はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

東京遠征7/21。(科学未来館「サイエンスニュース!アジア展」「水素エネルギー展」「コピー機フシギ展

2007-07-21 22:43:58 | アートなど
本日7月21日は、東京にて4つの展示を見て参りました。

まずは、台場にある日本科学未来館。
企画展「サイエンスニュース!アジア展」と「水素エネルギー展」「コピー機フシギ展」の3展示を拝見しました。

サイエンスニュース!アジア展」は、近年発展目覚ましいアジア圏における科学技術のホットな話題を、多様性という観点から紹介した企画展。
この企画展は無料スペースと有料スペースに分かれており、無料スペースであれば誰でも入ることができます。
まずは無料スペース。地球ディスプレイのある広場を「アジアの広場」として週替わりで4か国の文化紹介を行うとともに、有料展示室からピックアップした話題を紹介する「アジアン・トーク」という15分程度のプレゼンも随時行われていました。
企画展に興味をもってもらうための掴みとしては考え抜かれた無料展示企画だと思います。
有料スペースは、「多様の生態系と科学」「自然の脅威と科学」「伝統と科学」「習慣と科学」「教育と科学」「都市と科学」「消費と科学」という7つのキーワードで、バイオからナノテク、医療や材料工学、脳科学、エコ技術に至るまで、実に多彩な14の話題が解説展示されていました。
それぞれの話題に関してテロップつき映像をいくつも並べて技術概要を説明するとともに、豊富な実例サンプルも展示されており、見て触って理解してもらおうという姿勢が感じられました。真面目に全部を見ようとすると、とんでもない時間がかかるかと思います。それだけに、解説映像の分数が書いてあるのは良心的。欲を言えば、早送り機能がほしいところ。
パンダの人工繁殖研究事例がどのように紹介されているか興味津々だったのですが、子供でも解るように簡略化しながらきちんとポイントを押さえた解説はなかなか良くできていたと思います。
見ていて私が特に興味を引かれたのは、昆虫寄生細菌からの創薬研究の話題、そして、イスラム文化圏での豚フリー食品鑑別技術開発の話題、それと、シンガポールの徹底した科学教育戦略の話題、さらに、重量が空気の3倍しかないという超軽量素材エアロゲルの話題、の4つ。
一番感銘を受けたのは教育の話。
シンガポールはバイオ技術とナノテクに相当な力を注いでいるのだそうで、実際、展示されていた小学校教科書の内容に度肝を抜かれました。殺人事件の犯人を捜す方法を考えよう、と、子供の心を奪いそうな魅力的な話題を導入とし、犯罪捜査にバイオ技術や遺伝子工学を利用できる事例を解説しながら、分子生物学を支える基本的概念と技術をきっちり楽しく学べてしまうという驚きの内容。アクリルアミドゲルの電気泳動写真や、DNA Ladder とフィンガープリントの読み方基本まで織り込まれている抜かりなさ。さらに、なぜそうなるのか、という論理展開も重要視されているのがうかがえて、とても唸らされました。ある意味ショッキング。
小学校でこんなにすごい教育を受けている国に、これじゃあ、日本の小学生が太刀打ちできるわけがありません。相手にならない。
基本的なものの考え方をしっかりと身に着けられるような教育の必要性を痛感して参りました。

別の意味で印象的だったのが、視力を鍛えて脳を活性化させるトレーニングの話題。
トレーニングの体験コーナーがあったので試してみたら、ハナから正解率100%。連続する2つの画面を見分けるというだけなので、ふつう解るだろう、何をこれ以上トレーニングするのだろうと疑問に思って他の方々を見ていたら、正解率は7割~9割が普通のようで逆に驚きました。
出題は、灰色の点が縦に3つ並んだ画面が0.5秒程度づつ2枚続けて出てきて、そのうちのどちらか1枚は真ん中の点がないので、点のあったのは前と後のどちらだったかを当てる、というもの。真ん中の点はだんだんと薄くなってゆくので次第に見分け難くなってゆきます。
差分認識の一種なのでしょうか。
薄くなった点の痕跡は私の目には明らかなのですが、他の人にはそれが見えていないという事実。
何とも不思議です。
やはり人はそれぞれ一人ごとに違った世界を見ているのだなと感慨を新たにした体験でした。


