12-24 23:58:33 | アートなど
12月24日は、昨日に引き続き東京で展示会を2つ観て参りました。

本当は、銀座のINAXギャラリーで開催中の「世界のあやとり」を見たかったのですが、行ってみると日曜祝日は休館とのこと。
が~ん。
気を取り直し、月光荘と品川経由で友人と合流し新宿初台の東京オペラシティーへ。

まずはインター・コミュニケーション・センター(ICC)で開催中の企画展「OPEN SKY 2.0」。
アーティストの八谷和彦氏のOpenSkyプロジェクトを総覧した展覧会です。
OpenSkyプロジェクトとは、『個人的に飛行機を作って実際に飛べることを証明する』というアートプロジェクト。2004年の『愛・地球博』でも機体が展示され、話題となりました。ロマンを感じる飛行機として『風の谷のナウシカ』に登場するメーヴェに着想を得たため、実作機はメーヴェのように美しい海鳥のような無尾翼機となっています。しかし、常に人身事故の危険を伴うプロジェクトゆえ、着想元への迷惑がかからぬように八谷氏は『宮崎氏やジブリとは無関係』というスタンスをとっています。
元々はオープンソースでのプロジェクトを考えていたようですが、安易な模倣による危険を避けるために今は設計公開はしていないようです。
そのかわり、テストフライトを一般に公開し、見学者との交流を行うなど『開かれたプロジェクト』の姿勢はつらぬいてらっしゃいます。
それを象徴するかのように、今回の展示スペースの入口には左写真のような注意書きがありました。
Alart01・写真撮影OK
・メモ/スケッチOK
・乳幼児の入場歓迎
・介助犬OK
・コスプレ入場OK
 
 
 

これを見た瞬間、『なんて素敵なんだろう。八谷さん大好きだー!』 と思いました。
おかげですっかり嬉しくなってしまって、鑑賞前からテンションアップ。
最良のメンタルコンディションで展示に臨みました。
内容は、プロジェクトを支える設計図の展示、OpenSkyプロジェクトで制作された歴代テスト機の実物展示、テストフライトを記録したコメントつき写真展示、プロジェクトの背景を解説したスライドショー、テストフライトを疑似体験できるかもコーナー、OpenSkyプロジェクト記録映画、フライトシミュレーション体験できるかもコーナー、Q&Aコーナー、秘密の小部屋、などなど。
たいそう盛りだくさんで、予想を遥かに上回るボリュームでした。
何かを作り出そうとする人間の開かれた情熱に触れることで、勇気をもらえたような気がします。
八谷氏が好きな方はもちろんのこと、ナウシカが好きな方、飛行機が好きな方、グライダーが好きな方、実現し難い何かを実行しようとしている方、面白いモノが好きな方、そして空を愛するすべての人にはおすすめの企画展です。
ちなみに、私にとっての今日のベストワードは
『ロマンとエンジニアリングさえあれば、人間は空を飛べる。 by土佐信道』
八谷氏の友人の言葉として紹介されていたフレーズ。
不意打ちにノックアウトされました(笑)。

なお、この企画展は2007年3月11日まで。
一度足を運ぶと、会期中は1日だけ再入場できるとのこと。嬉しい配慮です。
興味のある方はぜひ。おすすめです。


さて、次に同じく新宿初台のオペラシティーアートギャラリーで開催されていた「伊東豊雄 建築|新しいリアル」を見て参りました。
会期終了日とあって、たいへんな人出。
建築家の展覧会にこれだけの人が集まることに驚くとともに、東京という場所の文化層の厚みを感じました。
伊東豊雄氏は、せんだいメディアテークの設計者として認識している程度だったのですが、氏の仕事を模型や型枠提示で拝見してみると、ひとつの方向性のようなものがみとめられ、たいへん興味深く思いました。
氏の設計もすごいのですが、それ以上に感心してしまったのが、日本の型枠工や建築に携わる技術者の持つ能力の素晴らしさ。
木枠を組んだり、鉄骨で曲線を成形したり、コンクリートを流し込んだりして、設計者の構想したおそろしく不規則な曲面を具現化してしまうその腕に、感動を覚えました。
作る人も使う人もたいへんではありますが、できあがった建物の象徴する非凡さは、単なる実利では語れない精神性を宿しているような気がします。
鑑賞者が靴を脱いで歩く、曲面構成を再現した展示室があったり、コンセプトを解説しつつ実際に竣工した建物を紹介する映像があったり、模型があったり、実物大図面が一部壁面に描かれていたり、氏の仕事が時系列順に解説されていたり、こちらもなかなか盛りだくさんの内容でした。
中北の芸術センターなど、実際に行ってみたいと思わせる楽しさにあふれた建築物でもあると思います。
各務原市営の斎場などは、屋根に上ってみたくてしかたありません(笑)。
荒川修作の養老天命反転地公園を彷彿とさせるような気もしましたが、型破りで非線形のモチーフを再現すると、どうしてもそうなってしまうものなのかもしれません。
intarestの対象としての建築、という意味で伊東氏の仕事は非常に興味深いです。
会期は24日で終了してしまいましたが、いずれ各地のアートショップで図録が出回るかと思いますので、興味のある向きはそちらを待たれてはいかがでしょうか。

Tree01帰りに見たオペラシティー中庭の巨大電飾ツリー。
 
Tree_and_singingmanそして「シンギング・マン」との競演。
強烈です(笑)。

バラエティに満ちた創作物に触れた東京遠征。
非常に有意義な2日間だったと思います。