水素エネルギー展」は、その名のとおり水素エネルギーをテーマとした展示。BMW主催の催しです。常設展の入場料で見ることができます。
水素エネルギー利用をめぐる解説と啓発が主な内容。メインは水素燃料車の展示でした。
日本が高圧ガス方式なのに対し、ドイツでは液体水素方式なのだそうで、車載タンクの中身はマイナス253℃(!)。
タンク機能の要は保冷機能と減圧弁で、逃がした水素は化学処理されて水として排出されるのだとか。
衝撃耐性はライフル試験(その名のとおり、ライフル銃で撃って損傷しないか調べるらしい)で確保されているらしいです。
爆発性の気体を制御する難しさとコストは相当のものでしょうが、将来的にはやはり必要となってくる技術なのでしょう。
水素生産のためのエネルギーを化石燃料以外から調達できるようになれば、けっこう普及しそうな気もします。
たくさんあるらしき課題を着実にクリアしていってほしいものです。
これからの技術研究に期待。
なお、この展示ではディスプレイやデザインに工夫が凝らされていて、そっちのほうもなかなか楽しめました。
展示美術に興味のある方にはちょっとおすすめかもしれません。


コピー機フシギ展」は、コピー機のしくみを解説しつつ楽しませてくれる技術宣伝的な展示。夏休みの子供たちをターゲットにしたRICOH主催の催しです。こちらは無料スペースでの展示。
閉館ギリギリに入ったため全貌を見ることはできませんでしたが、コピー画像が点でできていること、そして、スキャンした画像情報が光に変換され、ポリゴンミラーによって再び画像として再構築されること、さらに、レンズの力によって拡大縮小がなされること、これらが実にわかりやすく展示されているのが見てとれ、感心してしまいました。
会場には、特殊なコピー機を使って書いた絵同士を対戦させて勝ち負け判定するゲーム(?)コーナーもありましたので、小さなお子さんをお持ちの方は一緒に行かれると楽しいかと思います。
後半には環境教育展示もありましたので、夏休みの自由研究課題にも役立つかもしれませんね(笑)。

科学未来館の展示3つは全体的に、環境とエネルギーを意識したテーマ性を感じさせる内容が多かったように感じます。
最先端の科学を紹介する科学未来館がこういったテーマを扱っているという事実が現代の科学技術の使命と宿命を表しているようで、何だか非常に感慨深く思えました。



さて、最後に、渋谷のGallaly Le decoで開催されている「あいちゃくをもつ為の道具展」。
武蔵野美術大学の空間演出デザイン学科小泉ゼミの展示です。
題名とコンセプトに惹かれて足を運びました。
行ってみれば、小規模ではありますがかなり面白い展示。
消費されがちなモノたちに道具としての「あいちゃく」を生じさせるためのデザインや工夫8点が紹介されており、それらの試作を実際に手に取ってみることができました。
ひとつひとつの道具に名刺様のテロップカードがついていて、鑑賞者がそれを持ち帰れるようになっているのも面白い。
どこかユーモラスで微笑ましさを誘う作品たちを思い起こさせるカード自体が愛着を誘う仕掛けにもなっていたように思います。
思わぬ収穫。行ってみて良かったと思います。
会期は明日22日の17時までですので、興味のある向きはお早めに。


気が付けば科学&デザインづくしの一日。
やはり科学は面白いです。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
日本科学未来館、おもしろそうですねえ。 (ケイ)
2007-07-22 09:26:45
日本科学未来館、おもしろそうですねえ。
今度、ぜひ展示も見に行ってみたいなと思っています。
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Le deco 行ってきました。 (さとーひろし)
2007-07-23 23:01:14
Le deco 行ってきました。
「あいちゃく」をデザインに取り込むって魅力的だなぁって
思いました。
あと、6階もおもしろかった。
情報、ありがとー!
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>ケイさま (aiwendil)
2007-07-24 01:45:03
>ケイさま
ええ、ぜひぜひ。
特に常設展がおすすめです。
専門家が見ても感心する内容だと思いますよ。
私も生物部門で「おおっ!」と唸って参りました。
こういった展示に接しながら大きくなる子供たちがちょっとうらやましいです。

>さとーひろしさま
行かれましたか。
気に入ったようでよかったです。
なかなか良い展示でしたでしょう。
展示空間も考えられていて、全体的にとても好感が持てました。

私は時間がなかったので他を見ませんでしたが、6階では何が展示されていたのでしょう?
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